愛國戰隊大日本
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『愛國戰隊大日本』(あいこくせんたいだいにっぽん)は、1982年8月完成の8ミリフィルム作品。東映の「スーパー戦隊シリーズ」を模したアマチュア特撮作品である。上映時間約19分。制作はダイコンフィルム。赤井孝美(あかいたかみ)監督作品。特撮、ナレーターは庵野秀明。当時放映していた特撮テレビ番組『大戦隊ゴーグルファイブ』までの『スーパー戦隊シリーズ』の作品群と、当時のソ連脅威論を下地にしたパロディ作品である。
精巧に作られたコスチューム、火薬による爆発効果、ミニチュアによる巨大ロボの登場など、アマチュア作品としては群を抜いた内容で、発表直後からアニメック誌などの一般媒体でも大きな話題となった。「帰ってきたウルトラマン」(DAICON版)「快傑のーてんき」と同時制作されたということも、アマチュア制作の常識を覆す事件だったといえる。
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[編集] 概要
1983年に開催された日本SF大会「DAICON4」の宣伝のためのプロモーション作品として制作され、その前年のSF大会「TOKON8」で上映された。サブタイトルは「びっくり!! 君の教科書もまっ赤っか!」で、長期シリーズの中の1話という体裁をとっている。全26話のタイトルと登場する怪人も設定されているが、これは後に雑誌紹介された際のヤラセ記事として発表されたもので、制作されたのは第3話のみである。
オープニングテーマは『太陽戦隊サンバルカン』主題歌の替え歌であり、「内容の過激さとノリの良さから、1度聞いたら忘れられない迷曲」などと言われる。タイトルロゴもサンバルカンのそれを真似たものであった。また、エンディングテーマ『起て!大日本』も替え歌(元ネタは『立て!バルディオス』(アニメ『宇宙戦士バルディオス』挿入歌))である。
タイトルから想像されるとおり、当時まだ冷戦下にあった東側大国を「おちょくった」ような内容ではあるが、鑑賞者のほとんどは時事ネタのどぎついジョークとして気軽に楽しんだ。しかし、一部の東欧SFファンの中にはこれを問題視するグループ(たとえばイスカーチェリ)もあり、「大日本論争」と呼ばれる活動も発生した。この影響で本作オープニングにカメオ出演したSF作家からダイコンフィルムに申し入れがあり、本作を公の場所で放映する場合は、その作家の顔と名前を塗りつぶしたバージョンが用いられるようになった。なお、共産主義を風刺するだけでなく実は右翼も「揶揄」した内容であることにも注目すべきである。
製作陣の多くのスタッフが当時大阪芸術大学の現役の学生であったため、戦闘員「ハラショマン」のコスチュームは大阪芸術大学のジャージがそのまま使用されている。また、「ロスケ」や「アカ」という蔑称がそのまま使われている。登場する怪人「ミンスク仮面」は当時のソ連脅威論の拠り所のひとつであった航空母艦「ミンスク」を擬人化したものである。
[編集] 内容
北から神国・日本を狙う悪の組織「レッドベアー」は、洗脳五カ年計画実行のため、怪人「ミンスク仮面」やヒラ戦闘員「ハラショマン」を使って、子供達の教科書を真っ赤に塗りたくる作戦を開始した。アイ・カミカゼ、アイ・ハラキリ、アイ・スキヤキ、アイ・テンプラ、アイ・ゲイシャの5人の愛國戰隊大日本は、巨大空中母艦「大日本戦艦」と巨大合体ロボ「大日本ロボ」を駆り、アカの脅威から御国を守り抜くため、日夜戦い続ける。
[編集] 派生
本作を契機に、自主制作映画で戦隊もののパロディがいくつも作られた。 特に、フランスで制作が続いている『銃士戦隊フランスファイブ』のシリーズは日本に逆輸入された。
またダイコンフィルム自身によるメタパロディとして、ゼネラルプロダクツから発行された同人誌『よい子の匪歌集』にあらすじとイラスト、また主題歌の歌詞のみの形で発表された『共産戰隊ダイロシアン』がある。これは『愛國戰隊大日本』の基本設定を下敷きにソビエトと日本の立場を逆転させたもので、『愛國戰隊大日本』と同様に『太陽戦隊サンバルカン』の主題歌の替え歌を主題歌としている。
ほかに、本作へのオマージュ作品として1985年に仏陀電影というサークルが製作した『仏教戦隊ブッダマン』や1997年に京都大学のアニメ同好会が制作した『怨念戦隊ルサンチマン』などがある。
[編集] 関連
以上は主題歌の元ネタ作品。