珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち-
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『珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち-』（ちんゆうき たろうとゆかいななかまたち）は、漫☆画太郎の漫画。
目次 |
[編集] 概要
1990年から1992年にかけて「週刊少年ジャンプ」（集英社）にて連載された。
作品の構図は基本的に西遊記をモチーフとしている。孫悟空にあたる、凶暴なかぶき者の山田太郎が、玄じょう（本文ママ）に調伏されて猿のような姿となり、一緒に天竺を目指す（その途中で様々な騒動を起こす）というギャグ漫画。
[編集] 評価
物語序盤は、絵柄のインパクト等によって読者人気が高かったが、ストーリー展開を「来週までに考える」と先延ばししてのページ稼ぎの大ゴマや（コピー機を購入した嬉しさから）コピーを多用し、その後は旅そっちのけでガンス・ザーマス・カイカイ・フンガーの話が延々続いたり（サブタイトルは「天狗の鼻おれ!!」）、たけしと本屋のばばあの戦いが起きたりと物語が破綻した。結果、次第に読者人気が下がり、ついには「天狗の鼻おれ!!」のサブタイトルのままで急遽打ち切られた。
連載中には後に出てくる豚と河童のキャラの名前募集があったが、結局この募集企画は中止された。漫画の常識を無視した物語展開がストーリー発展の妨げになり、ついには打ち切りの主要な要因の一つともなった事は、その後の画太郎作品の方向性をも確立させ、未だに批判の対象になることもある。
また、作中キャラが「ヨダレ・鼻汁」を垂れているシーンやお下劣なシーンが多く見られ、さらに作画が落書きのような感じで汚いと言う声が絶えなかった。後の画太郎作品にも影響しているほどスカトロネタや嘔吐シーンも数多く描かれた。このため、「そういう処が面白い」と言う読者には多大な支持を受けている反面、「週刊少年ジャンプのワースト漫画、低俗漫画」である、と言う声も少なくなく、賛否が大きく分かれる作品だった事は否めない。
しかし、その漫画の常識を無視した展開には熱狂的ファンも多い。電気グルーヴも大ファンで当時放送されていたオールナイトニッポンで盛んにこの作品を薦めた。それに感謝した画太郎がサイン色紙を番組へ贈った事もある。それが縁で物語終盤近くにて「街一番のかぶき者・電気グルーヴ」として出演を果たした。
『ドラゴンクエスト』『ドラゴンボール』『花の慶次』『バスタード!!』などのパロディも各所に見られる。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 登場人物
- 山田 太郎（やまだ たろう）
- 主人公。町一番のかぶき者で暴れん坊。強大な超能力により数々の敵を蹴散らしてきた。警察により1億円の賞金首を賭けられている。しかし玄じょうの呪文・妖気吸収石（パンパース）により、角刈りの大男から毛が3本しかない猿の様な姿となった。以後玄じょうのお供として天竺を目指すのだが、性格は変わらなかったため常に脱走を試み玄じょうの命を狙い続ける。太郎が猿のようになった事を知るのは玄じょう、およびじじいとばばあのみ。
- 玄じょう
- 旅の僧侶。太郎を育てたじじい、ばばあに懇願され太郎を引き取った。強力な法力の持ち主で、町の老人達の病気を治し続ける事になったが、その間何十話にもわたり出番はなかった。普段はオカマのような口調だが、法力が高まると顔がいかつくなり厳しい言葉遣いになる。寝起きが非常に悪く、寝惚けている間は太郎以上に凶暴な性格となる。
- じじいとばばあ
- 太郎の育ての親。子が欲しいと思っている所に雷が落ち、そこにいた太郎を実の子供のように育てる。太郎が大きくなるにつれ太郎の持つ超人的な能力に悩まされ続けるが、偶然やってきた玄じょうに助けを求める。かなり金に汚い性格をしている。
- 狐
- 人を喰う九尾の化け狐。老婆に化け宿泊と食事を求めた玄じょうと太郎を招き入れチャンスを伺ったが、太郎が玄じょうを殺すべく捕ってきた人面魚の肉（猛毒）入りスープを食べて即死。
- 珍々
- ラーメン屋の親父。作るラーメンは旨いのだが、自身のかなりの体臭により店は閑古鳥が鳴いていた。体臭を玄じょうに治してもらい、以後店は大繁盛。しかし、玄じょうのうわさを聞きつけた町の老人達の溜り場となってしまう。「まんねん」「～よろしよ」といった口調。
- まりお
- 太郎の賞金首を狙う賞金稼ぎ達が溜り場とする酒屋兼宿屋の親父。太郎の貫禄に心酔しきっている（この時の太郎は猿の姿。なお、まりおも彼が実は太郎である事を知らない）。見た目は名前の通り、任天堂の一ゲームキャラに似ている。
- るいじー
- まりおの酒屋で働く琵琶法師でまりおの父。太郎と外人軍団の戦いの最中、ずっとハイテンションな曲を弾いていた。名前の元ネタはまりおと同様、任天堂の一ゲームキャラの弟だが、見た目は似ていない。
- ガンス
- ザーマス
- 外人軍団最強の魔法使い。登場した当初は長髪のキザな男だったが、のちに容姿が崩れ髪の毛はかなり抜け落ち老化する。『おそ松くん』のイヤミのような口調をしていて、語尾には常に「ざます」が付くが、追い詰められるとなぜか関西弁になる。もちろん一人称は「ミー」。「我々」は「アス」という。「芸術的爆発地獄（ウロタトモカーオ）」という禁呪の許可を警察にもらいに行くが、昼寝している保安官を起こして怒りを買い、投獄されてしまう。その後呪文で脱獄するが、自らが3万円の賞金首になってしまう。
- カイカイ
- 外人軍団の女魔法使い。昔は美少女魔法使いであったそうだが（連載時の扉絵で回想シーンとして小柄な少女が描かれていた）、風貌が変わりかなりの巨漢となってしまった。名前は前述の通り、『怪物くん』からだが、魔女で髪型とリボンが同じという点から『魔女の宅急便』のパロディの意味もある。(『魔女の宅急便』の主人公「キキ」＝「奇々怪々」＝「カイカイ」)法力がかなり強く、張り手などの体力技も得意だが太郎には通用せず、うっちゃられて酒場の2階から転落。その際に記憶をなくし、以後ピーチという名（元ネタは任天堂の一ゲームキャラ（姫役））でまりおの養女になり、酒場での踊り子として働く事に。
- フンガー
- 外人軍団の大男。フランケンシュタインズモンスターのような姿をしているが、実はザーマスが「野獣家来化呪文（ゴンダビーキ）」という呪文で最強最悪の野獣・ビババンゴ（ヒババゴン）を封印した仮の姿である。太郎の頭突きを受けたショックで封印がとけ、大暴れする。しかし太郎に公園のオブジェクトを頭へかぶせられ、それを取ろうとした弾みで自分の首を千切ってしまう。首は頭の毛を太郎が狩り込み、玄じょうに力を封印される前の太郎そっくりにされて賞金と交換された（賞金は太郎、まりお、るいじーで山分け）。体はまりおによって燻製にされ、店の名物となった。
- たけし軍団
- たけし・きよし・やすしの悪ガキ3人組。リーダーの中村たけしは伝説の格闘家・中村泰造の息子で、卑怯だが男気溢れる性格をしている。きよしは一番の弱虫。やすしはたけしの忠実なブレイン。本屋で万引きをした件で太郎と喧嘩になるが簡単にのされてしまい、たけしは服を奪われてふんどし一枚になってしまう。外人戦が終った後に再登場。本屋のばばあから逆襲されてリンチを受けるが、これをきっかけに3人は結束を高めた。その後玄じょうに再会し、奪われた服の代わりに太郎が着ていた超高級かぶき服「オールタイガー（電気グルーヴのうんこ付き）」を貰う。のちにたけしは一線を退いた泰造の意思を継ぎ、父をしのぐ格闘家として活躍した。元ネタはビートたけし、西川きよし、横山やすし。
- 中村 泰造（なかむら たいぞう）※不完全版、廉価版では"中村 タイ造"
- たけしの父で伝説の格闘家として名声を集めたが、かなりの飲んだくれで人々から徐々に蔑まれるようになる。だが、太郎の攻撃を全てかわす等、実力は衰えていない。ケンタッキーのカーネル人形に酔っ払って絡んでいる所、寝ている玄じょうを起こさずに殺そうと画策していた太郎と喧嘩になり、玄じょうを太郎の親と勘違いして起こしてしまう。そのため、寝ぼけた玄じょうにボコボコにされる。玄じょうに負けた泰造は自分の時代が去った事を痛感して一線を退き、泰造流武道の極意を息子のたけしに伝授する事を決意する。
- 当時の担当編集者（2007年現在は「ビジネスジャンプ」編集長）の名前をそのまま拝借しており、その後も中村泰造は画太郎作品に度々登場することになる。
- 本屋のばばあ
- 夫に先立たれており、現在は一人暮らし。たけしの父・泰造に強い恨みを持っている。たけし軍団に本を万引きされた事を恨み、玄じょうにパワーアップしてもらい、その復讐を遂げるが、たけし軍団の友情に心を打たれて立ち去る。実は本気ではなく、その時持ち出した武器も本物ではなかった（あからさまな後付けのオチだが…）。その後万引きビデオを売り出して社会問題になった。
- 玉袋 金造（たまぶくろ きんぞう）※不完全版、廉価版は未登場
- 巨大な体で、皮膚が妖怪化している程の邪悪な雰囲気を持った自称大金持ちの老人。玄じょうの治療を待つ老人たちを跳ね除けて強引に列へ割り込む。玄じょうに病気の治療を頼むが断られ、キレるが返り討ちにされる。「治療してくれれば百万円のお布施を払うつもりだったのに」と捨て台詞を吐き立ち去ろうとした所、金に目が眩んだ玄じょうに引き止められる。仏の気を直接送り込まれて改心し、心も体も若返って別人のようになり、実は一文無しであった事を正直に告白する。その後、終盤になって再登場。新聞配達中に道路で眠る太郎を発見し、新聞紙をかぶせてやっていた。
- やおい
- ピポポ星人※不完全版、廉価版は未登場
- 2名いる。恐らくは地球侵略が目的で、円盤で地球を訪れたところ、太郎に興味を持ち円盤内に無理矢理移送したが、太郎に暴れられた挙句に円盤は破壊されて墜落、体が地球環境に耐えられなかったため、落ちた場所で巻き添いに遭ったやおいの両親の肉体を乗っ取り、以後そのまま地球に居座った。星人の本体は何処かのSF映画で見られた様なナメクジに似た生命体で、円盤内に居た者の体は、以前に侵略した星の生命体のそれを流用していたものと思われる。
- 作者（かみ）※不完全版、廉価版は下記のウロタトモカーオの場面のみ未登場
- この漫画（せかい）を作った神。「芸術的爆発地獄（ウロタトモカーオ）」を使うか使わないかで外人軍団がもめ始めたので、業を煮やしザーマスに警察の許可を取れと助言をした。しかし、ザーマスに今思いついたのではないかと言われ馬鹿にされる。他にも通行人として何度か登場している。
- 珍 遊記（ちん ゆうき）※不完全版、廉価版は未登場
- ジャンプコミックス版の単行本全巻巻末にある「予告まんが」の主人公。あまりにも「珍遊記」の展開がひどすぎることから、作者を殺す決意を固めるが、結果は未遂に終わり、最終巻では作者の偉大さを思い知った。4、5巻では「予告まんが」は一旦打ち切られ「Fの1」に差し替えられた。尚、「予告まんが」とは名ばかりで、実際の内容は作者の自虐ネタ。漫画の常識を無視した連載長期化すらも取り上げて自身でネタにしてしまうほどである。
[編集] 物語の展開
- 第一部 太郎と玄じょうの戦い。玄じょう、サルになった太郎を引き取る。
- 第二部 旅の珍道中。玄じょう、珍々の店で足止めを食らう。太郎、たけし軍団との戦いを経て酒を飲みに酒場へ。
- 第三部 太郎の首を狙う賞金稼ぎと太郎との戦い。太郎か太郎でないかで賞金稼ぎ達が揉め始め、遅々として話が進まない。
- 第四部 外国人軍団と太郎との戦い。ほぼこのシリーズで物語の90％が占められる。以下、内容を要約。
- 太郎の頭突きでフンガーがやられる。あせるザーマス。高笑いし続ける太郎。
- ガンス、カイカイが起きる。二人とも笑っているサルが太郎だと信じない。そんな二人にザーマスはキレる。しかしザーマスの懸命な説明にようやく納得する二人。
- 太郎対3人。ガンスがやられているすきにカイカイとザーマスの連携で、太郎、床に叩きつけられる。
- ガンス、自分がいかに今の戦いで重要な役割を果たしたか懸命に説明するも、ザーマスとカイカイは無視。太郎が死んだのか、生きているのかでザーマスとカイカイが揉め事になる。結局、ガンスがそれを確かめる事に。
- 太郎は生きていた。それを悔しがるザーマスは「芸術的爆死地獄」を使う事に決める。ガンスが警察の許可を取りに交番へ。
- 太郎対ザーマスとカイカイ。カイカイが酒場の地下へ放り投げられる。ザーマス、太郎に捕まり、リンチを受ける。
- ビババンゴ（ヒババゴン）が復活。太郎、公園のオブジェクトを頭へかぶせるも吹き飛ばされる。ビババンゴはそれを力任せに引き抜いた際、自分で首を千切ってしまう。辺りは血の海。
- ガンス、酒場に戻る。血まみれのザーマスに驚いて逃げるガンス。ザーマス最後の力を振り絞って交番に行くが、保安官を起こしてしまい投獄される。結局太郎の勝利に。
- 第五部 本屋のばばあによる、たけし軍団へのリンチ。
- 第六部 太郎、再び玄じょうと連れ立つ。太郎と玄じょうと中村泰造のくだらない戦いを経て、最終回を迎える。
上記、第二部～第六部はほぼ一日間の出来事で、サブタイトルは外人軍団との戦いから最終回までずっと「天狗の鼻おれ!!」のままである。
[編集] 呪文一覧
登場順
- 育毛（アデランス）
- 髪を生やす呪文。玄じょうがじじいに施した。
- 妖気吸収石（パンパース）
- 妖気を石に吸収させる呪文。このせいで、太郎はサルみたいになった。
- 転送（ファックス）
- 瞬間移動する呪文。
- 韋駄天走法（カルルイス）
- 早く走れる呪文。
- 悪臭退散（ニオイケス）
- 悪臭を無臭にする呪文。珍々の体臭を消した。
- メラメーラ
- 炎の塊をぶつける呪文だが、太郎には効かない。
- スカウター
- カイカイの特殊能力。相手の戦闘力が読めるが、太郎の戦闘力は測れなかった。
- ケツなおれ
- カンチョーを受けたザーマスの尾てい骨を直した、カイカイの呪文。
- 全身鋼鉄化呪文（ミナミコーテツ）
- 太郎の頭突きを止めた、カイカイの呪文。
- 対主人公爆死地獄（ズガドーン）
- 太郎を窮地に追い詰めた、ザーマスの呪文。
- 芸術的爆発地獄（ウロタトモカーオ）
- ザーマス最強の呪文。その使用はジュネーブ条約で禁止されており（ガンス談）、勝手に使うと死刑にされるが、やむを得ない場合は警察に許可を取れば使ってもいい。なお、実際には使われなかった（筈）。尚、不完全版と廉価版は上記の"ズガドーン"に差し替えられた。
- 壁（ベルリーノ）
- 目に見えない、げんこつせんべい千枚分の固さの壁を作る呪文。しかし太郎の頭突きで割れた。
- 爆発（ドーン）
- ザーマスの場つなぎ的な呪文。
- 野獣家来化呪文（ゴンダビーキ）
- ヒババゴンをフンガーに封印した呪文だが、太郎にやられたショックでフンガーがパニックに陥り、呪文の効果が解けてしまった。
[編集] 単行本
- ジャンプコミックス版の単行本は5、6巻の入手が難しい。また、全編を通して巻末にある「予告まんが」（4,5巻はFの1）は本編より人気が出てしまい、5巻の表紙には主人公の「珍遊記」が表紙になってしまった。裏表紙に「山田太(郎と書きかけて消した跡)ろう(湯気付きのうんこの絵)」という落書き風の署名がある。
- 不完全版が出るまで、単行本は長らく絶版になっていた。不完全版では、ジャンプコミックス版と比較して、内容が大幅加筆(削除)修正されている。加筆部分は絵のタッチが明らかにオリジナル部分とは違う(もちろん作者の意図的なものと思われる)。
- ジャンプリミックス（廉価版コミックス）（集英社）2006年刊行
- 1.太郎、玄じょうに出会うの巻 2006年11月13日発売
- 2.太郎、外国人と戦うの巻 2006年11月27日発売
- 3.太郎、死す!?の巻 2006年12月11日発売
- 話の内容･構成･展開は不完全版に準拠。
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