チップセット
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チップセット(Chipset)とは、ある機能を実現するのに、複数の集積回路を組み合わせて機能を実現する構成の場合、それら一連の関連のある複数の集積回路(チップ)のことをチップセットと呼ぶ。
とりわけ、コンピュータにおいて、CPUの外部バスと、メモリや周辺機器を接続する標準バス(PCIバスなど)とのバスブリッジや、パーソナルコンピュータを構成するのに必要な周辺回路を集積したチップといったような、複数のチップのことをチップセットと呼ぶこともある。(前者のCPU-PCIバスブリッジなどのチップはコンパニオンチップとも呼ばれる)
以下はこの狭義の意味であるパーソナルコンピュータにおけるチップセットについて説明する。
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[編集] パーソナルコンピュータのチップセット
チップセット(Chipset)とは、パーソナルコンピュータ内部の、CPUの周辺回路を搭載したチップ(LSI)のことを指す。
[編集] 概要
チップセットにはメモリインタフェースやAGPなどの制御回路が搭載されているため、コンピュータのパフォーマンスに重大な影響を与える。すなわちマザーボード(メインボード、システムボードとも)は特殊な場合を除き、CPUをターゲットに設計されるのではなく、直接の設計ターゲットはチップセットとなる。極端な例だが、CPUを交換してシステムをアップグレードすることは可能だが、チップセットを交換することは、チップが作り付けである事から不可能。近年では、CPUを交換しても、チップセットが対応できない場合が多い。
IBM互換PC(PC/AT互換機)では、当初標準的なCPU周辺LSIを組み合わせて回路が構成されていたが、低価格化などをはかるためにこれら周辺LSI(当時はDRAMコントローラ、i8257DMAコントローラ、INS8250シリアルIO、パラレルIO、μPD765AFDDコントローラなどが対象)を幾つかの、より高密度なLSIに統合したもので、チップス・アンド・テクノロジー社などが初期の代表的なメーカーである。もっとも、チップセットという言葉が認知され始めたのは、PCIバス規格に準じたインテルのi420TX(Saturn)やi430NX(Neptune)あたりからで、それ以前は統合ASICと呼ばれることが多かった。i430LX(Mercury)やi430FX(Triton)から現在主流である2チップ構成となった。
多くのチップセットは、開発サイクルや発熱・歩留まりを考慮して、2チップ構成になっており、CPUやメモリバスに接続される方をノースブリッジ(Macintoshではシステムコントローラと呼ばれる)、I/Oに接続される方をサウスブリッジ(MacintoshではI/Oコントローラと呼ばれる)と呼び、2つのチップ間は数ギガbpsの高速かつ排他的なリンク(HyperTransportなど)で接続される。このリンクの方式と速度が整合していれば、1世代のノースブリッジで、何世代かのサウスブリッジに対応可能である。また、このほうがマーケティング的にも、システムの最新スペックが更新しやすいという利点があり、製品の格付けも容易となる。ノースブリッジには、CPUインターフェース、メモリインターフェース、PCI Expressなどが含まれ、サウスブリッジには、PCI、IDE、USB、EthernetなどのI/Oが搭載されることが多い。
近年では、開発サイクルを犠牲にしても実装面積の削減を目的に、ノースブリッジとサウスブリッジを一つにまとめた統合型のチップセットも増えている。こうした統合チップセットも歩留まりが向上すれば、コストダウン効果が期待でき、小型モバイルPCの高付加価値市場への参入が見込める。加えて、GPUの機能を統合しているものもある。また、CPUにメモリコントローラを統合することで、CPUとメモリ間のボトルネックを減少させる考え方も見直されてきている。これらの物理的な統合・分離とは異なり、Intelの「Centrino」のように無線通信機能内蔵のチップセットとCPUの組み合わせにブランド名を付けて付加価値化する動きもある。
カスタマイズされたベンチマークなどの特定アプリケーションを除き、2チップ間のリンクの方式と速度が全体のシステム能力の上限を決定することになるので、リンクの高速シリアル化および更なる高速化に余念がない。20世紀最終のUSBに始まった高速シリアル化は、RDRAMの実装失敗で二の足を踏んだものの、その後SerialATAの普及、PCI Expressへの移行を済ませて、メモリインターフェースを残すのみとなった。
[編集] PC/AT互換機用の代表的なチップセット
- i440BX,i440MX (インテル)
- i810,i815,i820,i830 (インテル)
- i840,i845,i850,i860,i865 (インテル)
- i855,i915,i945 (インテル)
- i925,i955,i965,i975 (インテル)
- E7200/E7500/E8500 シリーズ(インテル)
- Apollo MVP3,Pro133A,KT266A,KT400(VIA)
- K8T/K8M シリーズ(VIA)
- P4X/P4M シリーズ(VIA)
- nForce シリーズ (NVIDIA)
- RADEON IGP/XPRESS シリーズ (ATI(現・AMD))
- AMD750,760 (AMD)
- SiS530,630,650,660,735,745,746,751,755,761(SiS)
- ALADDiN5,ALADDiN-Pro5,ALiMAGiK1(ALi)
- M1683,M1689,M1695,M1697(ULi(現・NVIDIA))
- HT-2000,HT-2100(Broadcom)
- ServerSet(ServerWorks)
[編集] チップセットメーカー
[編集] PC/AT互換機用
インテル以外(SiS、VIAなど)のチップセットメーカーは、統合型のチップセットによる実装工数の削減や、価格的なアドバンテージを製造メーカーにアピールする傾向にあり、低価格PC向けに採用されることが多い。近年ではATIやNVIDIAといった大手グラフィックス専業メーカーがチップセット業界に参入し、マザーボードへの採用数も急増している。そのため、古くからあるチップセット専業メーカーがそれらのメーカーにシェアを奪われつつある。
また、1990年代後半~2000年代前半までの非インテルチップセットは、不具合を抱える製品が少なくなかった。主にAGPビデオカードに相性問題が出ることが多い。これはAGPを提唱したインテルがPCIの様に公的な規格にしなかったことと、AGP初期~全盛期は動作が不安定とされていたWindows9xシリーズが主流OSであったことも一因であると思われる。また、サウスブリッジのIDEコントローラに不具合が出た製品もあった。マザーボードの電解コンデンサに不具合を抱えている製品もこの時期に多い。今後、この時期のチップセットを搭載した古いマザーボードを使用する機会は減ってゆくものと思われるが、万一使用せざるを得ない場合は注意が必要である。
[編集] その他
RISC型CPUにもチップセットが存在する。これは主にワークステーションなどで使用される。
- アップルコンピュータ - PowerPCを搭載したMacintosh向けにチップセットを独自開発している。
- NEC
- 東芝
- IBM - 自社開発のPOWER・PowerPC搭載システム向けのチップセットを開発・製造している。
- シリコングラフィックス chapter11適用前はMIPS系RISC CPU最強を誇るチップセットメーカーでもあった。
- ディジタル・イクイップメント・コーポレーション 買収前はAlpha向け、現在はヒューレット・パッカードとなりItanium系チップセットメーカーである。