AT&T
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AT&T(エイ・ティ アンド ティ、American Telephone and Telegraph、NYSE:T)はアメリカ合衆国最大手の電話会社。インターネット接続サービス等も提供する。本社は旧SBCコミュニケーションズの本拠であるテキサス州サンアントニオに置く。
[編集] 沿革
1877年、19世紀における米国の二大発明家であるグラハム・ベルが興したベル電話会社が前身であり、1885年に世界初の長距離電話会社として発足。社長となったセエドア・ニュートン・ヴェイルは「垂直統合」と「水平統合」と呼ばれる研究開発(これがベル研である)から機材製造、市内交換から長距離交換までの独占を展開。ネットワーク経済学におけるボトルネック独占を見事に現実のものとした。
20世紀初頭には政府との折衝の結果キングズベリー協定により事業の独占権「規制下の独占」を認められるようになった。この規制された独占の状態は1970年代に始まる反独占訴訟の結果解体されることになる。地域電話部門は地域ベル電話会社8社へ、研究・開発部門も分離(ルーセント・テクノロジーズ、現:アルカテル・ルーセント)され、AT&Tは基本的に長距離電話会社となった。これによりアメリカの電話産業は市場競争へと開放され、特に長距離部門ではMCIやスプリント(現:スプリント・ネクステル)などの大手長距離電話会社の成長を見ることになる。
1990年代後半からは、大手ケーブル会社のTCI、メディアワンを買収、ケーブル施設を全国に保有し、その施設を通じた高速インターネット通信事業においても大手事業者となった。だが、株価の低迷や買収コストの回収の遅れなどから財政状態が圧迫し、2000年にはケーブルテレビ部門、長距離通信部門、移動体通信部門などへの分割を発表。2005年1月31日、同国通信2位で地域通信大手のSBCコミュニケーションズに買収されることが発表された。
2005年11月18日、SBCコミュニケーションズがAT&T(AT&T Corp)の買収を完了。同時にSBCコミュニケーションズは社名をAT&Tに改称した。さらに2006年3月5日、地域ベル電話会社のベルサウスを買収することを発表した。ベルサウスとは携帯電話事業で合弁事業を行っており、共同出資会社シンギュラー・ワイヤレスは米国内でベライゾン・ワイヤレス(ベライゾン・コミュニケーションズとボーダフォンの合弁)やスプリント・ネクステルを抑えトップシェアとなっている。また、この合併で地域電話会社はAT&T、ベライゾン・コミュニケーションズ、クウェスト・コミュニケーションズの3社に集約されることとなった。2006年12月29日、AT&Tはベルサウスの買収を完了した。2007年からウイリアムズフォーミュラ1チームをスポンサードしている。
日本においては、日本IBMとの戦略的合意に基づく、AT&Tグローバル・サービスがあり、AT&Tの技術を日本に導入するとともに、企業向けネットワークのアウトソーシングサービスなどを行っている。日本AT&Tという会社も存在するが、AT&Tグローバル・サービスのバックオフィス的機能のほか、米軍向け電話サービスなどを行っているのみである。東京都内では都バスのうち1台に同社の広告がある。(2006.12現在)