松浦寿輝
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松浦 寿輝(まつうら ひさき、1954年3月18日 - )は、東京都出身のフランス文学者、詩人、映画批評家、小説家。蓮實重彦門下で、共同で映画論の講義を担当したこともある。現在、群像新人文学賞、文学界新人賞選考委員。
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[編集] 人物
実家は、味噌屋。幼少期から映画を愛し、家のすぐ裏側が映画館であったという体験は、初の映画評論集『映画n-1』の後書きに語られている。クリント・イーストウッド、ベルナルド・ベルトルッチ、そして何よりもアルフレッド・ヒッチコックの監督作品をこよなく愛しており、東大の映画講義でもしばしば言及する。ただジャン=リュック・ゴダールには、近年のあからさまなアジア蔑視に対して疑問を感じている。
通俗的映画への偏愛も隠さず、授業では『アスファルト・ジャングル』、『ウエスタン』から『ミッション:インポッシブル』、『チャーリーズ・エンジェル』、『キューティーハニー』などもとりあげる。学生たちにも、それらを見ることを推奨している。月刊情報誌『インビテーション』では師の蓮實とともに鋭い映画批評を展開している。
小説家としての松浦寿輝は、日本の古井由吉、吉田健一、内田百間、そしてフランスのマルセル・プルーストとロラン・バルトを敬愛している。また中井久夫、川村二郎を知識人として深く尊敬している。最後まで小説を書かなかったバルトへの思いは「名前」(『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』)に詳しい。
社会から脱落した中年男性を主人公とした作品が多く、作者自身の内面世界の投影にも思えるが、松浦その人とは微妙に(決定的に)ズレている。地下、水、女性、腐敗といったイメージ群が飛びかい、「そういうことなのか」といった独白が間歇的に呟かれ、読者に奇妙なカタルシスを与える。ストーリーよりも断片的な記憶の連鎖を愉しむべき小説世界といえよう。『巴』、『半島』といった長編小説も手がけるが、著者自身は短編小説の方により深い愛着を感じている。
『半島』の装丁ではヴィルヘルム・ハメルショイを、『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』の装丁ではフィリップ・モーリッツの銅版画をあしらい、細やかな美意識を感じさせる。また近著『そこでゆっくり死んでいきたい気持をそそる場所』の一篇「あやとり」では自身による猫の兄弟の挿画に挑戦する。
[編集] 学歴
[編集] 職歴
- 東大教養学部フランス語教室助手。
- 1986年 電気通信大学人文社会科学系列講師。
- 同助教授。
- 1991年、東大教養学部フランス語教室助教授。
- 同大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(表象文化論コース)・教養学部超域文化科学科教授。
[編集] 受賞歴
- フランス語スピーチコンテストのコンクール・ド・フランセで入賞。
- 1988年 - 詩集「冬の本」で第18回高見順賞。
- 1995年 - 批評「エッフェル塔試論」で第7回吉田秀和賞。
- 1996年 - 批評「折口信夫論」で第9回三島由紀夫賞。
- 1999年 - 批評「知の庭園」で第50回芸術選奨文部大臣賞評論等部門。
- 2000年 - 小説「花腐し」(はなくた-)で第123回芥川龍之介賞。
[編集] 主な著作
[編集] 評論
- 物質と記憶
- 折口信夫論
- 口唇論
- 謎・死・閾
- 知の庭園
- エッフェル塔試論
- 表象と倒錯
- 平面論
- 官能の哲学
[編集] 小説
- もののたはむれ
- 幽
- 花腐し
- 半島
- 巴
- あやめ 鰈 ひかがみ
- そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所
[編集] 映画評論
- 映画n-1
- 映画1+1
- ゴダール
[編集] 詩
- ウサギのダンス
- 詩篇20
- 松浦寿輝詩集
- 冬の本
- 女中
- 鳥の計画
[編集] エッセイ
- 青天有月
- 方法叙説
- 散歩のあいまにこんなことを考えていた
- 青の奇蹟
- 晴れのち曇りときどき読書
[編集] 絵本
- ウサギの本