琉球大学
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琉球大学(りゅうきゅうだいがく、University of the Ryukyus)は、沖縄県中頭郡西原町にある沖縄県内唯一の国立大学。通称は「琉大」(りゅうだい)。西原町に属するも、キャンパスの敷地は中城村、宜野湾市の3市町村にまたがっている。
2006年9月30日より全国東宝系映画館で上映の映画「涙そうそう」の主要ロケ地として使われたことでも有名である(劇中でも当大学と同じ名称、学部名を使用)。
2007年に設立が予定されている沖縄科学技術大学院大学(仮称)(沖縄大学院大学)との関係も注目されるところである。
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[編集] 沿革
- 第2次大戦前の沖縄県には、大学や高等学校・高等専門学校といった高等教育機関は一つもなかった。(師範学校・青年師範学校(中等教育機関)のみ存在)
- 本学では、米国民政府→琉球政府→文部(科学)省→独立行政(国立大学)法人立と、4度にわたって設置者が変遷した。
- 1946年 具志川村(現:うるま市)に、小学校等の教員養成を目的とした沖縄文教学校が開学。また、外国語教育の施設として沖縄外国語学校が開校。
- 1950年5月22日 米国民政府布令第30号「琉球大学」に基づき、那覇市首里の首里城跡に琉球大学が開学(英語学部・教育学部・社会科学部・農学部・理学部・応用学芸部の6学部で構成され、沖縄文教学校、沖縄外国語学校は琉球大学に吸収される)
- 1951年 林学部を設置
- 1952年4月1日 英語学部を語学部に改称、応用学芸学部を商学部・家政学部に分離
- 1952年5月5日 奄美大島に琉球大学大島分校を設置
- 1953年12月25日 奄美大島の本土復帰により、大島分校廃校
- 1954年 文理学部・教育学部・農家政学部に統合編成
- 1958年 農家政学部を農家政工学部に改称
- 1966年 琉球大学設置法及び琉球大学管理法により、琉球政府立大学となる
- 1967年 法文学部・教育学部・理工学部・農学部に改編
- 1968年 保健学部を設置
- 1972年5月15日 沖縄の本土復帰により、文部省に移管され国立大学となる
- 1977年 現キャンパスへの移転事業が開始される(~1984年)
- 1979年 理工学部を理学部・工学部に分離、医学部を設置、保健学部は医学部保健学科となる
- 1996年 短期大学部を廃止
- 1997年 教養部廃止
- 2004年 国立大学法人法の規定により国立大学法人の設置する大学となる
[編集] キャンパス
- 大学本部や法文、教育、理、工、農の各学部、共通教育棟や各事務所などは千原(せんばる)キャンパス(西原町千原)にあり、医学部は少し離れたところに位置する上原(うえはら)キャンパス(西原町上原)にあり、附属病院もある。
- 千原キャンパスは中央に千原池があり、この池を境に南北に学部の配置が分かれている。千原池の東・南側(中城村側)に法文学部・教育学部・理学部・大学事務局・中央生協など、北側(宜野湾側)に農学部・工学部・北食堂・千原寮がある。女子学生の多い法文学部や教育学部などの学生は中央生協に集まることが多く、千原キャンパスにおける中心的な機能を担っている。一方、工学部や農学部は中央生協から500mほど離れており、しかも千原池を跨ぐ球陽橋を渡る必要がある。
- 食堂などの生協施設はキャンパス北側にも設置されているため、専門科目が多くなる高年次の工学部や農学部の学生はほとんど中央生協方面に足を運ばなくなる傾向がある。そのため、一部の学生は千原池北側の2学部を別の大学であるかのように扱い、皮肉も込めて「宜野湾農工大学」と総称する。また、工学部や農学部の学生も自嘲的にこのように呼称する場合もある。
- 3市町村にまたがる大学ではあるものの、千原キャンパス内の施設の住所は、学寮を除いて全て本部と同じ「西原町字千原1番地」である。学寮は、「西原町字千原59番地」。上原キャンパスは、「西原町字上原207番地」。また、東口側には附属の小学校と中学校がある。なお、附属高等学校は設置されてない。
- 2つのキャンパスの総面積は約126万平方メートルで東京ドーム約27倍の敷地面積を誇る。ただし,千原キャンパスにある農学部の農場も含む。この広さは、広島大学(約250万平メートル東広島キャンパス)、北海道大学(約178万平方メートル札幌市内)よりも狭いものの、東京大学の3つのキャンパス(合計約110万平方メートル=本郷キャンパス86万平方メートル+駒場キャンパス約13万平方メートル+柏キャンパス約11万平方メートル)を合計したものよりも広い。
- 構内には環状の片側1車線道路(通称「ループ道路」)が整備され、3つある構外からの入り口(東口、北口、南口)および、附属小中学校前、保健管理センター前の合計5箇所に信号機が設置されている。キャンパスは那覇中心街から離れた場所にあり、かつ公共交通機関がバスのみであるため(2007年3月現在、路線バスは北口に8系統、東口に3系統)、多くの教職員・学生が自動車や原付バイクなどで通勤、通学している。自動車の駐車スペースを確保するため、入構許可制を採り、入構証を自動車の見える場所に提示することによって、入構の許可・不許可を判断することになっている。なお、原則として片道2km以内で通勤および通学が可能な場合は、入構証は発行されない。入構証がない場合、校門守衛において入構を拒否される。ただ、実際にはこれは機能しておらず、近隣付近の住民も道路として利用している事が多い。また、歩行者も多く小学生が通勤路として利用している姿も見れる。
[編集] 学部・学科・コース(専攻課程)
[編集] 法文学部
- 総合社会システム学科 -平成18年までは4専攻課程からなるが、平成19年度より、3専攻課程に改編された。
- 法学専攻(昼間主)
- 経済学専攻(昼間主・夜間主)
- 政策科学・国際関係論専攻(昼間主)
- 産業経営学科(昼間主・夜間主) - 平成19年度より、総合社会システム学科経営学専攻から学科昇格。それまでの入学生は、総合社会システム学科経営学専攻に在籍となる。
- 観光科学科(昼間主) -国立大学初の観光に関する学科。学科内では英訳のDepartment of Tourism Scienceの略称であるDTSを用いているが、学内での浸透度は低い。英語教育に力をいれている。
- 人間科学科(昼間主)
- 人間行動専攻課程 -哲学・倫理コース/言語学コース/教育社会学コース/社会心理学コース/臨床心理学コース/人間行動論総合履修コース
- 社会学専攻課程 -社会学コース/社会福祉学コース/マスコミ学コース/生活福祉論コース
- 地理・人類学専攻課程 -人文地理学コース/地域情報学コース/地域環境学コース/社会人類学コース/民俗学コース/考古学コース/沖縄文化論コース/アジア・沖縄総合履修コース(国際言語文化学科にまたがるコース)
- 国際言語文化学科
- 日本文化及び琉球文化専攻課程
- 東洋文化専攻課程
- 英米文化専攻課程 -英米言語文化コース/西洋歴史文化コース
- ヨーロッパ文化専攻課程 -ドイツ言語文化コース/フランス言語文化コース/スペイン言語文化コース
- 言語情報科学専攻課程(以上昼間主のみ)
- 英米言語文化専攻課程(夜間主のみ)
[編集] 補足
- 平成20年度より、法文学部の以下の学科が、観光産業科学部(仮称)として発足予定。
- 観光科学科
- 産業経営学科
[編集] 教育学部
(昼間主のみ)
- 高等学校教諭(工業)の免許状は学校教育教員養成課程の技術教育専修で得られる。
- 学校教育教員養成課程
- 国語教育専修
- 社会科教育専修
- 数学教育専修
- 理科教育専修
- 音楽教育専修
- 美術教育専修
- 保健体育専修
- 技術教育専修
- 家政教育専修
- 英語教育専修
- 教育学専修
- 学校心理学専修
- 児童教育専修
- 障害児教育専修
- 生涯教育課程
- 日本語教育コース
- 情報教育コース
- 生涯健康教育コース
- 島嶼文化教育コース
- 教育カウンセリングコース
- 自然環境教育コース
[編集] 理学部
(昼間主のみ)
- 数理科学科
- 物質地球科学科
- 物理系
- 地学系
- 海洋自然科学科
- 化学系
- 生物系
1996年に大幅な学科改編が行われた。それまでの数学科が数理化学科に、物理学科及び海洋学科の一部が物質地球科学科に、化学科、生物学科及び海洋学科の一部が海洋自然科学化に、それぞれ統合・改編された。
[編集] 医学部
(昼間主のみ)
- 医学科
- 保健学科
[編集] 工学部
- 機械システム工学科(昼間主・夜間主)
- 環境建設工学科(昼間主)
- 土木コース
- 建築コース
- 電気・電子工学科(昼間主・夜間主)
- 情報工学科(昼間主)
[編集] 農学部
(昼間主のみ)
- 生物生産学科 -生物生産に関するバイオテクノロジーを総合的にとらえ、生物学的、理工学的、社会経済学的な諸分野から教育・研究を行う。また実習などを通して、生態学や生物多様性に関する分野についても触れる。
- 生産環境学科 -工学系と生物系の教育を有機的・調和的に行い、生物環境を多面的に評価・計画・創造できる知識・技術を身につける。そのため、「水」「土」「生きもの」の3本柱を基本要素としてとらえ、さらに、農村等における持続可能な豊かな生産と、生産環境にかかわる研究を行っている。
- 生物資源科学科 -微生物から動・植物にいたる多様な生物資源(バイオマス)を対象に、その機能や代謝などを分子レベルから集団レベルまで解明する。加えて、バイオテクノロジーによる資源の作出や機能性食品の開発にいたる幅広い教育・研究が行われている。
[編集] 大学院
[編集] 人文社会科学研究科
- 総合社会システム専攻
- 人間科学専攻
- 国際言語文化専攻
[編集] 教育学研究科
- 学校教育専攻
- 学校教育専修
- 教科教育専攻
- 国語教育専修
- 社会科教育専修
- 数学教育専修
- 理科教育専修
- 音楽教育専修
- 美術教育専修
- 保健体育専修
- 技術教育専修
- 家政教育専修
- 英語教育専修
- 臨床心理学専攻
[編集] 医学研究科
- 医科学専攻
- 感染制御医科学専攻
[編集] 保健学研究科
- 保健管理学分野
- 保健医療学分野
- 保健技術学分野
[編集] 理工学研究科
1998年4月に理学研究科と工学研究科が統合し、理工学研究科となる。
- 理学系
- 博士前期課程(修士課程)
- 数理科学専攻
- 物質地球科学専攻
- 海洋自然科学専攻
- 博士後期課程(博士課程)
- 海洋環境学専攻
- 博士前期課程(修士課程)
-
- 理工学研究科の設置に伴い、新設される。
- 工学系
- 博士前期課程(修士課程)
- 機械システム工学専攻
- 環境建設工学専攻
- 電気電子工学専攻
- 情報工学専攻
- 博士後期課程(博士課程)
- 生産エネルギー工学専攻
- 総合知能工学専攻
- 博士前期課程(修士課程)
[編集] 農学研究科
- 生物生産学専攻
- 生産環境学専攻
- 生物資源科学専攻
[編集] 法務研究科
2004年4月に開設された。
- 法務専攻(法科大学院)
[編集] 研究
[編集] 21世紀COEプログラム
21世紀COEプログラムには1件が採択されている。
- 革新的な学術分野(2004年度採択)
- サンゴ礁島嶼系の生物多様性の総合解析(理工学研究科)
[編集] 豊富な共通科目
- 共通教育科目の受講科目数は全国トップクラスの豊富さで、「熱帯−西表の自然」「ゼロエミッション−地球環境時代の産業と社会」など、宿泊して集中的に行われる科目も設置。加えて、「琉球の自然」「沖縄研究入門」など、沖縄の特異な歴史的・文化的風土と自然環境に焦点を当てた科目も開講している。
[編集] その他の特色
- 少人数教育、豊富なアジア言語、基礎学力補完のための転換科目の設置なども特徴。現在、沖縄の地域特性に根ざした研究を進めるとともに、学問の普遍的原理の探究と国際的水準の研究を行っている。
[編集] 学寮
- 鉄筋コンクリート建全個室で構成される千原寮(せんばるりょう)。千原キャンパスの北口(宜野湾口)のそばに位置し、男子寮4棟(南星棟、北辰棟、海邦棟、混住棟)と女子寮2棟(紫陽花棟、混住棟)および共用棟と呼ばれるロビーからなる。
- 定員は男子550人、女子230人。
- 居室はすべて個室。各棟の各階の10~12人を1グループとするユニット制で、各階のユニットには補食室、洗面洗濯室、トイレがある。なおシャワー室は共用棟にある。個室内には机、椅子、ベッド、ロッカー、書棚が備え付けられている。
- 寮生活にかかる費用は、寄宿費(3,000円または3,300円)と水光熱費を合わせて10,000円~15,000円程度。
- 高温多湿な沖縄だが、クーラーは使用禁止となっている。
- また、門限が寮則には定められているが、実際は深夜になっても寮周辺はかなり賑やかである。
- 女子の男子寮への立ち入りは特に禁じられていないが、男子の女子寮立ち入りは禁止。なお、男子が女子寮に3回立ち入りした場合、除籍になる恐れがある。
- 上記以外に、留学生専用の寮も存在する。
[編集] 附属施設
- 附属図書館
- 全国共同利用施設
- 学内共同教育研究施設
- 遺伝子実験センター
- 地域共同研究センター
- 機器分析センター
- 生涯学習教育研究センター
- 総合情報処理センター
- 留学生センター
- 学内共同利用施設
- 放射性同位元素等取扱施設
- 語学センター
- 資料館(風樹館)
- 環境安全センター
- 極低温センター
- 大学教育センター
- 大学評価センター
- 就職センター
- 移民研究センター
[編集] 学部附属の教育研究施設
- 琉球大学教育学部附属小学校
- 琉球大学教育学部附属中学校
- 教育学部附属教育実践総合センター
- 教育部附属障害児教育実践センター
- 医学部附属病院
- 医学部附属沖縄・アジア医学研究センター
- 医学部附属実験実習機器センター
- 医学部附属動物実験施設
- 工学部附属工作工場
- 亜熱帯フィールド科学教育研究センター
[編集] アクセス
[編集] 最寄り駅
[編集] バス
所要時間はそれぞれ乗り換え時間を除く。また、経由する道路の渋滞状況により大きく変化する場合があるので注意。
- 上記、最寄駅から「琉大東口」まで次の路線バスが発着している。
- 「琉大北口」のみの発着となる、次の路線バスもある。
- 古島駅より、98番・298番に乗車し、所要約35分。「琉大北口」(終点)にて降車。97番と同様、大学構内のバス駐車場まで乗車可能。
- 沖縄自動車道上の「琉大入口」(「琉大北口」至近)のみの発着となる、次の路線バスもある。
- また、沖縄都市モノレール線とは全く連絡しない場所を通過するが、「琉大東口」「琉大北口」を経由地とする58番という系統も存在する。
[編集] 大学関係者と組織
[編集] 大学関係者一覧
[編集] 関連項目
- 西日本の大学一覧
- 琉球大学委員会 - 政府立大学時代に設けられた琉球政府の行政委員会
- 琉球大学後援財団 - 旧・琉球大学財団
- 琉球の声放送 - 琉球放送の前身とも取れる局で、当大学キャンパス内に放送局があった
- 涙そうそう - 2006年9月30日より全国東宝系映画館で上映された映画。当大学がロケ地となった
[編集] 外部リンク
- 国立大学法人 琉球大学 - 公式サイト
- 琉球大学同窓会
- 琉球大学後援財団
- 非公式サイト
- 儀保駅からの路線バス時刻表
- 路線バス時刻表(儀保駅(駅前交番)前 → 琉球大学) - 97番・那覇バス(株)
- 路線バス時刻表(儀保駅(駅前交番)前 → 琉球大学) - 25番・那覇バス(株)
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