酸性食品とアルカリ性食品
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酸性食品とアルカリ性食品(さんせいしょくひんとアルカリせいしょくひん)酸性食品・アルカリ性食品という分類はスイス・バーゼル大学の生理学者、グスタフ・ブンゲによって提唱された概念であるが、現在では栄養学的には根拠のない分類であると考えられている。
[編集] 背景と説明
経済成長後の日本では健康指向の高まりから、食生活の改善にも関心が集まり、酸性食品・アルカリ性食品という分類も大きく取り上げられてきた。
食品の酸性・アルカリ性は、食品を燃やした灰を水中に入れて溶出成分を含む水溶液を調製し、その水溶液が酸性かアルカリ性かで分類されている。これは、体内でのエネルギー生産が主として炭化水素の酸化反応であることから、酸化反応の一種である燃焼によって食品を酸化させれば、体内に蓄積される「燃え残り」を推定できるという仮説によるものである。
しかし、燃焼は700℃以上の高温で起こる急激な酸化反応であり、体内で進行するエネルギー生産プロセスとの類似性は低い。
また、食品が人体に与える影響は、含まれている元素の問題ではなく、含まれている化合物の問題である。例えば、食塩(塩化ナトリウム)は生命活動に欠かせない化合物であるが、金属ナトリウムや水酸化ナトリウムは同じナトリウムの化合物であるにもかかわらず猛毒である。このような観点から考えれば、燃焼という化学反応を経た灰から食品を分類するのは妥当ではない。
[編集] 食品
一般的には下記のような分類が流布されている。
- アルカリ性食品
- 野菜、果物、海藻、キノコ、ひじき、ワカメ、昆布、干し椎茸、大豆、ほうれん草、ゴボウ、サツマイモ、ニンジン、里芋、メロン、レモンなど
- 酸性食品
- 肉類、魚類、卵、穀類、豚肉、牛肉、鶏肉、魚肉、米など
この分類をみて分かるように、高タンパク高脂肪に偏りがちな現代の食生活では「酸性食品」を多量に摂取し、「アルカリ性食品」が不足しがちである。しかし、食物繊維やビタミンなどの不足しがちな栄養素を摂取すべきと言う主張に酸性・アルカリ性という化学用語を持ち出す根拠は希薄である。
健康食品に中には、いまだに「アルカリ性食品」であることを強調するものもあるが医学的、栄養学的に疑問なものが多い。
無理に「酸性食品」を避ける食事を続けると、タンパク質欠乏症となり逆に健康を害する。