電子ゲーム
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電子ゲーム(でんしげーむ)は、内蔵されたLSIチップによって制御される携帯型のゲーム機で、液晶画面を見ながら操作ボタンを押して遊ぶ玩具である。「電子LSIゲーム」や「LSIゲーム」とも呼ばれる。一部の商品では「LSIゲーム」よりも小型な「LCDゲーム」と呼んでいる物もある。
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[編集] 概要
非常に安価であるが、ソフトウェアが内蔵された電子回路と一体になっているため、ソフトを交換して、別のゲームで遊ぶ事は出来ない。卓上時計や電卓などの付加価値機能として、これら電子ゲーム様の機能を持つ機器もある。また、同時期には真空管の一種である蛍光発光管を使ったFLゲームも発売され、やや大型で消費電力も大きく、高価であったものの色彩豊かな表示と見やすい画面を特徴としており、これらFLゲームも電子ゲームと呼ばれた。
原型となったのは任天堂のゲーム&ウオッチ(1980年より複数タイトルが発売された)で、同社のヒットにより、様々なメーカーが参入した経緯がある。
これらの玩具は以下の特徴を備えている。
- 携帯に便利で、ポケットに収まる
- 消費電力が小さく、ボタン電池で1ヶ月以上は遊べる
- モノクロ液晶で画面表示(後にカラー液晶の物も開発・発売された)
- 安価で数千円前後、ものによっては数百円程度である
- 内蔵されたソフトウェアは取り出したり、他のソフトウェアと交換できない
- 電子ブザーで音は出せるが、複雑なメロディを奏でる事は出来ない
[編集] 社会現象
1980年代に登場して最初のブームが訪れて以来、幾度か流行り廃りを繰り返している。その背景には常に、『ゲームボーイ』を始めとするカートリッジの交換が可能な、より上位の携帯ゲーム機の存在があると指摘できる。
- 1980年代
- 任天堂のゲーム&ウオッチ(電子ゲームだが、普段は得点表示の欄が時計となっていて、時刻を知る事が出来る・クレジットカード大で厚さは1cm以下・ポタン電池で動作した)の爆発的なヒットにより、様々なメーカーが参入した。当時の児童なら2~3個は必ず持っている程であった。この混乱期に、同ゲーム機を学校に持ってくる児童は後を絶たず、ゲーム機の盗難や貸し借りにまつわる破損などのトラブルが急増。ついには「学校持ち込み禁止令」が出るなどしたが、水面下では相当数の電子ゲーム機が友人間で交換されたりした。また当時の児童財産水準から見て、これら電子ゲーム機が些か高価であった事から、玩具店では同時期、店頭展示のゲーム機が盗難に遭うなどの被害が急増し、補導者が多数出るなどの問題も取り沙汰され、電子ゲーム機の販売自体が芳しくない社会現象として扱われた。その後のLSI高度化に伴う処理機能の汎用化で、ロムカートリッジにより複数のゲームソフトが使える携帯ゲーム機の登場に押されて、次第に市場から姿を消していった。
- 1990年代
- 1996年から、『テトリン55』を始めとする『テトリス』をモチーフとした小型サイズのキーチェーンゲームがブームとなった。『ポケットモンスター』のブームによる『ゲームボーイ』市場の復活で、シンプルな携帯型ゲームが見直され始めたのだと思われる。『プレイステーション』などの「次世代機」への反動や、レトロブームも追い風だったと言えよう。同年の秋、バンダイが従来の電子ゲームとは一線を画す育成ゲーム『たまごっち』を発売。当初はマイナー商品として細々と売られていたが、次第に口コミで流行して同年末には「幻の商品」と化し、最終的に国内外で累計4000万個を売り上げるオバケ商品となった。最盛期には生産が間に合わず、プレミア価格で定価の数倍という高値をつけられたり、リバースエンジニアリングによって内蔵ソフトウェアまでもをコピーしたコピー商品も多数出回り、(怪しい)露天商が路上販売していて摘発されるなどの混乱を招いたが、電子ゲームのブーム自体は1998年になるころには沈静化し、『ゲームボーイカラー』や『ゲームボーイアドバンス』に移行していくこととなった。ゲームもできる携帯電話が急速に普及したこともブーム終焉と無関係では無いだろう。
- 2000年代
- 2004年に『たまごっち』の新シリーズが発売され、初期のブームを知らない低年齢層の女児を中心に第2次ブームを起こしている。1990年代に流行ったようなキーチェーンゲームなども再び見かけるようになり、携帯電話でゲームをすることができない低年齢層を中心に静かに流行している。『ニンテンドーDS』や『プレイステーション・ポータブル』の登場により携帯ゲーム機も次第に多機能化・複雑化する中で、シンプルなLSIゲームが再び見直されているとも考えられる。
[編集] その他
基本的に1つの電子ゲーム機で遊べるゲームは一種類(幾つかのバリエーションで「数種類のゲームが遊べる」とする物もある)。通常のテレビゲームと比較すると生産が早く、流行すると爆発的に売れるが、単一の商品としては飽きられるのも早い。ソフト交換可能なゲーム機のように中古市場も形成されていないため、過去のゲームを入手するのは比較的困難である。
ゲームのジャンルはアクションゲームやパズルゲームが代表的だが、今日では『たまごっち』に代表される「いつでもいっしょ」である事を前面に押し出した物や、ロッドを振ったりリールを巻き取る釣りゲームや、歩数計と一体化したもの等、専用のハードウェアが必要な物も登場している。さらには任天堂の『ポケモンミニ』のように、ロムカセット交換により複数のゲームが遊べる電子ゲームも登場するなどの多様化を見せている。その他、千円未満の(メーカー名も定かではないような)安価なキーチェーン型の小型ゲーム機は多数販売されており、他愛ない暇潰しに用いられているようである。
また古くから、ケーブル接続による多人数プレイが可能な野心的な商品もあったが、昨今では赤外線通信モジュールの高密度パッケージが部品として供給されている関係上、赤外線によるワイヤレス通信で、新しい遊びを提案する物も発売されている。
製造に際しては液晶電卓と同程度の製造技術・設備で生産できるため、玩具メーカーや家電メーカー、更には電卓や時計のメーカーといった非常に多くのメーカーが参入し、ブーム最盛期には玩具店や時計店、文具店といった一般小売店の一角が積み上げられた商品に占領されると言う、今日の家庭用ゲーム機のソフトウェアと同様の(場所によってはそれ以上の)混乱を招いた。
消費電力が小さい事から、太陽電池で動く種類の物も発売された。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 帰ってきた電子ゲーム(復刻版) - 様々な電子ゲームのレビューあり
- Jun Amano's Homepage
- LSIゲームの悲哀