阿呆
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阿呆(あほう、あほ)は日本語で愚かであることを指摘する罵倒語、侮蔑語、俗語。近畿地方を中心とした地域でみられる表現である。
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[編集] 阿呆の使われる状況
阿呆は類義語の馬鹿とともに日本語の会話で良く使われる表現である。
阿呆は馬鹿とおなじ言葉ではなく若干用例が異なる。たとえばモノが使い物にならなくなった場合、「ネジが馬鹿になる」とはいうが「ネジが阿呆になる」とはいわない。また、並外れていることをあらわすときに、「馬鹿正直」、「学者馬鹿」とはいうが「阿呆正直」、「学者阿呆」とはいわない。このよう場合、「阿呆」には馬鹿にあるような意味での使い方はない。
[編集] 阿呆の分布状況
馬鹿は関東、阿呆は関西と考えられがちであるが、阿呆は近畿地方を中心にして西は東四国まででしか使われていない。たとえば徳島の阿波踊りのよしこのには「踊る阿呆に見る阿呆」の歌詞がある。西四国、中国地方以西では馬鹿が使われている。もっとも最近は上方漫才のテレビ進出にともなって、以前は阿呆を使っていなかった地域でもアホを使うようになっている。
阿呆の発音は、京阪神では「アホ」、その周辺の地域では「アホー」である。そして最外縁の地域では「アハウ」という発音が残っている。これは文献上でも「アハウ」→「アハア」→「アホウ」→「アホ」と変化していることが知られており、この表現が京都を中心に広がっていること示している。
バラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』において、「アホとバカの境界線はどこか」という調査に端を発した本格的な調査と研究がなされており、この制作過程を記した『全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路』(松本修著)にその詳細な結果と考察が記されている。
[編集] 歴史
文献における初出は、13世紀に書かれた鴨長明の『発心集』の第8巻にある「臨終にさまざま罪ふかき相どもあらはれて彼のあはうのと云ひてぞ終わりける」である。しかし『全国アホ・バカ分布考』で著者の松本修は、方言の分布状況から阿呆がもっと新しい言葉だとみており、『発心集』の記述を疑問視している。これ以外の点からも『発心集』の第7巻、第8巻を後世の増補版と指摘する研究がある。
『発心集』のつぎに文献に現れるのは3世紀後の戦国時代に書かれた『詩学大成抄』になる。現存する写本では「アハウ」という言葉の左側に傍線が引かれているが、これは元々この言葉が漢語だったことを意味するものだとされており、後述の中国語語源説を補強するものとなっている。
[編集] 語源
中国の江南地方の方言「阿呆(アータイ)」が日明貿易で直接京都に伝わった可能性が『全国アホ・バカ分布考』で指摘されている。上海や蘇州、杭州などで現在も使われている言葉で、「阿」は中国語の南方方言で親しみを示す接頭語であり、意味は「おバカさん」程度の軽い表現である。これは現在の日本語の「阿呆」にもあるニュアンスである。語源の一説には、秦の始皇帝が作らせその後息子である胡亥が増築を繰り返させて国を疲弊させる原因のひとつとなった大宮殿阿房宮であると言われている。
[編集] 参考文献
- 松本修 『全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路』 大田出版 ISBN 4872331168