誘導加熱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
誘導加熱(ゆうどうかねつ)は電磁誘導を利用して加熱すること。英語表記の Induction Heating を略してIHともいう。高周波誘導加熱、電磁誘導加熱とも呼ばれる。
新しい調理器具の加熱方式として家庭の中でも普及しつつあり、これを利用した調理器具をIH調理器という。
目次 |
[編集] 原理
導線に交流電流を流すと、その周りに磁力線が発生する。導線をコイル状に巻き、その近くに電気を通す物質(通常は金属))を置くと磁力線の影響を受けて、金属の中に渦電流が流れる。金属には通常電気抵抗があるため、金属に電流が流れると 電力=電流2×抵抗 分のジュール熱が発生するため金属が加熱される。この現象を誘導加熱という。変圧器や磁気ヘッドのコアに生ずる誘導加熱は損失だが、熱を積極的に利用すれば調理器具等に利用することができる。
通常の誘導加熱ではコイルの真中に金属を置くが、IH調理器の場合は構造上問題があるので、コイルの上に金属が置かれる(上図参照)。
[編集] 誘導加熱の応用
[編集] 一般家庭での応用
- IH調理器
[編集] 産業界での応用
[編集] IH調理器における特徴
- 直接加熱であり熱効率が高い
- 電熱器で鍋を加熱する場合は熱線放射と加熱空気による伝熱のため、電気エネルギーのロスが生じるが、IH調理器では原理上このような損失がほとんどなく熱効率が高い(約80%。尚、ガスコンロは約55%。)
- ただしガスコンロのような燃焼過熱式は火炎及び高温の加熱空気にて鍋の側面まで包み込むように加熱するため、ほぼ底面しか加熱しないIHと比較して食材を即時加熱でき、中華料理の炒め物などに適している。よって熱効率=調理効率と一概にいえない。
- またガス火に比べて焦げ付きが生じやすい。なべ底の一部分が高温になり、そこに触れる食材の水分だけが蒸発しても、設定された出力分の熱エネルギーが送り込まれ続けるからである。
- コイル(円形)の大きさに合わせた適正な鍋の大きさがあり、大き過ぎたり、小さ過ぎたりの場合カタログの効率より実際の効率が下がることがある。コイル部(円形)の周りが温まる。(一人用の小さめな鍋はガスコンロでは使えてもIH調理器では使えないことがある。)
- 電熱器で鍋を加熱する場合は熱線放射と加熱空気による伝熱のため、電気エネルギーのロスが生じるが、IH調理器では原理上このような損失がほとんどなく熱効率が高い(約80%。尚、ガスコンロは約55%。)
- 炎がない。
- 火力の制御が容易である。
- コイルに流す電力を制御することによって容易に火力を制御することができる。
- 安全性が高い。
- IH調理器に対応した専用の調理器具(鍋・フライパン・やかんなど)が必要となる。
[編集] 誘導加熱に使える金属
電力=電流2×抵抗 の式からわかるように、電気抵抗がある程度大きな金属でないと加熱効果が低くなる。鉄やステンレスは使えるが、アルミニウムや銅などは電気抵抗が小さいため誘導加熱に使う金属としては適さない。(アルミ・銅鍋対応機種は、電流を増量することで対応している。)通常の土鍋は利用不可。IH対応の土鍋には、底部に金属製のプレートを用いる物や、電磁誘導体が練り込まれている特殊な物が用いられる。
また、調理器具として用いる場合は、鍋底の形状も重要で、平底が適しており丸底は適さない。コイルの上に鍋を乗せる構造からくる制限で、金属がコイルから離れるに従って渦電流が減少するためである。
【参考】摂氏0度での各金属の電気抵抗(Ωm)
- ニクロム 107.3×10-8 Ωm
- 白金 9.81×10-8 Ωm
- 鉄 8.9×10-8 Ωm
- アルミニウム 2.5×10-8 Ωm
- 金 2.05×10-8 Ωm
- 銅 1.55×10-8 Ωm
- 銀 1.47×10-8 Ωm
[編集] 関連項目
- 誘電加熱
- マイクロ波加熱
- 電磁誘導加熱
- ラジエントヒーター