期待値
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確率論において、確率変数の期待値(きたいち)とは確率変数のとりうる値とその値になる確率を掛けて総和を取ったものである。 ギャンブルの言葉で言うと、掛け金に対して戻ってくると期待できる金額をあらわしたものである。ただし、確率変数が期待値ぴったりの値を取りやすいというわけでもなく、また、絶対にとらない値になることもある(例えば、サイコロの目の期待値は 7/2 であるが、そのような目は出ようがない)。
似たような言葉で、確率・統計では平均という概念もあるが、平均は確率変数の値を複数回にわたり観測した際に得られた実現値を相加平均するもので、期待値は一回きりの観測で期待される値を計るものであるから、異なる概念である。期待値と平均は大数の法則によって関連付けられる。
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[編集] 定義
確率空間を (Ω, F, P) としたとき、確率変数 X が可積分であるとは
を満たすことであり、期待値は可積分な確率変数 X にたいして
とくに、X が可算個の値 {x1, x2, …} しかとらない場合は単に
と書くことができる。
よく使う記号で、事象 A にたいして、
と書いて期待値をとる範囲を A に制限することがある。
[編集] 性質
期待値は積分によって定義されるので、積分のもつ性質をすべてもっている。
- 線形性
- 単調性
- イェンセンの不等式: 凸関数 φ にたいして
- チェビシェフの不等式: (0, ∞) 上定義された正値単調増加関数 φ と任意の正の数 ε にたいして
さらに、二つの可積分確率変数 X と Y が独立の場合は
が成立する。
[編集] 計算法
期待値は抽象的なルベーグ積分で定義されているので、計算するときには積分の変数変換をおこなって確率変数の分布で積分するのが普通である。確率変数 X の分布を PX とすると、任意の可測関数 f にたいして
となり、さらに PX が確率密度関数 p を持つときは
により、リーマン積分のやり方で計算できるようになる。
[編集] 例題
[編集] サイコロの期待値
6面体のサイコロを1回振るものとして、その時に出る目の期待値を考える。出る目の確率はすべてとする。
となり、サイコロの出る目の期待値は3.5だということがわかる。
[編集] くじ引きの期待値
次のようなゲームを考える。
- 100円支払えば1回、6面サイコロを振ることができる。
- サイコロの目に応じて、次の金額を貰える。
- 1 : 20円
- 2 : 50円
- 3 : 100円
- 4 : 100円
- 5 : 150円
- 6 : 150円
このとき、貰える金額の期待値を求めると、
E = 20×(1/6) + 50×(1/6) + 100×(1/6) + 100×(1/6) + 150×(1/6) + 150×(1/6) = 95
である。得られる金額の期待値95円が参加費100円を下回ることから、このゲームは参加者が得をする可能性もあるものの平均的には損をするということが分かる。特に回数を多く行なえば行なうほど、行なった回数×5円の損をした状態に限りなく近づく。
[編集] 関連項目
- モーメント - 分散
- 特性関数
- 条件付期待値
- 聖ペテルスブルグのパラドックス - 期待値が求められない例