怪文書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
怪文書(かいぶんしょ)とは、筆者や差出人が不明(→匿名)の状態で出回る文書である。内容的には、その多くが特定の組織・個人などに関する情報と称する類のもの、あるいは一種の主張を述べている。
[編集] 概要
怪文章は、その出所が不明で情報ソースの不確かなものながら、ある種の影響を拾い読んだ者に与えうる。会社、大学、役所などの組織において不満を持つ者や、選挙の際に対立候補を貶めることを望む者によって多く作成されるとされている(→ネガティブキャンペーン)。なおこのようなものでも全くの事実無根である場合、悪魔の証明のように嘘であることを証明不可能ないし困難な場合もあり、当事者が否定しきれずに、この問題を大きくさせる傾向がある。
不正を世間に知らしめるための義憤に基づく内部告発という形によるもの、権力や出世争いに絡んだ私利私欲による暴露・中傷を目的とするもの、また単なる愉快犯によるものなど、その作成の動機は様々である。過去のケースには、完全な(しかも金の掛かった)悪戯で流布されたものもみられる。
ただ、内部情報の漏出は背任になることもあり、また事実無根であれば中傷で名誉毀損にもなるため、これらの制作者は多くの場合において不明であり匿名であるか、或いは個人を特定させない自称をとる場合もある。単なる告発と異なる点は、この匿名性を発信者が望んでいることで、そのため内容の真意や真偽が不明な傾向が強い。ただ事前にその内容が「そのような可能性がありうる」という確証を読者側が持っていた場合に、それなりの行動を誘発させる要因にもなろう。
古くは落書のような手書き文章をわざと人の目に触れさせる形で貼り付けたり拾わせたりといった様式もあったが、郵便業務の発達した近代以降では、比較的そのような情報に関心の高いと思われる者に郵送するという形を取り、近年では複写機やFAXの普及といった情報機器の発達や通信の利便性向上により、より広範囲に撒き散らされる傾向が強く、特にインターネットの普及以降には、これらの怪文章発信者はより簡便に、より大量に、より素早く、匿名性を維持し易い環境が整ってしまっている(→情報の拡散)。