知床硫黄山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

知床硫黄山（しれとこいおうざん）とは、北海道羅臼町、斜里町にまたがる知床半島の中の活火山である。

知床硫黄山の噴煙

標高は1563m。現地では、単に硫黄山（いおうざん）と呼ばれるが、近隣の弟子屈町にも硫黄山（カムイヌプリ）があるため、区別するために知床硫黄山と呼ばれる。自然環境が過酷なこともあり、山麓には集落はなく、海岸線にわずかな番屋、カムイワッカの滝などの観光地があるだけである。

[編集] 特徴

地質は安山岩質の成層火山で、火口付近には溶岩円頂丘が形成されている。活動は活発であり、特筆すべきは純度の高い硫黄を噴出することである。明治年間に噴火した際には、ほぼ純度100％の溶解硫黄が噴出、斜里町側に流下しオホーツク海に流れ込んだ。当時は貴重な資源であった硫黄を直接採掘できるとあって、未踏の地同様であった地に鉱業関係者が殺到したという（現在であれば、硫黄による破局的な海洋汚染の問題で環境保護の関係者が殺到するであろう）。なお、現在、硫黄は石油精製時の副産物により国内消費量の全てをまかなっているため、産業としての鉱山の価値は全く無い。

[編集] 主な噴火歴

1857年～1858年　噴火
1876年9月24日　噴火
1889年8月9日　噴火　溶解硫黄の流出、噴煙をあげる
1890年6月15日　噴火　溶解硫黄が海まで流出
1935年12月　噴火活動が開始、翌年までに大量の熱湯と硫黄を海まで流下。この噴火による硫黄の総噴出量約20万トンと推測される。

[編集] 登山ルート

カムイワッカの滝の先500mほどに硫黄山の登山口（大きめの看板有り）が存在するが、2005年より季節運行のシャトルバス以外は通行ができなくなっているため、同登山道を利用する場合には事前に年々のアクセス情報を収集する必要がある。
カムイワッカ側の登山道入り口には入山届の箱が設置されている。山頂までの行程は日帰り登山も可能であるが、不慮の事態に備えて記録を残し、十分な装備を確保する必要である。
南西方向にそびえる羅臼岳からの縦走も可能である。
硫黄山の山腹は、ヒグマが多数出没する地域であること、また現在も活発な噴気活動が見られており、火山ガスが発生していることに留意しなければならない。