青木ヶ原
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青木ヶ原(あおきがはら)は、山梨県富士河口湖町、鳴沢村にまたがって広がる原野。原野というよりも森であることから青木ヶ原樹海(あおきがはらじゅかい)とも呼ばれる。 樹海の歴史は約1200年とまだ浅く、若い森である。
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[編集] 地理
富士山の北西に位置し、864年の噴火(貞観噴火)の際に流れ出した溶岩流によって作られている。溶岩流上には広い範囲にわたって混合林の原始林を成している。周辺には風穴と呼ばれる洞穴をはじめ、洞窟などが数多くある。 面積はおよそ3000ヘクタールで、これは山手線に囲まれた面積に匹敵する。実際よりも広大なイメージを抱いて「富士の裾野」と表現する人もいるが、裾野全体に広がっているわけではないので、これは誤りともいえる。
溶岩流のせき止められた端には精進湖、本栖湖がある。864年の噴火以前は現在の青木ヶ原の地に、剗の海(せのうみ)という大きな湖があったが、溶岩でその多くが埋め立てられた末に精進湖が残ったとされる。樹海の中には国道139号などが通っている。樹海そばにある三湖台を登ると、頂上からは樹海が見渡せる。風に吹かれてなびく木々の様子を海のさざなみのように例え、そこから樹海と名づけられたという説もある。
[編集] 観光地としての青木ヶ原
近くにキャンプ場や公園があり、青木ヶ原を通り抜けられる遊歩道も整備されており、森林浴には最適なところである。青木ヶ原と湖と富士山からなる景観も美しい。首都圏から容易に行けることもあり、人気の高い観光地である。
反面、樹木が多く深い森であるため、すこし道を外れると元の場所に戻ることが難しい。また、道を外れた場所の地面はむき出しの溶岩で出来ているために、大小さまざまの凹凸があるので、足をとられるなどして怪我する可能性がある。俗説にあるような「一度入ったら出られない」ような恐ろしい場所ではないのだが、これらの危険を防ぐためには、何よりも遊歩道から逸れないように心がけるなど、他の山々の森を訪れる時と同様に、ある程度は心得て赴くことが必要とされる場所である。
近年は、観光者によるゴミのポイ捨てに加え、外部から持ち込まれた粗大ゴミの不法投棄も多く、問題となっている。また、樹海の中での肝試し的なキャンプの残骸など、冷やかしで訪れる人々によるゴミが増えている。これらのゴミは地元住民が定期的に始末しているとはいえ、他の観光地同様に、観光客のマナーが問われる問題である。なお、全国の有志による清掃ボランティア活動も行われている。
[編集] 「自殺の名所」という偏見
青木ヶ原での自殺が起こるようになったのは比較的最近である。松本清張の小説『波の塔』では登場人物が青木ヶ原で自殺する場面が描かれているが、この小説が1973年にNHK銀河テレビ小説にてドラマ化されたことによって「青木ヶ原=自殺」というイメージが広く定着した。
以来、全国からこの樹海に訪れ自殺する人が後を絶たないため「自殺の名所」といわれているが、実際の青木ヶ原は散策目的で遊歩道を歩いている人も多い場所であり、周辺の町や村も登山者が宿泊する民宿村がほとんどであるために、このような周辺の土地に在住する人々は、実際の姿を知らずに自殺に纏わるイメージを抱いたまま訪れる人々には困惑しているというのが現状で、周辺には「考え直しましょう」など、自殺志願者に対する呼びかけの看板が設置されている。
さらに1993年に『完全自殺マニュアル』が刊行されてからは、本を参考にした上で訪れる者や、本を持参して自殺する者が増加した。しかし、この本の刊行当時は普及していなかったものの携帯電話での通話は可能なので、例え遊歩道から外れて迷子になったとしても、ほとんどの人々は救出されている。従って、この本で紹介されたような「誰にも見つかること無く自殺する」ことは、携帯電話が人々に広く普及している現在ではまず不可能とされている。
[編集] 青木ヶ原にまつわる俗説
溶岩の上にできたので地中に磁鉄鉱を多く含み、方位磁針に1・2度程度の若干の狂いは生じるが、俗に言われているように「方位が分からなくなる」ほど大きく狂うものではない。また、派生形として「樹海の中ではデジタル時計の表示が狂う」「車の計器や放送機器に異常が発生する」等とも言われているが、科学的な根拠に乏しく、まったくの偽情報である。
同様に「GPSも使えない」という俗説もあるが、これは密生した樹木に電波が遮られるためであり、磁鉄鉱とは無関係である。
「航空機が上空を通過すると計器が乱れるため、飛行禁止とされている」という俗説もあるが、民間機の飛行が制限されるのは、自衛隊・在日米軍の基地が近く、横田ラプコンのエリアとして指定されているという防衛上の理由からである。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 樹海のおとしもの―ショッキングな画像含む、閲覧時注意されたし。
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