DIMM
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DIMM(Dual Inline Memory Module)(ディム)は、複数のDRAMチップをプリント基板上に搭載したメモリモジュールのことを指し、コンピュータの主記憶として利用される。また、そのピン配置や電気的特性を規定したDIMM規格の事を指す。 従来のSIMM (Single Inline Memory Module)に対して、2倍ないし数倍のデータバス幅を持っていることからDIMMと呼ばれる。2007年現在、DIMMと言った場合、多くのパーソナルコンピュータやワークステーションで使用可能なSDRAMを搭載したものを指す。
DIMM規格はJEDEC (Joint Electron Device Engineering Council)で標準化が行われており、搭載されるSDRAMチップの種類毎に多種の規格が存在する。 また、メモリ基板を挿すスロット(ソケット)のことを言う場合もあるが厳密に言えば誤用でり、この場合「DIMMスロット」や「DIMMソケット」と呼ぶ方がより正確である。
基本的にDIMMインタフェースはアドレス、データ、制御信号からなっており、一般的にPC用は64bitデータのDIMMが使用されるが、高信頼性が求められるサーバではECC 8bitを付加した72bitデータのDIMMが使用される。
DIMMの形態は大きく分けてUnbuffered DIMM、Buffered (Registered) DIMM、Fully Buffered DIMM (FBDIMM)の3種類が存在し、そこからさらにSDRAMの規格別に分かれており、それぞれアクセスタイミング、インタフェースが異なり、互換性は無い。下記の通り実効転送速度と搭載可能なモジュール数はトレードオフの関係にある。
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[編集] Unbuffered DIMM
チップセットからのアドレス、制御、データ信号が直接DIMM基板上のSDRAMチップに分配接続される形態のDIMM。
アドレス、制御信号がDIMM上の全てのSDRAMチップに分配されるため、電気的負荷が大きい。例えば 4bit SDRAMチップが搭載されたDIMMの場合、アドレス線は16個のチップに分配されることになる。このためUnbuffered DIMMは、チップセットに多量に接続することには向かない。多くてもせいぜい3枚から4枚が限界である。しかし下記2規格に比べ「余計な物が無い」だけに実効転送速度面ではやや有利である。ワークステーションのうちメモリ容量が最優先ではないものに採用されるほか、パーソナルコンピュータのほとんどに使用されている。
[編集] Buffered DIMM
アドレス、制御信号を一旦DIMM基板上のバッファで受けてから各SDRAMチップに分配接続する形態のDIMM。Registered DIMMとも。
バッファの存在により、アドレス、制御信号の電気的負荷は1 DIMMあたり1負荷となり、チップセットに多量のDIMMが接続可能となる。数GBから数十GBクラスのメモリを必要とするサーバに向いている。なお、一旦バッファで受けることから、Unbuffered DIMMとアクセスタイミングが異なる。例えばリードの際は、実際にSDRAMチップへ通知されるアドレス、制御信号がバッファにより1クロック遅れることから、見かけ上DIMMからのデータの出力がUnbuffered DIMMと比べて1クロック遅くなる。
DDR2, DDR3 とSDRAMチップが高速化するにあたり、データ信号側の電気的負荷やノイズ耐性が問題化しており、Bufferが在ると言えども多量のDIMMを接続することが次第に難しくなってきている。
[編集] Fully Buffered DIMM (FBDIMM)
アドレス、データ、制御信号の全てを一旦DIMM基板上のAMB (high-speed Advanced Memory Buffer)と呼ばれるバッファで受ける形態のDIMM。チップセットとは、シリアルに似た少ピンの高速インタフェースで接続される。また従来の全DIMMが共有接続されるバス形態から、デイジーチェーンの様なPoint-to-Point接続となっている。
従来のDIMMに比べチップセット側の信号数が大幅に減っており、アドレス、制御、ライトデータ用に10信号、リードデータ用に14信号(双方とも差動信号のため実際は2倍の信号線)を使用し、3.2~4.0GHzで駆動される。一見PCI Expressの様なシリアル転送を束ねた形に近いが、各信号にクロックは重畳されておらず、8b/10bなども使用されていない。ライト/リード方向で信号数が違うのは、実際のサーバ使用においては、ライトに比べリードの比率が圧倒的に高いため非対称となっている。
AMBはチップセット側インタフェース、後続DIMM側インタフェース、および自DIMM基板上のSDRAMと接続されるインタフェースと、3本のインタフェースを有しており、チップセット側から信号を受け、自DIMMがターゲットではない場合は後続DIMMに信号を転送し、デイジーチェーンの形で1チャネルあたり最大8枚のDIMMと接続することが可能となっている。 このため、遠いDIMMにアクセスするとその分データが返って来る時間が遅くなる。事実、WindowsVistaで用意されているハードウェアパフォーマンス評価ツールでは同じDDR2-5300チップであるにもかかわらず、UnbufferedDIMMに比べて1割から2割ほど評価が下回っている。