君は牛を二頭持っている
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「君は牛を二頭持っている」(きみはうしをにとうもっている)は、主に欧米語圏で一連の政治的ジョークとしてよく用いられる定型文である。
このジョークは、典型的な経済学の入門教材として使われている、通貨のない社会で隣人と畜産物を交換して暮らしている農夫の喩え話のパロディに端を発する。元の喩え話は、次の文章から始まる。
この喩え話の登場人物たちは、交換経済に限界を見出し、最後には貨幣制度を導入することになる。しかしながら「二頭の牛」のパロディで登場する登場人物(牛の持ち主)は、牛があらゆる流通制度や資本、生産物、資産のメタファーとして扱われている、充分に成熟した経済制度の下で暮らしている。多くの場合このジョークの意図は、それらの制度の欠点や理不尽さを指摘することにある。 なお、ここで言う牛(cow)とは雌の乳牛のことである。
目次 |
[編集] 例
- 君は牛を二頭持っている。君は隣人の雄牛を盗み、政府を無視する。
- カナダ人気質
- You have two cows. Vous avez deux vaches. (英語で、そしてフランス語で、「あなたは二頭の牛を持っている。」)
- あなたは二頭の牛を持っている。彼らは、あなたとの投票に2対1で勝ち、全ての肉と酪農製品を禁止する。
- あなたは二頭の牛を持っている。一頭を売り、雄牛を買う。家畜は増殖し、経済が発展する。あなたはそれを売り、その収入で引退する。
- あなたは二頭の牛を持っている。領主はミルクをいくらか巻き上げていく。
- あなたは二頭の牛を持っている。政府は二頭とも没収し、あなたを銃殺する。
- あなたは二頭の牛を持っている。政府は二頭とも取り上げ、牛の存在自体を否定する。ミルクは禁止される。
- 君は牛を二頭持っている。政府は二頭とも取り上げて、ミルクの一部を君に与える。(全人民は平等であり、全人民が二頭の牛のすべてを所有している。もし、あなたがたまたま人民と人民の牛を管理する立場にあるのならば、あなたは他の人民よりも「より」平等であり、「より」二頭の牛を所有している。)
- あなたは二頭の牛を持っている。政府は二頭とも没収し、あなたを雇ってその世話をさせ、そしてあなたにそのミルクを売りつける。
- あなたは、中華鍋をふたつ持っている。(cow→wok)
- あなたは、異なった年齢であり(その個体間の年齢の差は、社会的共同体において確実な有用性を得られる程度の差にすぎないところの)、かつ恣意的に性別を指定されることのないウシ科の動物二体と、所有と一般に呼称される(この「所有」という概念は、男根主義的で、主戦論者的な、耐えがたいほど時代遅れのシンボルである)関連性を有している。
- 日本企業
- あなたは二頭の牛を持っている。あなたはその牛を改良して、普通の牛の10分の1のサイズで普通の牛の20頭分のミルクを出すようにする。それから、その新型牛をモチーフにした「カウキモン(Cowkimon)」という名前のアニメを作り、世界中に売り出す。
(他の例については#外部リンクを参照のこと)
[編集] 二頭の牛と経済制度
初期の「二頭の牛」ジョークの目的は、政府や官僚がいかにして持ち主の牛に対する所有権を妨害するかを説明し、資本主義と共産主義のような、相反する経済制度を比較してみせる事にあった。
やがてこのジョークは、様々な政治、文化、社会、哲学に関する制度や理論を風刺するジョークへと発展していった。最終的には、事実上あらゆる事物が、「二頭の牛」ジョークの「まぐさ」(元ネタ)として使い得ることが明らかになった。狂牛病のような実際の牛に関する報道ですら、元ネタとして使われている。
[編集] インターネット初期
「二頭の牛」ジョークは、初期のインターネットで流行した最初のインターネット・ジョークの一例でもあるが、このジョークの初期のバリエーションは、インターネット普及以前、1960年代前半のタイプライターによる流布にまで遡る。多くの文化圏で定番のユーモアとして受け入れられたこの「二頭の牛」ジョークは、World Wide Webの国際的な展開の一部となった。
「二頭の牛」ジョークは今日でも流行しており、幾年にもわたって新しい定義が追加された無数のバリエーションが、多くのウェブサイトで翻訳・引用されている。有名なダウンロードサイトである「Tucows」は、正式名称である「The Ultimate Collection Of Windows Software」の略称ではなく、そのロゴが暗示するように「二頭の牛」ジョークに由来するもので、前出の正式名称はもっともらしく後付けされたものであるとも言われている。
[編集] 異文化間ユーモア
その題材の自由度と普遍性から「二頭の牛」ジョークは、しばしば異文化間ユーモアの好例であると見なされている。このジョークは「異なる文化が同じ政治理念に対していかに違った観点を持つか」ということが、逆説や誇張、皮肉によって示された(必ずしも学術的ではない)簡潔な要約とも言える。実際にほとんどの「二頭の牛」ジョークは、風刺される制度についての部外者による視点を反映しているからである。
国際的な共通基盤を見出そうとする立場において「二頭の牛」ジョークは、法的ないしは政治的な概念と対比される、所有権のように普遍的な(だが政治学上では隠された)共通認識のユーモラスな発現であると見なす者もいる。
[編集] 外部リンク
- TheCapitol.Net You Have Two Cows... at YouHaveTwoCows.com (英語)
- Two Cows - その他のリスト(英語)
- 君は牛を二頭持っている。 - Uncyclopedia(日本語)
カテゴリ: ジョーク | インターネットの文化