立憲君主制
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立憲君主制(りっけんくんしゅせい)とは、世襲あるいは選挙制の君主を元首とする君主制をとるが、君主の持つ権力が憲法によって制限されている政体のことである。⇔絶対君主制
イギリスが代表的な例であり、日本の政体も立憲君主制の一例とされることがある。政府見解(昭和48年6月28日参議院内閣委員会、政府委員吉國一郎内閣法制局長官答弁)では日本を「立憲君主制と言っても差し支えないであろう」としている。しかし日本国憲法上、天皇は国政に関する権能を全く有さないため、君主の権力が憲法によって制限されているという状態にはない。そのため、日本国憲法は共和制を採用しているとする憲法学説も存在する。そもそもこのタイプに該当する国が日本とスウェーデンしかなく、類型化するには国の数が少なすぎるのである。
南欧では、1975年に王政復古したスペインを除いて、イタリア、バルカン諸国などでファシスト政権を歓迎した為、第二次世界大戦後、次々に追放され共和制となっている。
なお、立憲君主制に分類される君主国の中には、政府の要職が王族で占められていたり、国王が首相を兼任するなどしている国も存在し、これらの国は事実上の絶対君主制と言うこともできる。
[編集] 現在の立憲君主国一覧
アジア
- カタール国(首長)
- カンボジア王国(国王)
- クウェート国(首長)
- タイ王国(国王)
- 日本国(天皇 [1])
- ネパール王国(国王)
- バーレーン王国(国王)
- ブルネイ・ダルサラーム国(国王)
- マレーシア(国王 [2])
- ヨルダン・ハシミテ王国(国王)
オセアニア
ヨーロッパ
- アンドラ公国(共同大公 [3])
- オランダ王国(女王)
- グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(通称イギリス) (女王)
- スウェーデン王国(国王 [4])
- スペイン(国王)
- デンマーク王国(女王)
- ノルウェー王国(国王)
- ベルギー王国(国王)
- モナコ公国(公)
- リヒテンシュタイン公国(公)
- ルクセンブルク大公国(大公)
アフリカ
- ^ 日本国憲法において天皇が元首であると明文化されていないことから、日本が立憲君主国であるかは学説上の議論があるが、日本政府は実務上天皇を元首として取り扱っており、諸外国も同様に認識しているため事実上の立憲君主国として含めた。
- ^ マレーシアの国王は正式にはアゴンと呼ばれ、各州スルターンによる輪番制である。象徴的存在であり実権を有さない。
- ^ アンドラ公国は、「公国」と冠しているものの世襲の君主は存在せず、実態はフランス元首(大統領)とウルヘル司教の二名の共同大公を戴く議会制である。憲法で国民主権が明記され、また元首の職務も大公使の接受、法律・条約の認証など儀礼的であり、実際の外交権は内閣が、条約の締結は国会が行使する。
- ^ スウェーデン国王は首相任命権などの形式的な国事行為すら憲法上認められておらず、政治から完全に分離されているため、象徴君主制という新たな区分を設けるべきではないかとする意見がある。
[編集] イギリス連邦下の立憲君主国
イギリス連邦加盟国の中で、英国王(女王)を元首とする国。なお、これらの国では英国王に任命された総督が実質的に元首を務める。
- アンティグア・バーブーダ
- オーストラリア連邦
- カナダ
- グレナダ
- ジャマイカ
- セントクリストファー・ネイビス連邦
- セントビンセントおよびグレナディーン諸島
- セントルシア
- ソロモン諸島
- ツバル
- ニュージーランド
- バハマ国
- パプアニューギニア独立国
- バルバドス
- ベリーズ
近年の注目すべき動きとして、イギリス連邦内で君主制からの民心の離反が問題になっている。英国世論調査では「50年後に英国王室は存続していると思うか?」という問いに8割が「存続していない」と答えた。また、オーストラリアは「英国王を元首としておくことと、身分制を否定している我が国(オーストラリア)での民主主義精神との関係を検討する(英国は王制・貴族制を採る身分制社会。日本、米国などの平等社会とは、根本的に異なる)。」と首相が発言し、話題になった。