軍事ケインズ主義
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軍事ケインズ主義(ぐんじけいんずしゅぎ)は直接的な戦争でなく景気、経済を調整する目的で多大な軍費を投入する政策をいう。
1930年代のドイツのナチス政権や、第二次世界大戦中のアメリカ合衆国のフランクリン・ルーズベルト政権が例として挙げられる。経済に政府が介入することを主張するケインズ主義の特殊な形態としてとらえられている。
[編集] 経済効果
- 軍需で政府の支出が増大する。これが乗数効果によって波及し消費者の消費が増大する。
- 軍隊が学識、技能の程度が低く就職しづらい下流の人(主に弱年男子)を徴兵の形で雇用することで経済的負担を下げる。
- 兵器の開発のための研究が民間の技術の移転、国家の技術力の増進につながる。
[編集] 反対意見
- 経済が軍需産業に依存するようになると私企業である軍産界に政府・軍が操られ政治の私物化につながる。
- 軍事研究はあまり民間部門に寄与しない。たとえば旧ソ連や北朝鮮などの国は莫大な予算を軍備に振り向けたが、どちらも経済は破綻してしまった(但し、例に挙げた旧ソ連、北朝鮮は、何れも社会主義/共産主義国家だということも留意すべき点ではあるが。)。
- 非常に高度な技術を用いる現代の軍隊ではまともに戦える兵士になるまで訓練するのに時間と費用がかかる。そのため少数精鋭主義に傾いており多数の徴兵を前提としている雇用の効果はない。
- 現実の軍事衝突を招いた場合、生命や財産が大量に失われ、国土が荒廃することで、当初期待された経済活性化の効果以上の損失をもたらす可能性がある。ある推計によるとアメリカの1940年度のGDPは9,308億ドルであったが1945年度までに国債を累積で20,850億ドルを発行しGDP16,470億ドルと急進させた。この間の貨幣所得は1.75倍(44年に1.82倍)、物価は1.33倍、実質所得は1.32倍となっている。一方、日本のGDPは1940年度に2,097億ドルであったが1945年には1,568億ドルに低下した。