悪魔の足
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悪魔の足(The Adventure of the Devil's Foot)は、アーサー・コナン・ドイルの小説シャーロック・ホームズシリーズ作品の1つ。1910年12月にストランド・マガジンで発表、『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』(His last Bow、1917年)所収。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
シャーロック・ホームズが療養のためにコーンウォル地方へ行った際に起こった殺人事件を扱ったもので、アフリカにのみ存在する毒物を使用したためコーンウォルの警察には死因がつかめなかったと言う設定となっている。
目次 |
[編集] あらすじ
話は世間嫌いなシャーロック・ホームズがワトスン博士にこの事件の発表を求めるところから始まる。四つの署名で見られるようにホームズはワトスンが発表する文章をあまり快く思っておらず、また自分の名が世に知れ渡ってしまうために発表することを渋っていて、その故にワトスンを驚かせた。そこから物語は始まるのである。
[編集] 発生まで
ホームズはおおよそ健康そのものといって良いくらいに病気を知らなかったが、1897年の頃にもなると衰弱を見せ始め、ムア・エイガ医師によって職業を続けられなくなるとして転地療養を勧告され、仕方無くそれに従い、ワトスンとともにコーンウォル地方へとその居を移した。コーンウォルでホームズはコーンウォル語を研究したり、遺跡を見て回ったり充実した日々を送った。またこの際教区のラウンドヘイ牧師や、牧師の館へ住むモーティマー・トリゲニス氏と知り合いになった。モーティマー氏の家は、鉱山を売ったことによってもはや働かなくても暮らしていけるだけの資金を得ていたのである。
そして、コーンウォルにまつわる研究に没頭しかけていたホームズに、事件というホームズが何よりも欲求するものが現れたのである。
[編集] 事件
事件は3月16日に発覚した。モーティマー氏の生家で、モーティマー氏の兄弟が発狂、もしくは死亡したとラウンドヘイ牧師とモーティマー氏がホームズらの家に駆け込んで来たのである。モーティマー氏は朝の散歩中報を受けて、牧師を伴って急いでホームズ宅へ来たのである。三人を何らかの恐怖が襲い、モーティマー氏の二人の兄は発狂し、妹はそのために死亡したという。ホームズらは早速現場へと行き、検証を行った。第一発見者の女中は、三人がいた部屋に入ってすぐ気絶してしまったと言う。同行したモーティマー氏に聞くと、昨晩トランプをしていて、そのとき窓の外に怪しい人物を見たといい、警察もその人物が犯人だと採用する。ホームズはモーティマー氏が過去に兄弟間で金銭上のトラブルをあったのを聞きこれを怪しむが、特に何も言わなかった。
その後、著名なアフリカの民族学者のレオン・スターンデール博士がやって来て、事件について教えてほしいと言う。彼はモーティマーの親類で、ラウンドヘイ牧師から電報を受けて、アフリカへ帰るのを先延ばしにしてやって来たと言う。しかしホームズは何も言明せず、博士は怒って帰っていった。
翌日、再び牧師が来て、今度はモーティマー氏が死亡したと言う。ホームズはまたも急行し、モーティマー氏の妹と同じ症状がモーティマー氏にも現われているのを確認し、部屋の中にあったランプの上にこびりついていた灰を採取した。その二日後、ホームズは灰を使って実験をし、恐ろしい幻覚がこの灰を燃やした空気を吸うことによって発生するのを確かめた。
[編集] 解決
実験が終った直後にホームズが呼んだスターンデール博士が現れ、ホームズは単刀直入にモーティマー殺しの犯人であると言った。スターンデールはそれを云われるとうなだれ、事件のあらましを語った。
スターンデールに拠れば、この事件はスターンデールがアフリカから持って来た毒物(悪魔の足の根: Radix pedis diaboli)をモーティマーにくすねられ、モーティマーの「一家の遺産を全て貰ってしまおう」という企みに使われてしまった。モーティマーの妹は、スターンダールと長年交際していて、結婚こそ事情でできないもののずっと互いに思いを寄せていたが、モーティマーによって殺され、警察にはこの事件は解決できないと知っているスターンデールが、正義の鉄槌を下したのだという。ホームズは一部始終を確認すると、スターンデールにアフリカへ行って研究を続けるように奬めて、事件を終わりとした。
[編集] 登場人物
- シャーロック・ホームズ
- ジョン・H・ワトスン
- ラウンドヘイ牧師
- モーティマー・トリゲニス
- レオン・スタンデール博士
[編集] 悪魔の足
シャーロック・ホームズは犯行が、一件目は暖炉に毒物を、二件目はランプの上に毒物を載せて毒物を拡散させて起こされたと推理した。その毒物は悪魔の足という。悪魔の足とは、その形が人間の足とも山羊の足とも取れることから伝道師が名付けたという。スタンデールはそれを、ウバンギ地方から持って来た。彼に拠ればそれはアフリカのまじない師が秘術に用い、脳の恐怖心をつかさどる中枢を刺激し、発狂もしくは死を迎える結果となり、また、事件当時の技術ではこの毒物を検知できないという。
なお、ホームズとワトスンはこの毒の効力を調べるために閉め切った部屋で実験を行ったが、危うく2人とも中毒死してしまうところだった(ホームズの異変に気力を取り戻したワトスンの機転で部屋から脱出した。この際、ホームズはワトスンを危険な実験に付き合わせた事に対して彼にしては珍しく感情的に謝罪と感謝の言葉をかけた)