森林破壊
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森林破壊(しんりんはかい)とは、自然の回復力を超える樹木の伐採により森林が減少もしくは存在しなくなる状況を指す。
森林面積自体は全地表面積の30%前後の値を保っている。1950年から2000年にかけて森林面積比はほとんど変化していない。つまり、森林破壊は地域的な現象であることが分かる。温帯林については植林により森林面積は安定している。熱帯林についても年間の減少率は1%以下である。
森林破壊が目立つ地域としては、砂漠地域の周辺域、例えばサハラ砂漠南部のサヘル地域などがある。生活に必要な燃料を樹木から得るため、村落周辺の樹木の密度が低下している。地域によっては家畜の糞を乾かして燃料に使う場合がある。
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[編集] 問題点
森林の保水力が失われる結果、土壌栄養分の流亡や洪水、崖崩れを引き起こすことがある(水源涵養機能の低下)。また水質・大気浄化能力を低下させる。さらに、二酸化炭素の固定機能の低下の結果地球温暖化につながると指摘される。生態学的な観点から見た場合、陸上生態系の基盤となる森林を失うことで生態系自体の安定性を低下させ、森林で生きる動植物や昆虫の住みかを奪うことになる。
基本的かつ公共性の高い社会資本の喪失という側面もあるため、途上国における森林破壊は国際的な経済格差拡大の原因のひとつともなっている。
[編集] 木材としての伐採による森林破壊
日本では戦後、高度経済成長に伴う木材需要に対応するため、大規模に天然林が伐採され、住宅の梁や柱、家具材などとして消費されたこうして伐採された所にスギなどが大量に植林がなされた。現在では安価な外材の輸入の増加とともに国産木材が売れなくなったことと林業就労者の収入減少が影響し、林業就労者の減少がおき、間伐や間引きなどの手入れの行き届いていない不成績造林地が増加して全国各地で問題になっている。手入れの行き届いていない所では木々が密集した状態で日光が十分に当たらなく細い木ばかりになっている。
[編集] 道路・建築物の設置のための伐採による森林破壊
道路の敷設に関しては、森林が分断化されることで動物や昆虫などの移動が制限される、車に轢かれるなどの問題が起こっており、森林生態系への影響が懸念される。
[編集] 焼畑のための伐採による森林破壊
[編集] 森林破壊の歴史
[編集] 中世ヴェネツィアと森林破壊
海の女王として栄えた中世のヴェネツィア共和国では、農業の他に海上貿易に必要な輸送船や艦船を建造するための木材確保が重要だった。森林資源の枯渇が進むにつれて木材の確保に苦しむようになり、森林資源の保護や木材の使用を制限する法律が出されるようになった。
[編集] ヨーロッパの産業革命と森林破壊
18世紀後半にイギリスからはじまった産業革命の背景の1つに森林破壊が関わっている。燃料として使用していた木炭の消費により森林資源の枯渇が進み、代替燃料として当時はまだ扱いが困難だった石炭への転換が進められた。いわば必要に迫られての技術革新が産業革命をおこすきっかけの1つとなった。→ 産業革命
[編集] 植林の取り組み
保全生態学の観点からは潜在的な(その場所のもともとの)植生や地理的な遺伝変異などを考慮した植林がなされるべきだが、現在一般的に行われている事例ではそうしたことを意識すらされていない場合がほとんどである。また(林業関係以外の)企業が行う植林にはいわゆる「環境に配慮した」活動をしていることにより企業イメージの向上を図るという側面もある。
[編集] 解決手段
森林破壊を食い止めるための有効な解決手段として、世界では麻(亜麻、ケナフなど)の栽培が注目されている。
麻は一般的に繊維の一つとして認識されているためあまりしられていないがパルプ原料として栽培も収穫も非常に簡単で、木材はパルプの原料として栽培するために20年以上かかるが、麻は約100日で栽培でき毎年の収穫が可能である。麻が世界で栽培されるようになれば、今までの10分の1のコストで一本の木も切らずに全世界へパルプの供給ができるという試算もある。また、麻は落葉樹の3~4倍もの二酸化炭素を吸収するため、麻の栽培・収穫によるパルプの生産がそのまま地球温暖化の防止にもつながる利点がある。
ただし、麻薬成分を含む大麻の場合、免許を得ずに所持・栽培を行うと大麻取締法で規制される。
森林保全、特に開発途上国における森林保全の手段として、注目されているのが、地域コミュニティの住民参加を踏まえた草の根民活の参加である。
森林は、伝統的には薪を初めとするバイオマスの供給源として世界各地で利用されている。国連食糧農業機関の推計した林業統計では、開発途上国における木材生産の8割が薪炭生産で占められている。そこで、森林減少の大きな要因は、材木会社などが行う用材生産ではなく、薪採取であるとする見解もある。
しかし、開発途上国の現地住民が行う薪採取とは、樹木を伐採するのではなく、小枝を刈ることである。切られた枝は再び生えてくるから、森林は再生可能な範囲で利用されている。そして、薪は木質バイオスの有効活用であり、煮炊き、調理、給湯などに使われる再生可能エネルギーである。そして、薪を採取する里山、柴山、入会地は、ローカル・コモンズであり、住民の管理の下に持続可能な利用が図られている。このように、森林が再生可能な範囲で利用する現地住民は、草の根民活として、持続可能な開発に参加しているといえよう。したがって、森林の保全を図るには、現地で森林を利用している住民の参加をふまえて、彼らの労力、技能を生かして、森林を持続可能な形で利用し、管理することが、森林破壊を防ぐことに繋がると考えられる。