第三帝国
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第三帝国(だいさんていこく)
- Das Dritte Reich というドイツ語の訳語として永らく使用されてきた日本語。訳語としての「第三帝国」の是非については本稿参照。
- ナチス・ドイツ時代のドイツの別称。本稿で記述。
- ナチスの先駆者の一人とされるアルトゥール・メラー=ファン=デン=ブルックの著した著書。
- 日本の大正時代の評論誌。1913年(大正2)に茅原華山らにより創刊される。明治維新以前の(華山が言うところの)"覇者"による「第一帝国」、維新後の藩閥・官僚による「第二帝国」を超克し、立憲政体による君民同治の「第三帝国」を築くべきである、という願いを込めて命名された。
Das Dritte Reich(ダス・ドリッテ・ライヒ)とは、ナチス・ドイツ時代にナチスが自らの国をそのように呼んだ。
ナチス・ドイツも参照。
[編集] 語源
通説では、ナチスは、過去の栄光と自らを結びつけるため、神聖ローマ帝国(962-1806)を「第一帝国」、プロイセン王国がドイツ諸邦を統一したドイツ帝国(1871-1918)を「第二帝国」、自らの国家を「第三帝国」と称したとされる。しかし、「第三」という語のドイツ語の「dritte」には「未来」の意味があり、ナチスのいう「Das Dritte Reich(第三帝国または第三の国)」とは、「未来の国」の意があり、ナチスのユートピア観がこめられているといわれる。「Das Dritte Reich」の語を生み出したのはアルトゥール・メラー=ファン=デン=ブルックであり、メラーは、中世の神学者のフィオーレのヨアキムの「第三の時代」から、「第三=未来」の語を用い、自著のタイトルとし、初期のナチスは保守革命の思想家であるメラーの造語を借用している。
ヒトラーは、一千年も存続し続ける第三帝国の首都としてベルリンを後に「ゲルマニア」と改称するつもりであった。
[編集] 訳語
Reichとはドイツ語で一支配者が全ての地域(Land)を治めている全国(Reich)と規定される。ドイツは歴史的に小さな領邦(Staat)が分立して神聖ローマ帝国皇帝の緩やかな支配を受けている時代が長く続き、その後もドイツ皇帝(カイザー)の緩やかな支配が続いた。バイエルン、ヘッセンと個々の地域は現在も「Land(=州)」と呼ばれ、高度の自治を許されている。1933年以降、ナチス・ドイツは地方自治を完全に破壊し、全ドイツ(Reich)を一元支配した。Heiliges Roemisches Reich(神聖ローマ帝国)を第一帝国とし、Kaiser-reich(プロイセンの統一した帝政ドイツ)を第二帝国、 Das Dritte Reichを第三帝国、第三の国と呼ぶのは一貫性している。Reichは、「帝国」を意味する語ではなく「ドイツ全国」を意味しているからであり、ナチス政府の国家は、ドイツ全国を統治下においた三番目の国だからでもある。ただ第二次世界大戦後のドイツ連邦共和国では「全国」を意味する語としては「Reich」ではなく「Bund」(連邦)の語を用い、「Reichs---」ではなく「Bundes---」という。もし、Reichの語を使うとするならば、現在の統一ドイツは、「第四のReich」ということになってしまうだろう。