群れ
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群れ(むれ)とは、同一種の動物の多数の個体からなる集団である。まれに複数種を含む場合もある。
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[編集] 群れを作る動物
群れを作るかどうかは動物の種によって決まっている。また、常に全個体が一つの群れを作るもの、雌雄別に群れを作る、あるいはどちらかのみが群れを作るなど、色々な型がある。また、生活史や季節によってある時期にのみ群れを作るものもある。
このように群れの内容は実に多彩である。日本語ではさまざまなものを群れと呼んでいるが、英語ではこれに当たる語がいくつか用意されている。一般的な表現としてはgroupを用いる。哺乳類、特に草食動物のそれはherd、鳥の場合はflock、魚類の群れはschoolである。つまり、メダカの場合、あちらでもメダカの学校という。
[編集] 群れの外形
外から見た群れの形にも様々なものがある。
- 移動するもの:多数の動物が集まり、まとまって移動する。
- 移動しないもの:全体としてある位置にとどまるもの。
- 各個体が動かない。:集団繁殖する鳥・集団越冬する昆虫など。
- 個体はその範囲内で移動する。:巣とその周りのみを利用するアリなど。
また構成メンバーが始終替わるものとほとんど替わらないものがある。前者の例はたとえばアユのような魚の群れなどで、群れは始終分裂したり融合したりし、その構成メンバーは固定していない。他方、サルの群れやハチの群れでは各個体の帰属先がはっきりしており、それ以外の集団には入れないばかりか、攻撃を受ける場合もある。このようなメンバーの固定した集団において、内部に一定の組織的構造が見られた場合、その性質を社会性という。
[編集] 血縁集団からなる群れ
ニホンザルの群れは数頭の雌とその子供たち、および配偶者の雄によって構成されている。子供が雄であれば成長して群れを出、雌はそのまま残るので、この群れはほぼ母系の血縁集団である。ほぼ同様な群れはライオンなどにも見られる。社会性昆虫も巨大な家族の構成である。
[編集] 繁殖のための群れ
同種の多数個体が集まって集団繁殖を行う例もある。たとえばユビナガコウモリなどいくつかのコウモリは、一定地域の全個体が決まった洞窟に集まり、そこで繁殖を行う。海鳥にも集団繁殖をおこなうものがある。往々にして絶海の孤島が選ばれ、極端な場合はそこにその時期にゆけばその種の全個体を見ることができる。アホウドリなどはこの型に属する。
[編集] 突発的な群れ
普段は群れで行動しない動物が、大発生に際して群れで動く例がある。有名なのは飛蝗で、単に数が増えるだけでなく、全個体が同じ方向に移動してゆく点、明らかに群れをなしている。同様の例がヤスデやヨトウガにも知られる。
[編集] 複数種からなる群れ
一般に群れは単一の種から構成されるが、まれに複数種を含んで群れとして行動する例がある。たとえばヤマガラ、シジュウカラなどのいわゆるカラ類は冬季に数種を含む群れを作り、集団で移動するのがよく見かけられる。
[編集] 結果的に生じる群れ
その種の個体間に誘引などの要素がなくても、たとえば特定の環境条件を求めた結果として集まってしまう例もある。たとえば深海熱水鉱床に見られる動物群などがこれである。また、潮間帯の潮だまりで石をひっくり返すと多量のヤドカリが集まっている場合があるが、これは、彼らが物陰ではより長く立ち止まる性質があるためだと言われている。
[編集] 群れの利益と不利益
一般に同種の個体間では、それぞれが共通の資源(餌、住みかなど)を求めて競争する関係にあると考えられる。とすれば群れることは互いに不利であるが、にもかかわらず多数個体が集まるからには、それなりの利益があるはずである。
群れを形成する主な利益としては、以下のようなことが挙げられる。それぞれの動物において、これらの中のどれか、あるいは複数の原因が働いていると考えられる。
- 生活に不利な条件下での抵抗力が増すこと。
- 集団で協調行動をとることでエサの獲得が容易になること。
- ライオンやオオカミなどは群れで協力して獲物を捕らえることで有名である。また、チャドクガなどケムシにも群れをなすものがあるが、これは中に歯の丈夫な個体がいると、他の個体が噛めない葉にも噛み付くことが出来、その結果、その噛み口からはより歯の弱い個体も餌を得られるようになり、全体の生存率が高まる効果があるとされる。
- 競争する他種との競争力を高められること。
- 捕食者を発見しやすくなるとともに、一個体当たりが監視行動に費やす時間が短くなること。
- 場合によっては集団で対捕食者防衛にあたれること。
- 逆説的であるが、大型捕食動物に狙われる草食動物の場合、群れからはぐれた個体が狙われることが多いのもこれを示している。
- 配偶者を得やすく子育てをしやすいこと。
- 極端な多数で集まると、天敵に食べ尽くされないことで子孫が残せる。
- ある時期に急に集まって繁殖する場合、当然ながら天敵も集まってくるが、それを凌駕するほどに集まれば、必ず多数個体が生存する。それをも食べ尽くすほど天敵が集まると困るが、天敵側ではそれ以外の時期も餌を採らねばならず、ある時に急に多量の餌が生まれても、それを食べ尽くすほどの密度を普段から維持できない。
一方、群れのサイズが大きくなるにつれ、エサ不足、感染症の蔓延、個体間の争いの増加といった損失面も目立つようになってくる。したがって、群れに属することによる利益と損失の差が最大になるような群れの規模が存在すると考えられ、これを「最適群れサイズ」という。
[編集] 縄張りとの関係
縄張りは、動物の個体が、(一般には)同種の他個体に対して、一定の面積を防衛し、排除することである。したがって、縄張りを持つ動物は互いに距離を置いて生活するから、群れとは相反するものであると考えられる。しかし、これは縄張りを生活の場とする場合であり、たとえば繁殖時に巣の周りを防衛するものであれば、その面積はさほど大きいものではない場合がある。たとえば集団繁殖する海鳥は、密集して巣を作っているように見えても、巣の間は一定の距離があり、その中に入ってきた別の巣の個体は攻撃を受ける。
もっと広い縄張りを作る種でも、個体群密度の増加によって防衛行動に費やすエネルギーが縄張り維持による利益を上回るようになると、縄張りを解消して群れに入ることがある。たとえばアユは瀬に縄張りを作ることでよく知られるが、個体群密度が大きくなると、縄張りを持てない個体が増え、それらは群れを作ってうろつくので、縄張り鮎は縄張りを維持できなくなり、ほとんどの個体が群れに参加してしまう。なお、瀬で縄張りが作られている場合でも、淵に生活するアユは群れで行動していることが知られている。
また、普通は群れで行動するメダカを水槽に閉じこめると、縄張りを作ることが知られている。同様の現象が海においても見られ、開かれた場所では群れをなす魚が、潮だまりでは縄張りを作る例が知られている。このように、縄張りと群れとでは相反する行動に見えるが、その間を行き来する例は結構多い。
[編集] 参考文献
- 伊藤嘉昭・法橋信彦・藤崎憲司(1980)『動物の個体群と群集』(生物学教育講座7)、東海大学出版
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