元首
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元首(げんしゅ、英:Head of state, Sovereign)は、国家組織の最高位者を指す。国家元首。王室を有する君主制の国家では国王、共和制の国家では大統領が元首とされている。社会主義国では中華人民共和国の国家主席や旧ソ連の最高会議幹部会議長、旧東ドイツやキューバの国家評議会議長が元首に該当する。
英語のHead of stateは、国家有機体説の産物で、個人を優越する独立の生命体として国家をとらえた場合の頭に相当する部分であることに由来する。旧憲法は、国家有機体説的国家観に立っていた。現在の我が国の日本国憲法は、一般に国家有機体説的国家観の反対概念である社会契約説的国家観に基づくと理解されている。
目次 |
[編集] 世界各国の元首
元首に関する規程を持たない国も少なくなく、そうした国での元首は慣習上のものである。各国の憲法により、元首が政治の実権を持つ場合も持たない場合もある。実権の有無、統治形態の違いにかかわらず、元首は国家の長としての特別な権威を持つべきだと考えられている。しかし同時に自由主義、および国民主権の立場からそうした権威は不要であるとする考えも並存する。
元首は通常一人の人間とされるが、儀礼的な機能のみを果たす連邦大統領が存在するスイスでは行政府である「連邦参事会」のメンバーの一人が、サンマリノ共和国では二名の「執政」が、アンドラ公国ではフランスの大統領とウルヘル司教が「共同元首」としてそれぞれ元首とされる。
以下の項目において国家元首の大まかな分類を行う。
[編集] 専制国家の元首
もっとも純粋な意味での国家元首と言える。国家元首は行政府、立法府、司法府の首長として幅広い権力を保持する。また、独任制の元首に限らず、軍部、宗教、一部の部族、外部勢力の傀儡などの特定の集団が独裁的権力を掌握している場合も多い。これらの場合、形式的に議会は存在していても、君主・独裁者、集団の諮問機関・政治行為の追認機関に過ぎない。 サウジアラビアやオマーンなどの国王が、これに分類される。
[編集] 大統領制国家の元首
大統領は有権者の選挙により選出され、行政府の首長として強大な権限を有する。大統領は議会とは独立した地位にあり、議会の勢力と関係なく一定の任期が保障される。大統領は議会の法案への拒否権をもつが、法案の提出権はもたない。また閣僚の任免権を有する。閣僚は一般的に、国会議員との兼任はできない。議会の勢力が、大統領派の与党で占められている場合には強大なリーダーシップを発揮できるが、野党が多数派になった場合には厳しい議会運営が強いられる。
アメリカ合衆国やフィリピン共和国の大統領が、これに分類される。
[編集] 半大統領制国家の元首
大統領は行政府の首長であり、有権者の選挙で選出される。大統領は議会と独立した存在で任期は保障されるが、首相を含めた閣僚の選任には議会の承認を得なければならない。このように組閣は議会の拘束を受け、一定の議院内閣制の要素が取り入れている。議会で与党が多数を占めれば、大統領は内閣を自由に組織し、内政でも強大なリーダーシップを発揮できるが、野党が多数派を占めた場合は、野党の党首に組閣を命じて、外交・国防は大統領、内政は野党の首相が分担することとなる。
[編集] 議会君主制・議会共和制国家の元首
議院内閣制を採用する立憲君主国の君主、共和国の大統領がこれにあたる。行政は議会に指名される首相に委ねられ、国家元首である君主や大統領は国政の実権を有さない。憲法上、国家元首に期待される役割は内閣の助言と承認に基づく首相を始めとする官吏の任免や外国元首・外交官の接受といった儀礼的なものである。大統領は、直接選挙によらず、議会の投票により功績のある長老政治家が選出される場合が多い。これらの国の中には、イギリスの国王のように法律上は強力な権限を与えられているケースもあるが、そうした権限は長年の不行使により形骸化しており、実際には行使されない。ただし、政争やクーデターによる国政の混乱時には、仲裁者としての役割を期待される場合もある。上記のような理由から政治的発言の自制が求められる。
イギリスやタイ王国の国王、インドやイタリアの大統領がこれにあたる。
[編集] 一切の権力を有さない元首
議会君主制・議会共和制をさらに深化させたものがこれにあたる。国家元首の役割は、完全に象徴的なものに限定される。閣僚の任免や議会の解散などの権能も内閣などの他機関の承認・決定に基づいてなされ、元首は実質的な決定権は憲法上完全に否定される。上記のような理由から、政治的な発言も厳しく制限される。
スウェーデンの国王、ドイツの大統領、中国の国家主席などがこれにあたる(中国では国家主席の地位にある人物が、外交・内政での強大な権力を行使している場合があるが、これはその人物が中国共産党の総書記をも兼任しているためである。国家主席は全人代や中央委員会の決定を追認しているに過ぎず、実質的な権限を有さない。主席と総書記が別の人物である場合も当然にあり得る)。スウェーデンでは、国王は首相の任命や議会の招集・解散の権限を形式的にも失っており、国家元首と行政府を完全に分離しているため、世界で最も進化した立憲君主制とされる。
日本の天皇も元首として見た場合は、当然この項に含まれる。(日本国憲法では天皇を元首であると明文化していないために元首は誰かについて議論が存在する。)天皇は前述のスウェーデンと同様に、「一切の国政上の権能を持たない」と憲法(4条)に規定されており、選挙権、被選挙権を持たないほか、政治的行為、政治的発言も禁じられているとされる。また、日本国民に含めるかという点についてすら、現在も議論が続けられている。
なおこれらの区分はあくまで大まかな区分である。憲法は各国に差異があり、元首の機能も多種多様である。
[編集] 日本国の元首
大日本帝国憲法は天皇を元首と定めたが(第4条)、日本国憲法は元首に関する規定を設けていない(憲法改正論では、自民党憲法草案では天皇元首規程は国民主権原則と衝突する為削除。また首相公選制を導入し首相を元首と明確に規定すべきとの案にも、保守議員の反対により削除)。また、憲法の他にも元首に関する明文規定は日本には無い。
日本国の元首がいずれの機関であるかについては複数の意見があり、国事行為など形式的にせよ元首の要件とされる行為の大半を行っている天皇を元首とする説、天皇が準元首であるとする説、日本国には元首は存在しないとする説、外交関係を処理する内閣であるとする説、行政権の首長たる内閣総理大臣であるとする説、国権の最高機関たる国会もしくは国会の衆議院議長を元首とする説、司法(最高裁判所長官)、行政(内閣総理大臣)、立法(衆議院議長、参議院議長)の各権の長が共同で元首を担うとする三権の長共同元首説などが知られる。いずれにせよ、日本国憲法が必要としていない言葉を外部からどう定義するかという問題である。
[編集] 天皇は元首か
元首の概念は時代により変化するものであり、国家の象徴であること、首相任命などの一連の国事行為、外国元首や外交官の接受といった対外代表性など、通常国家元首の有する機能を有していれば十分であり、天皇を元首として差し支えない。しかし、立憲主義を掲げる国家においては国家機構上の問題に関しては、憲法上の明確な規定がなくては認めるべきではなく、それを無視して議論を進めても元首と言う地位そのものを軽くする意味しかもたない。そもそも現代の立憲主義国家では元首という概念自体が意味を失いつつあるとも言えよう。
このように政治的論議の中では、戦後天皇を元首とするかどうかが長らく争点となっていた時期があり、天皇制についての議論にまで発展していた。
日本政府の見解では、天皇を、定義によっては「元首と言って差し支えないと考える」と述べるにとどまっている。最近では、阪田雅裕内閣法制局第一部長が、2001年6月6日に開かれた第151回国会参議院憲法調査会において、その旨答弁している。ただし現憲法下では、現在の政府が、国民に対し天皇をこう呼べ、と言うことは出来ない点に留意しなければならない。戦前の場合であれば、昭和10年(1935年)の2次に渡る「国体明徴声明」において、天皇が立憲君主であることを否定し、「天皇機関説」を排撃した事例がある。しかし現憲法下ではこうしたことは不可能である。
諸外国は様々な儀礼上、天皇を日本の元首として遇している。これは外務省が各国に対し、「天皇は日本の元首」「日本は立憲君主国」と日本国内の議論の頭越しに通達したことによるものとされる。
もちろん、これに対する異論もあり、例えば「日本は立憲君主国」とした点については、現在の憲法に君主規定自体が無いので「立憲」とはいえないのではないかとの反論がある。ただしこれについては、「憲法」の法源は、明文化された「憲法典(日本国憲法)」のみに限られるものではないことに留意せねばならない(憲法の「実質的意味と形式的意味」および「憲法の法源」を参照)。ちなみに、元首に関する明文化規定が存在しない国は、2007年現在では、日本国1ヵ国だけである。
判例においてはプラカード事件第二審において天皇は元首であると判示(ただし、明治憲法に基づいた判決。現在においては明治憲法は事実上失効し、”不敬罪”の規定自体が戦前の神権天皇観に基づく刑罰であり、現在の憲法秩序下では判決自体が、意味がない)しているまた、元首が果たすべき儀礼的機能を天皇が果たしていることは確かである。
[編集] 憲法を起草したGHQ関係者の見解
一方で、憲法を起草したGHQのリチャード・A・プール元最高司令官総司令部民政局海軍少尉は、「・・・我々(GHQ)が目指したのは立憲君主制で、天皇は統治権を持たず、国家及び主権者である国民統合の象徴としての役割を果たすものであったが、儀礼的な行事を行う以外に、内閣の承認を条件に数多くの役目を付すことで、ある程度の意義ある役割が与えられた。」と2000年5月2日の参議院第147回国会第7回で述べており、立憲君主制憲法として日本国憲法を捉えていた。
GHQは天皇を「(Emperor is) the head of state(元首)」と位置づけており、割合天皇に高い地位を認めていた(北岡伸一東京大学法学部教授の2000年4月6日衆議院第147回国会第6回での答弁)。しかし憲法草案で、最終的に天皇を「象徴」と位置づけたことは、戦前のように天皇を元首と明文化することによる「神権的」元首化を恐れ、君主を儀礼的な機能へと制限し、欧州の立憲君主国のような議会制民主主義国家となることを期待したからであると思われる。
[編集] 元首が宗教の首長を兼ねる例
イギリス国王 - イギリス国王とイングランド国教会の地上における唯一最高の首長を兼ねる
ローマ教皇 - バチカン市国元首と教皇を兼ねる
ネパール国王 - ヒンズー教の神とされている。
ダライ・ラマ - チベット亡命政府元首とチベット仏教の法王を兼ねる
大日本帝国の天皇(戦前) - 大日本帝国元首で国家神道の現人神
[編集] 古代ローマの元首
ここでいう「元首」は以上のものとは異なる意味である。古代ローマで元首(princeps)は、ローマの「市民の第一人者」の意味で、内戦を勝ち残ったオクタウィアヌスが共和政の形式を残して身に帯びた称号の一つである。これにちなみ、ローマ帝政の前半は元首政として時代区分される。
[編集] 関連項目