心神 (航空機)
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心神(しんしん)は日本の防衛省技術研究本部(技本)が三菱重工業を主契約企業として開発を行っている航空機。技本では先進技術実証機(ATD-X)と称する研究機で、次世代戦闘機に使用できる国内の先進技術を、実際に飛行させて実証・確認をするための機体である。
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[編集] 開発経緯
世界の趨勢はステルス・高運動性能を備えた第5世代戦闘機に移っており、日本の国内技術を踏まえ、次世代戦闘機には、相反しがちなステルス性と高運動性を両立させることとなった。また同時に、機体形状に沿って配置する形のコンフォーマルレーダー「スマートスキン」の実用化を、積極的に取り組む技術と位置づけている。
技本技術開発官(航空機担当)付第3開発室は、2000年(平成12)度から2008年(平成20)度の予定で、優れた運動性能を備えると共に、レーダーに探知されにくい戦闘機の飛行制御等に関する研究として、「高運動飛行制御システムの研究試作」を三菱とともに開始し、ステルス性を高める為の低RCS(Radar Cross Section)機体形状設計技術、通常の戦闘機では飛行不能な失速領域でも機体を制御し、高運動性を得るIFPC技術などの研究を行っている。
2006年(平成18)度からは、スマートスキン実用化に必要な機体の軽量化に伴い、軽量・高強度な新複合材の胴体構造への適用に関する「スマートスキン機体構造の研究試作」が開始された。2010年(平成22)度にかけて試作、2011年(平成23)度の完了を予定している。
三菱では、RCS研究の一環として、実際に飛行する機体の大きさを持つ、全機実大RCS試験模型を制作し、フランス装備庁の電波暗室で電波反射特性の試験を行った。この試験用模型の写真は、2006年5月に技本ホームページ(外部リンク参照)に掲載され、初めてその姿を一般にさらした。写真は航空雑誌や書籍にも掲載された。11月9日・10日には東京都内において、平成18年度研究発表会が開催され、各研究室の展示とともに、32分の1スケール模型と「心神」の名称が発表された。また、12月下旬に発売された航空雑誌『航空ファン』において、「心神」の特集記事が掲載された。
また、同年春にはRCS模型と同形状の5分の1縮小模型(全長3m、全幅2m、重量50kgの、いわばラジコン)が初飛行した。模型は4機作られ、2007年(平成19)度より本格的な飛行試験が行われる。
実機の製作は2010年(平成22)度以降、初飛行は2014年(平成26)ごろを予定している。
[編集] 機体
アメリカ空軍のF-22を意識したと思われる、双発エンジン・双垂直尾翼の機体である。外観はF-22同様に、ステルス性を反映した角ばった形状と丸みを帯びたを形状の両方を供えているが、こちらのほうが小さい。キャノピーは視界の良い水滴型ではなく、三菱 F-1と同じように、座席の後ろが隠れるタイプである。機体は新複合材料で製作され、高運動性を実現する為、機体制御にはP-Xで採用されたフライ・バイ・ライトを採用する。機器類では、将来アビオニクス、スマートスキンセンサー、多機能RFセンサーを装備し、エンジンは新開発のXF5-1、噴射口にはノズルではなく、新開発のパドル式推力偏向機構を装備する。
なお、研究と試験の経過により、機体形状はより理想的なものへ変更される予定である。
[編集] エンジン
搭載エンジンは、技本が石川島播磨重工業を主契約企業として開発を進めている、実証エンジンXF5-1である。国産エンジンとして初めてアフターバーナーを備えたもので、離陸重量は8t。2基搭載時には推力約10t程度を目指しており、推力重量比は世界の最高水準に達しているという。
XF5-1は将来の国産戦闘機開発に繋げるものとして、1995年(平成7)度から1999年(平成11)度まで5回に分けて147億円で開発契約を結んだもので、所内試験は1997年(平成9)より開始され、燃焼器などの性能の高さを証明した。XF5-1の研究成果の一部は、次期固定翼哨戒機用XF7-10エンジンへ移転している。技本へは1998年(平成10)6月に初号機を納入、2001年(平成13)3月までに計4基が引き渡され、平成19年(2007年)度中ごろまで各種試験が行われる。開発が順調に進めば、平成21年(2009年)度より推力偏向機構の実現に必要な可変式ノズルの研究へ移行する。
[編集] スペック
未公表のため、大きさは試験用縮小模型から推測。
- 全長:約15m
- 全幅:約10m
- エンジン:石川島播磨 XF5-1 ×2基
[編集] 参考文献
- 『航空ファン』2007年2月号 文林堂
- 『JWings』2007年4月号 イカロス出版