母子健康手帳
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母子健康手帳(ぼしけんこうてちょう)とは、母子保健法に定められた市町村が交付する手帳の事である。
[編集] 概要
- 通常、妊娠している事が分かった時点で住所地の市区町村長に「妊娠届」を提出するが、これによって市区町村長から渡される。国籍や年齢に関わらず交付を受ける事が出来る。又、特に外国人の居住人口が多い市区町村、例えば神奈川県川崎市や横浜市、静岡県浜松市等、独自に外国語版の母子健康手帳が作成されている場合がある。
- この手帳は、出産までの妊婦の健康状況やアドバイス・そして出産時の大切な事項(出生日や時間・出生した施設・病院の名称等)・出産後の予防接種や成長状況等を記入する。又、母親自身が成長記録をする欄もある。幼稚園や保育園、小学校等に入園 / 入学する際に使用する事がある。
- 現在では、手帳を作製する業者は相当数おり、市町村毎に異なる手帳が使われている。
[編集] 経緯
- 太平洋戦争直前の日本では、1937年に後の母子手帳の根拠法令となる母子保健法が施行された。これは1941年の人口政策確立要綱で見られる「1夫妻5児」のような、戦時体制下の極端な人口増加施策の一環であった。こうした結果、目的や結果はともかく出産~保育の環境が著しく急速に整備された。
- 1942年 国による妊産婦手帳制度が発足。戦時下においても物資の優先配給が保証されるとともに、定期的な医師の診察を促すことを目的とした。
- 1947年 児童福祉法施行。翌年から妊産婦手帳が母子手帳に衣替えが行われるとともに内容の充実が図られた。
- 1966年 母子保健法施行。翌年から母子手帳が母子健康手帳に衣替えした。
- 1981年 母子保健法の改正に伴い、母親が成長記録が書き込める方式へ変更された。
- 1991年 母子保健法の改正によって、都道府県交付から市町村交付へと変更された。
[編集] 海外への普及
- 日本独自に発展した母子健康手帳であったが、1980年代にJICAの研修で日本を訪れていたインドネシア人の医師が、母子の健康に貢献する優位性に着目し、母国での普及を思い立つ。
- インドネシアにて、1989年から試験的に手帳の配布を開始。有効性を認識した日本政府も支援に乗り出し、1998年からは「母と子の健康手帳プロジェクト」として普及が進められた。この結果、普及が進んだ地域では、数年間で乳幼児の死亡率が半減する成果が得られたという。
- インドネシア版の母子健康手帳は、日本の手帳と比べて大型(A5ノートサイズ)で、イラストを多用するなど、たとえ文盲の母親が存在したとしても理解できるように工夫されており、簡易な育児書としても活用できるよう工夫されている。
- JICAでは、母子健康手帳を意識した研修指導を行うようになり、メキシコやパレスチナでの普及に着手。いずれはアフリカ諸国をも視野に入れた普及を目指している。