岩尾別川
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岩尾別川(いわおべつがわ)は、北海道斜里郡斜里町を流れる二級河川である。名前の由来はアイヌ語で「硫黄が流れる川」という意味である。このため原語に近いイワウベツ川として標記されることもある。
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[編集] 地理
知床半島の中央、羅臼岳の西側斜面を源流とする。源流の一つは羅臼岳登山道沿いにある名水、弥三吉水である(標高900m付近)。本流の岩尾別川の中流には、岩尾別温泉が、また、知床横断道路(国道334号)と並行する支流の赤い川の流域には、日本有数規模の褐鉄鉱の巨大な露頭が存在する。
[編集] 産業
昭和初期から漁業が、昭和40年代以降は観光開発が進められている。河口付近に位置するサケマス孵化場は、捕獲量、放流量で日本一を記録したことがあり、石碑が建立されている。下流域には知床五湖へ通ずる道道橋、中流域には岩尾別温泉、上流域には羅臼岳登山道があり、観光資源に富んでいる。
支流の赤い川では、昭和30年代まで鉄鉱石の採掘が行われたが、輸入鉱石の増加により採算が悪化し早々に撤退している。
[編集] 自然
流域の全域が知床国立公園に指定されており、川周辺ではエゾシカやヒグマなどの大型哺乳類、エゾシマフクロウなどの猛禽類(広義)が棲息するなど、豊かな自然環境が形成されている。
秋に遡上するシロザケ、カラフトマスは全量、河口付近のサケマス孵化場にて捕獲される。一部については、サケマス孵化場から上流に再放流されるが、これを目当てにヒグマが出現するようになり、近年、それを追いかけるようにカメラマンが詰めかけるようになった。川と並行する町道には、ヒグマを撮影するための望遠レンズの砲列が並ぶこともある。撮影競争が過熱し、不測の事態も想定されることから、2004年にはクマよけ(人間よけ?)のための電気柵が設置された。
[編集] 災害
岩尾別川流域の地質は、源流が活火山である羅臼岳であるため脆く、しばしば土砂災害が発生している。1980年代には土石流の流下により、岩尾別温泉に至る町道の大部分が流出。温泉の宿泊客が孤立する騒ぎとなった。
[編集] トピック
第48代横綱大鵬は幼少の頃、近隣の岩尾別集落に居住していた時期がある。斜里町誌には、サケマス孵化場の前の岩尾別川でサケを取ろうとして、孵化場の職員に怒られるエピソードの記述が見られる。