砕氷船
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砕氷船(さいひょうせん)は、海面の氷を割りながら進む船。南氷洋や北極海など氷山、流氷で覆われた海域を航行するために専用に設計されている。
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[編集] 概要
砕氷船の特徴としては頑丈な船体と氷に乗り上げて割るのに適した丸みを帯びた船首や幅広な船形、氷の圧力を下方へ逃がすための船底の特殊な形状、そして強力なエンジンを持つのが一般的である。大型船では電気推進が多いのも特徴的だが、これは内燃機関や蒸気タービンよりも電動機の方が低回転数時の発生トルクが大きく、負荷特性上過負荷に強いためである。また氷と船体の摩擦を軽減するため、特殊な塗料を使ったり、船体から空気を吹き出す装置を装備したりすることがある。
特に極地探査用などの本格的なものは船体を前後左右(ピッチング・ローリング)に傾け氷に乗り上げ重量で割る機能も持つ。船体を傾ける方法としては、燃料タンクを前後左右に分散しその間の燃料の移動で行うというものが多い。
砕氷船の多くは軍用、あるいは探査用であるが、一般の商船や観光用のものもある。
優秀な砕氷船を多数保有しているのは、地形的・気候的な条件から必要としているロシア連邦である。原子力砕氷船も数隻保有している。
日本においては、海上保安庁に2隻、海上自衛隊に1隻、民間会社の流氷観光船に計3隻配備されている。海上保安庁に配備されている砕氷船は、春先のオホーツク海の流氷により閉ざされた氷海域の航路啓開と、平時の警備救難活動を任務としており、航路啓開のエースとして活躍する「PLH そうや」と、「そうや」が入れない浅い海域と港湾内の航路啓開を任務とする「PM てしお」の計2隻である。海上自衛隊に配備されている砕氷船は、南極観測隊の輸送に使われる「しらせ」である。同艦はましゅう型補給艦が竣工するまでは海自最大の自衛艦だった。
[編集] 歴史
氷海を航行する船舶は、初期の極地探検の頃から考えられるようになった。初期の極地探検においては、耐氷船が用いられた。これは木造船舶において、水線部などを金属で覆い、強化するものであった。このような船殻の強化により、氷との衝突や結氷による船の圧壊を防ぐことが試みられた。なお、蒸気機関で航行する世界初の砕氷船は1864年にロシアのクロンシュタットで建造されたと考えられている。
[編集] 日本の砕氷船
[編集] 大日本帝国海軍の砕氷船
- 大泊:1949年解体
[編集] 海上保安庁の砕氷船
- 砕氷船 宗谷:退役済
- PLH01「そうや」(第一管区釧路海上保安部)
- 砕氷能力:連続砕氷1.0m/3ノット
- 建造:1978年
- 総トン数:3,139t
- 全長:98.6m
- 全幅:15.6m
- 出力:15,600馬力
- 速力:21ノット
- 航続距離:5,700海里
- 武器:40mm単装機関砲×1、20mm単装機関砲×1
- 搭載ヘリ:ベル212×1
- 最大乗員:69名
- PM15「てしお」(第一管区羅臼海上保安署)
[編集] 海上自衛隊の砕氷船
[編集] 観光砕氷船
北海道には、流氷観光用の砕氷船がある。