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遠州弁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

遠州弁(えんしゅうべん)は旧遠江国・現在の静岡県西部地区で使用される日本語方言である。東海東山方言の一。徳川家康の影響で三河商人や武士の往来が多かった為、三河国愛知県の中東部地区)の三河弁の影響を受けているので、発音の特徴が良く似ている。

目次

[編集] 文法

[編集] 終助詞

~じゃん 
~じゃないか(反問・詰問)、~だよね?(念押しの疑問)。最近では共通語として定着しつつあるが、元は三河弁という説や、甲州弁という説があるため、現在は不明である。念押しの疑問で使われる場合には、「~じゃあん」になり、文が続く。文が続かないと、相手に「だから何?」とか「それで何?」などと尋ねられる。反問・詰問で使われる場合は、「じゃんか」、念押しの疑問で使われる場合は、「じゃんね」が使われることもある。
  • 「俺、今週給食当番じゃん!」→「俺、今週給食当番じゃないか!」
  • 「湖西市ってさあ、愛知県との県境じゃあん。だもんで、三河弁が話されてるだに。」→「湖西市ってさあ、愛知県との県境だよね。だから、三河弁が話されているんだよ。」
~じゃんね 
~なんだよね。「俺って~じゃんね(それで……)」「昨日~だったじゃんね(それで……)」というような、次の話の展開に持っていく一方的な説明によく使われる。 暗い内容や、辛いことを話す時には、「……じゃんね~(語尾は少し上げる)」の様に、最後伸ばすことが多い。名古屋に近い方では、疑問の意を含む場合もある。
~じゃんな 
~なんだよな。
~だ? 
~の?。「書いただ?」と言うと、「書いたら?(書いたでしょ?)」と聞き間違えてしまう場合もある。
  • 「昨日、朝ご飯食べただ?」→「昨日、朝ご飯食べたの?」
  • 「朝ご飯食べんくて何が悪いだ?」→「朝ご飯食べなくて何が悪いの?」
~け? 
~か?(疑問)、~しよう(誘い)。「~か?」と聞くと強く感じるが、「~け?」と聞くとやわらかい表現になる。基本的に用言と体言の後ろに付けて使う。「~け」は用言、体言両方に付けることができる。ただ、聞かれているのに誘われていると勘違いしないことに注意。
  • 「この車って新車け?」→「この車って新車か?」
  • 「そろそろ行くけ?」→「そろそろ行こうか?」
~だら/~ずら、~だらあ/~ずらあ、 
~でしょう、~だろう(推定、確認)。自慢する時にも使うことがある。「だら/ずら」は少し強め。若者が使えば、「~だろ?」の様な雰囲気となる。「だらあ/ずらあ」はやわらかい表現になる。「ずら/ずらあ」は主に年配者が使い、若者は使わない。絶滅するおそれがある。
場合に応じ、「だ/ず」が抜けるときがある。
名詞・形容動詞・終助詞「の・ん」に続く場合は「だら/ずら/だらあ/ずらあ」。
  • 「明日から10月だらあ。」(名詞)
  • 「綺麗だら?」(形容動詞)
  • 「君も行くんだら?」(動詞+終助詞)
  • 「未だ早いんだら。」(形容詞+終助詞)
動詞・形容詞に続く場合は「ら/らあ」。
  • 「君も行くら?」(動詞)
  • 「未だ早いら。」(形容詞)
但し、終助詞の「の・ん」に続く場合には省略した用法が有り、「行くだら?」、「早いだら。」などとも言う。
  • 「行くら?」→「行くでしょ?」、「早いら。」→「早いでしょ。」(不確実な推定・確認)
  • 「行くんだら?/行くだら?」→「行くんでしょ?」、「早いんだら。/早いだら。」→「早いんでしょ。」(ほぼ確実と思われる推定・確認)
疑問文の使い方
共通語 だろ/でしょ だろう/でしょう だよね/ですよね
共通語例(現在形) 書くでしょ 書くでしょう 書くよね 書くの 書くか
共通語例(過去形) 書いたでしょ 書いたでしょう 書いたよね 書いたの 書いたか
遠州弁 だら/ずら だらあ/ずらあ じゃんね
遠州弁例(現在形) 書くら 書くらあ 書くじゃんね 書くだ 書くけ
遠州弁例(過去形) 書いたら 書いたらあ 書いたじゃんね 書いただ 書いたけ
~だに 
~だよ、~だぞ(断定)。
場合に応じ、「だ」が抜けるときがある。
名詞・形容動詞・終助詞「の・ん」に続く場合は「だに」。
  • 「明日から10月だに。」(名詞)
  • 「綺麗だに。」(形容動詞)
  • 「君も行くんだに。」(動詞+終助詞)
  • 「未だ早いんだに。」(形容詞+終助詞)
動詞・形容詞に続く場合は「に」。
  • 「私も行くに。」(動詞)
  • 「未だ早いに。」(形容詞)
但し、終助詞の「の・ん」に続く場合には省略した用法が有り、「行くだに。」、「早いだに。」などとも言う。
  • 「行くに。」→「行くよ。」、「早いに。」→「早いよ。」(通常の断定)
  • 「行くんだに。/行くだに。」→「行くんだよ。」、「早いんだに。/早いだに。」→「早いんだよ。」(強い断定、命令)
~まい(か)、~じゃまい 
~しよう、~しようか(勧誘)。名古屋弁の「~まい」と微妙に語形が違う地域がある。 例:行こまい(名古屋弁と共通)、行くまい(三河弁の典型的な言い方)、行かまい(一部地域の三河弁や遠州弁)。遠州弁では、「~に行こう」を「行かまい」、「~行こう」を「行じゃまい」と言うことがある。
  • 「ゴルフをやりに行かまい。」
  • 「みんなで行じゃまい。」
という風に、「~じゃまい」の使い方は、主に「~に」が入ってないときに用いる。一方「~まい」は、主に「~に」が入ってるときに使われるが、「~に」が入ってないときにも使われる。ただし、「~に」が入ってるときに「~じゃまい」を使うのは不自然である。
  • ×「ゴルフをやりに行じゃまい。」
  • ○「みんなで行かまい。」
また、遠州っ子(静岡県西部地区出身者)の気質を表す言葉として、「やらまいか精神」が挙げられている。何に対しても「やってやろうじゃないか」という挑戦者精神・開拓者精神を持っていることを表現しているのだが、このようなところにも「~まい(か)」が使用されている。
まい(か)の使い方
五段活用 上一段活用 下一段活用 サ行変格活用 カ行変格活用
未然形+まい(か) 行かまいか 見まいか 食べまいか しまいか 来まいか(こまいか)※1

※1 人によっては、「きまいか」と言ったり、「こまいか」と言ったりするが、文法的には「こまいか」の方が正しい。

~や/やあ 
~な/なあ。活用語の終止形や助詞に続く。感動・軽い主張・軽い願望・同意の求めなどを表す。例:「誰か来やせんかや」→「誰か来ないかな」、「可愛いやあ」→「可愛いなあ」

[編集] 助動詞

未然形+すか 
決して~しない。活用しない。 例:ほんなことせすか(そんなことは絶対にしない)[アクセント] 「す」の直前。名古屋弁から入ってきた単語だが、静岡弁の「~け?」と混ざった形である「~すけ」も使われる。
連用形+なし~ 
未然形+ずに~、未然形+ないで~。 例:「電気を消しなし寝た。」(「電気を消さずに寝た。」)
連用形+おおす 
連用形+しきる、連用形+しはたす。否定形である「~おおせん」の形で使われることが多い。 例:「全部は食べおおせんに。」(「全部は食べきれないよ。」)
連用形+りん 

動詞の連用形に「(り)ん」を付けて軽い命令形を作る。これは三河弁なので、静岡県と愛知県の県境(湖西あたり)しか使われていない。一段動詞、上一段活用、下一段活用には「りん」、五段活用には「ん」が付く(「×行きりん」ではなく「行きん」)。サ行変格活用の「する」にりんをつけると「しりん」になる。カ行変格活用の「来る」にりんをつけると、「来(こ)りん」になる(ただし一般にはあまり「来(こ)りん」は使われず「おいでん」が使われることが多い)。名古屋弁の「連用形+やあ」と成り立ちは異なるが、用法は似ている。 例:食べりん(食べなよ/食べたら?) (名古屋弁:食べやあ)

り(ん)の使い方
五段活用 上一段活用 下一段活用 サ行変格活用 カ行変格活用
連用形+(り)ん 行きん 見りん 食べりん しりん こりん
連用形+「て」+ごう

動詞の連用形+「て」に「ごう」を付けて軽い命令形を作る。「(り)ん」は「連用形+な」(~しな/~したら?)に近いが、「ごう」は「連用形+ごらん」(~してごらん)に近い。静岡県西部地方の磐田市あたりから静岡市のあたりまで使われている。 例:書いてごう→書いてごらん 見てごう→見てごらん

ごうの使い方
五段活用 上一段活用 下一段活用 サ行変格活用 カ行変格活用
連用形+ごう 行ってごう 見てごう 食べてごう してごう 来てごう
連用形+ない

普通の命令では、動詞の連用形に「ない」を付けて命令形を作る。「りん」や「ごう」よりは強い命令になる。関西弁の「~んかい」に近い。「~んかい」を使う人もいる。上一段活用、下一段活用、サ行変格活用の場合では、否定助動詞と同じ形になってしまうが、発音で区別する。 例:書きなさい→書きない 食べなさい→食べない

ないの使い方
五段活用 上一段活用 下一段活用 サ行変格活用 カ行変格活用
連用形+ない 行きない 見ない 食べない しない きない

[編集] 動詞

[編集] サ行五段活用イ音便

例:「写した」→「写いた」、「燃やした」→「燃やいた」、「直して」→「直いて」、「鳴かして」→「鳴かいて」

ただし、「書いた」との聞き間違え防止のため、「貸した」を「貸いた」とは言わない。これは三河弁・名古屋弁も同様である。

[編集] 否定助動詞

動詞の否定形には、通常の否定を表す「~ん」の他に、強い否定あるいは迷惑感のある否定を表す「~せん(へん)」の形がある。東京弁の「~やしない」と同じ起源と思われるが、それよりは強調の意味が弱く、頻繁に用いられる。すべて「~せん」と言うわけではなく、「~ん」と使い分けられている。
「~へん」の起源は関西弁と考えられるが、「~せん」の起源は名古屋弁と考えられる。
「~へん」は年寄り臭く感じるのか、若者では、「~へん」は使わず、「~ん」や「~せん」を使う。
遠州弁では上一段活用や下一段活用の場合では、「~やへん」というふうに、「や」が付くのが普通だが、関西弁では上一段活用や下一段活用に「や」は付かず、「~へん」になる。

この強い否定形は、地域や話者によって様々な形が聞かれる。動詞の活用別に記す。

[編集] 五段活用

「書く」を例とすると、

  • 書かん
  • 書かへん
  • 書きゃへん
  • 書かせん
  • 書きゃせん

などの形が聞かれる。「書けせん」は「書くことができない」という意味ではないのに注意。「書かせん」と言うと、普通は、「書かせる」の否定形だと思うが、書かせるの否定形か、書くの否定形かは、発音で区別する。

[編集] ワ行五段活用

例:「思う」

  • 思わん
  • 思わへん
  • 思わせん

[編集] 上一段活用

例:「起きる」

  • 起きん
  • 起きやへん
  • 起きやせん

[編集] 下一段活用

例:「負ける」

  • 負けん
  • 負けやへん
  • 負けやせん

上一段活用と下一段活用の場合には、「や」がつく。

[編集] 来る(カ行変格活用)

  • こん
  • こやへん
  • きやへん
  • こやせん
  • きやせん

文法的には「こやへん」、「こやせん」の方が正しいが、人によっては「きやへん」、「きやせん」も用いられる。

[編集] する(サ行変格活用)

  • しん
  • せん
  • しやへん
  • しやせん

[編集] 接続助詞

いずれも終止形接続である。共通語の「ので」「もので」が連体形接続なのと異なるので注意。具体的には断定の助動詞「だ」と形容動詞に接続するときに「だで」「だもんで」「だけん(だけんが)」となる。

で 
順接の接続助詞。もっとも広く使われる。
もんで 
順接の接続助詞。言い訳をするときなど、結論より理由に重点があるときに使われる他、「で」に比べて長いため考える時間を稼ぐために使われることもある。
に 
順接の接続助詞。聞き手に対する命令・指示・勧誘・アドバイスに理由を付する場合に限って使われる。
だに 
逆接の接続助詞。「~のに」の意。「~ので」という意味と区別するために、「だ」が付く。例:「違うだになんで直さないだ?」
けんが(けえが)、けん 
逆接の接続助詞。「~けど」の意。基本的に、接続詞的用法には「けんが(けえが)」を、終助詞的用法には「けん」をそれぞれ用いるが、接続詞的用法に「けん」を、終助詞的用法に「けんが」を用いる事もある。若者の間では、接続助詞的用法に「が」を省いて用いる事が多い。「けんが(けえが)」は浜松市、磐田市、袋井市でもわずかながら使われることもあるが、「けん」は磐田・袋井の東の掛川市以東でしか使われない。(最近では、袋井市でも「けん」を使うことがある。)例:「時間がないけんが急がんくていいよ」、「見たけん、無かった」、「今、勉強中だけん
順接接続助詞用法比較
用法 「+」の位置に入れることが可能か
もんで
言い訳※1 寝坊した+遅刻した × ×
指示の理由 いま行く+待っとって ×※2
指示の理由(倒置 待っとって、いま行く+ ×※2
論理的推量※3 閏年だ+29日がある ×
文末※4 時間ない+「ね」などの終助詞 ×※5

※1 遅刻したことはすでに明らかであり、話者の訴えたいことは遅刻の理由が寝坊であることなので、「もんで」が使われる。「で」を使うと言い訳というより開き直った感じになる。
※2 不可能ではないがあまり言わない。
※3 「29日のあるのは閏年だからだ」のような感じで理由に重点があるときは「もんで」が、「29日がある」という結論に重点があるときは「で」が使われる。
※4 呼びかけのときには「で」を使い、応答のときには「もんで」を使う。
※5 文末に付く「に」は接続助詞ではなく終助詞の「に」であり、別の語である。

[編集] 間投助詞

「よ、よう」、「や、やあ」。※名古屋弁#間投助詞を参照。

[編集] 発音

[編集] アクセント

アクセントにおいては、遠州弁は東京式アクセント地域に含まれ、外輪型東京式に分類される。共通語との差異は少ないと言われるが、幾つかの語彙ではいわゆる「東海東山式アクセント」が行われ、違いが認められる。ただし、近年ではテレビなどの媒体を通じての共通語の影響も大きく、ことに若年層を中心に共通語アクセントが用いられる傾向がある。

遠州弁と共通語とのアクセントの違い
語彙 共通語 遠州弁 補足
後ろ しろ しろ
四月 がつ がつ
種類 しゅるい しゅるい
世帯 たい
掃除 うじ うじ ただし「お掃除」は「おうじ」で共通
素麺 うめん うめ
電車 んしゃ んしゃ
半袖 んそで んそで
くら くら
向く
眼鏡 がね がね
ラーメン ーめん ーめ

また、同じ遠州弁区域でも、地域によって違うことがある。

三拍形容詞第二類の内、共通語アクセントで中高型のものが、遠州弁全体では共通語と同様の東京式アクセントに従うのに対し、中遠地区では京阪式アクセントに従うような頭高型で発音されることが多い。西遠・北遠地区でもこのようなアクセントは散見されるが、決して多くはない。

アクセントの地域差(主な例)
語彙 共通語 遠州弁(中遠) 遠州弁(中遠以外)
暑い、熱い つい
痛い たい
寒い むい
悪い るい

中遠地区では「西・東・南」の方角の発音が標準語の発音と違うが、中遠以外は標準語の発音と同じである。

アクセントの地域差(方角)
語彙 共通語 遠州弁(中遠) 遠州弁(中遠以外)
西
がし がし がし
なみ なみ なみ

[編集] 発音的特長

  • 母音の無声化は余り目立たない。しかし、近年では共通語の影響もあり、無声化も広く行われつつある。
  • 語中・語末のガ行音の鼻音化(カ゜行音化)が目立つ。例:音楽(オンガク → オンカ゜ク)、満月(マンゲツ → マンケ゜ツ)。
  • 「エイ」音の「エー」音化が目立つ。例:経験(ケイケン → ケーケン)、英語(エイゴ → エーコ゜)。

[編集] 語彙

[編集] 名詞

あいさ 
あいだ、間
あわくい 
慌て者、粗忽者
あんも 
馬鹿、馬鹿者
あんもう 
あんころ餅(「餅」の意で使われる場合も見られるが、正しくは「あんころ餅」の意)
うらぼん(裏盆)
本来はお盆という言葉自体が「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の省略形だが、遠州の一部では8月15日の「表盆」に対し、早死にした子どもを供養する地蔵盆(8月24日)を裏盆という。
エシャ 
エシャレット(軟白したラッキョウの鱗茎)。
おっさま 、おっさん
お坊さん(「お」にアクセント)
くろ、ぐろ 
すみ、端
けった、けったあ 
自転車
国1 
国道1号線
ころ 
自転車の補助輪や台車等の車輪、キャスター
こん 
在所(ざいしょ)、お在所 
実家
舌べろ 
舌、べろ(同じ意味の言葉を繰り返している。また知多弁では「舌べら」と言う)
衆ら 
人たち(「あの衆ら」、「若い衆ら」、「女の衆ら」などの形で用いられる。複数の人を表す「衆」に、更に複数を表す「ら」が付いている)
線引き 
定規
ぞんざい 
ぜいたく、わがまま
ため 
同い年(チャットや掲示板で若者に多く使われてるが、元々は静岡県の方言である。)
てんこちょ 
てっぺん、頂上
どべ 
最下位
ながらみ 
ダンベイキサゴ(食用巻き貝)。
なかめしぐるりあん 
ぼた餅、おはぎ(「中は飯、ぐるり(外)は餡」の意)
ねち 
歯茎
ねぶつ 
出来物
ばかっつら 
馬鹿者、阿呆
ひぼ 
ほそば 
マキ(樹木)
ぼっちょ 
出っ張り、ボタン、スイッチ
ぽんぽん 
オートバイ、自動二輪、原付(平板型アクセント)
悪さん坊 
いたずらっ子

[編集] 動詞

頭切る 
髪を切る
いがむ、えがむ 
曲がる、歪む
いきれる 
蒸し暑い
いのく 
動く
うっちゃらかす、うっちゃらかいとく 
捨て置く、放っておく、ほったらかす
うっちゃる 
捨てる
おやす 
悪くする、壊す
かある 
転ぶ、倒れる、ひっくり返る
かう 
(鍵を)かける
かじる、かじくる 
引っ掻く
かっぱしゃぐ 
乾く、乾燥する
かまう 
からかう、いじめる
かわばる 
乾き切ってこびり付く
くすがる 
刺さる
くれる 
(物を人に)あげる
業(ごう)が湧ける 
怒る、頭にくる、腹が立つ
こく 
言う
提(さ)げる 
持ち上げる
せせる、せせくる 
触れる、触る
そら使う 
とぼける、知らんぷりする
たつ、たてる 
(戸などを)閉める
血が死ぬ 
内出血する(慣用句)
ちみくる 
つねる
ちょびちょびする 
ちょっかいを出す、ふざける
とんまえる、とんます 
捕まえる
なぜる 
撫でる
はさがる 
挟まる
はぜる 
(風船などが)はじける、つぶれる
はぶく、はぶせにする 
仲間はずれにする
ぶっさらう 
(人などを)殴る、酷い目に遭わせる
へち曲がる/へち曲げる 
ひん曲がる/ひん曲げる
ぼう、ぼっかける 
追う、追いかける
ほかし投げる 
投げ捨てる
ほかす 
置く、放っておく
ほじく 
解く、ほどく
ぼったくる 
追い立てる、追い回す(共通語にも見受けられる「不当に高い値段を要求する、ぼる、ふっかける」の意でも用いられる為、どちらであるかは文脈から判断するより無い。例:「やい、可哀想だで猫なんかぼったくっちゃいかんに。」→「おい、可哀想だから猫なんか追い回しちゃいけないぞ。」)
まぜる 
仲間に入れる
もおる、もる 
漏れる
持ち行く、持ちに行く 
取りに行く
やっきりする、やっきりこく 
怒る、頭にくる、腹が立つ
寄せる 
(洗濯物を)取りこむ
笑かす 
笑わせる

[編集] 形容詞

えらい 
辛い、疲れる、大変
おおぼったい 
(まぶたなどが)覆い被さるような、厚ぼったい
おとましい 
大変、苦しい
がんこ 
ひどい、凄まじい、とんでもない(叙述用法のみ。副詞・形容動詞に同形語あり)
黄いない 
黄色い、黄色の
けっこい 
綺麗な、美しい(「こ」にアクセント。形容動詞に同形語あり)
こそばい、こそばったい、こそばゆい 
くすぐったい
こわい 
堅い、強い
さぶい 
寒い
じゅるい 
ぬかるんでいる
しょんない 
仕方ない
ずっこい 
ずるい
せばい 
狭い
とろい、とろくさい 
のろま、鈍臭い、馬鹿
とんじゃかない 
頓着しない、構わない、気にしない、どうでもいい
ぬくとい 
温かい
ひずるしい 
眩しい
ひゃっこい 
肌寒い
ひんしょったい 
貧相な、貧乏臭い、みすぼらしい
ぶしょったい 
だらしない、汚い、格好悪い
みがましい 
しっかりしている、まめな
みるい 
未熟な、熟れていない、(子供の皮膚などが)やわらかい(基本的に幼い、新鮮な事が前提)
らんごくない、らんごかない 
無茶苦茶な、猥雑な

[編集] 副詞

がんこ 
とても、すごく、とんでもなく(形容詞・形容動詞に同形語あり)
ごてしょと 
ごまんと、山ほど、たくさん
たっくう 
たくさん
ちゃっと、ちゃっちゃと 
すぐに、急いで、さっと、さっさと
ちょっくら 
少し
ちんたら 
のろのろ
どっかこっか 
どこかしら、どことなく
なんしょ 
やたら、むやみに、なにかにつけ
はあ 
既に、もう、間もなく、じきに
みなきり、みなっきり 
片っ端から、洗いざらい、全部
やっと、やあっと 
長い間、ずっと

[編集] 形容動詞

がんこ 
ひどい、凄まじい、とんでもない(形容詞・副詞に同形語あり)
けっこう、けっこ 
綺麗に、美しく(「こ」にアクセント。形容詞に同形語あり)
ぞんざい 
ぜいたく、わがまま、横柄
たわけ 
馬鹿
ちんちん 
熱い(平板型アクセント)
なりき(百鬼)
がさつな、ぞんざいな。
ひょんきん 
ひょうきん、極端)
らんごく(乱極、乱獄)
ひどく散らかった

[編集] 感動詞

やい 
おい(呼びかけ)
やいやい 
あーあ(落胆)、おいおい(いら立ち)、しまった(後悔)

[編集] 接頭辞

ど~ 
とても~、非常に~
ばか~ 
ものすごく~、非常に~

[編集] 接尾辞

~さら 
~ごと

[編集] 地域差

遠州弁は、狭い地域での方言であるにも関わらず、各地区で使われる言葉やイントネーションが微妙に異なり、遠州弁の小分類は、以下に区分される。

  • (1)湖西地区(東三河と隣接している為、限りなく三河弁に近い。)
  • (2)北遠地区(山々に囲まれた地域であり、年配者が多く古来からの遠州弁が使われている。)
  • (3)西遠地区(主に浜松市で使われている。一般的な遠州弁を示す。)
  • (4)中遠地区(天竜川を挟んでいる為、西遠地区とのイントネーションが異なる。)
  • (5)東遠地区(周囲を山々に囲まれている為、中遠地区とは微妙に異なる。駿河国寄りの発音をする。)
  • (6)南遠地区(主に御前崎方面で使われる発音。東遠地区と発音に殆ど変化ないが、沿岸部の地域の影響が若干ある。

浜名湖以西の(1)湖西地区は愛知県との県境のため、「のん、ほい、~りん、おいでん」などの三河弁独特な言葉を使ったり、「おる、あかん、はよ、~んかい(命令)、なんぼ」などの関西系の言葉を使ったりしている。
むしろ、浜名湖以西の新居町、湖西市、三ヶ日あたりは遠州弁が話されているというより、三河弁が話されているといった方が論理的である。
言境が天竜川になっている単語もある。「けった/けったあ」は天竜川以西では多く使われるが、天竜川以東では余り使われないし、逆に「~ごう」は天竜川以西では余り使われないが、天竜川以東では多く使われる。

小分類地区の比較
地区 (1)湖西地区 (2)北遠地区 (3)西遠地区 (4)中遠地区 (5)東遠地区 (6)南遠地区
~ことない? × × × × ×
けった/けったあ × × ×
~ごう ×
~(だ)けん × × × ×
~(だ)けんが × ×

遠州地域は、名古屋市と静岡市の間ぐらいなので、愛知系の方言と静岡系の方言が混ざっている。

疑問文の「~の?」を「~だ?」と表現したり、「~か?」を「~け?」と表現したりするのは、静岡系の方言である。対して「決して~ない」を「~すか」と表現したり、「~かな」を「~かいやあ」と表現したりするのは、名古屋系の方言である。ただし、名古屋弁の「~すか」と静岡弁の「~け?」が混ざって、「~すけ」という表現も存在するが(例:食べすけ、あらすけ、来すけなど)、「~すか」の方を使う人が多い。
また、大阪と東京の間ぐらいでもあるので、動詞の否定の「~へん」や、「しんどい」など関西系の単語も微妙に使うことがある。
このような地理的要因により、遠州地域では「疲れる、大変」の意で、名古屋弁の「えらい」と関西弁の「しんどい」との両方を使い、また動詞の否定では、名古屋弁の「~せん」と関西弁の「~へん」との両方を使う。ただし、「~へん」は年寄り臭く感じるせいか、または関西系の単語を嫌うせいか、若者は余り使わず、代わりに「~せん」や「~ん」を使う場合が多い。

共通語、関西弁、名古屋弁、遠州弁の比較
共通語 関西弁 名古屋弁 遠州弁
自転車 チャリ/チャリンコ けった/けったあ チャリ/チャリンコ、けった/けったあ
~ない(否定助動詞) ~ん、~へん ~ん、~せん ~ん、~へん、~せん
大変 しんどい えらい しんどい、えらい

共通語を含む他の方言との比較については方言比較表を参照されたい。

[編集] 遠州弁と共通語

遠州弁は共通語との隔たりの少ない方言だが、これは、共通語の土台となった東京方言の成立に、遠州弁に隣接する三河弁が関わっているためである。三河弁とかなり似ており、浜松城では三河出身の人が来たりしていて、浜松城の城内では江戸城と同様に、三河弁が話されていたので、遠州弁の起源は三河弁という説がある。

[編集] 関連項目

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