消滅時効
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消滅時効(しょうめつじこう)とは、一定期間行使されない場合、権利を消滅させる制度で、取得時効とともに時効の一つである。所有権は消滅時効にかからない。 時効期間は、債権では10年、それ以外の財産権(ただし所有権を除く)は20年である(民法第167条)。
[編集] 短期消滅時効
民法や商法には、権利関係を迅速に確定するためにより短い期間で時効が成立する場合がある。これを総称して短期消滅時効というが、以下のような例がある。
- 5年
- 商事債権(商法第522条)
- 年金・恩給・扶助料・地代・利息・賃借料(民法第169条)
- 労働者の退職手当(労働基準法第115条後段)
- 財産管理に関する親子間の債権(民法第832条)
- 相続回復請求権 相続権を侵害された事実を知ったときから(民法第884条)
- 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利(地方自治法第236条)
- 3年
- 医師・助産師・薬剤師の医療・助産・調剤に関する債権(民法第170条第1号)
- 技師・棟梁・請負人の工事に関する債権 工事終了のときから(民法第170条第2号)
- 不法行為に基づく損害賠償請求権 損害および加害者を知ったときから(民法第724条、製造物責任法第5条)
- 弁護士・弁護士法人・公証人の職務に関して受け取った書類についての義務に対する権利(民法第171条)
- 為替手形の所持人から引受人に対する請求権(手形法第70条第1項)
- 約束手形の所持人から振出人に対する請求権(手形法第77条第1項第8号、なお、同法第78条第1項参照)
- 2年
- 弁護士・弁護士法人・公証人の職務に関する債権(民法第172条)
- 生産者・卸売または小売商人の売掛代金債権(民法第173条第1号)
- 居職人・製造人の仕事に関する債権(民法第173条第2号)
- 学芸・技能の教育者の教育・衣食・寄宿に関する債権(民法173条第3号)
- 労働者の賃金(退職手当を除く)・災害補償その他の請求権(労働基準法第115条前段)
- 1年
- 月又はこれより短い期間で定めた使用人の給料(民法第174条第1号)
- 労力者(大工・左官等)・演芸人の賃金ならびにその供給した物の代価(民法第174条第2号)
- 運送費(民法第174条第3号)
- ホテルや旅館の宿泊料・キャバレーや料理店などの飲食料(民法第174条第4号)
- 貸衣装など動産の損料(民法第174条5号)
- 遺留分減殺(げんさい)請求権 相続開始および減殺請求権があったことを知ったときから(民法第1042条)
- 為替手形の所持人から裏書人や振出人に対する請求権(手形法第70条)
- 約束手形の所持人から裏書人に対する請求権(手形法第77条第1項第8号)
- 支払保証をした支払人に対する小切手上の請求権(小切手法第58条)
- 6ヶ月
- 約束手形・為替手形の裏書人から他の裏書人や振出人に対する遡求権または請求権(手形法第70条第3項)
- 小切手所持人・裏書人の、他の裏書人・振出人その他の債務者に対する遡求権(小切手法第51条)
ただし、これらの短期消滅時効にかかるものであっても、確定判決などの公的手続によって確定した場合は、確定したときからあらためて10年間の時効が進行する(民法第174条の2)。
[編集] 会計法
国の金銭債権については、消滅時効の特則があり会計法に規定がある 。
- 第30条
- 金銭の給付を目的とする国の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、5年間これを行わないときは、時効に因り消滅する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
- 第31条
- 金銭の給付を目的とする国の権利の時効による消滅については、別段の規定がないときは、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
- 金銭の給付を目的とする国の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項(前項に規定する事項を除く。)に関し、適用すべき他の法律の規定がないときは、民法の規定を準用する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
- 第32条
- 法令の規定により、国がなす納入の告知は、民法第153条(前条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。