In situ
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in situの語源はラテン語で「本来の場所にて」、意味は分子生物学などの実験において「生体内の本来の場所での」という意味で用いられる。in vivoも生体内であるが、in vivoが試験管などで培養された細胞内での実験を指すことがあるのに対し、in situはその細胞が由来する生物個体内の本来あるべき場所における実験を意味する。
その細胞の位置が重要であったり、細胞がその周囲からの影響を受けているような場合に、このような条件での実験が必要となる。
半導体プロセスなどの分野では、実際のプロセスが起こっている場所/時間を意味し、 in situ 計測を 「その場計測」と言う場合もある。
地質学では、サンプルを採集するのではなく、野外にある状態を in situ と呼ぶ。
英語では、「イン・サイテュー」ないし「イン・スィーテュー」のように発音する。
[編集] in situ hybridization
in situ hybridization(ISH)は、核酸の相補的結合を利用した実験技術。組織標本の中で調べたい核酸がどのように分布しているかを可視化できる。
既知の点突然変異など、特定された任意の塩基配列に対して、それと相補的な配列を持つ核酸を合成することができる。このとき、合成する核酸をなんらかの方法で標識しておいて、調べたい標本に十分行き渡らせると、合成するときに鋳型とした塩基配列に特異的に結合するので、その配列をもつ核酸がどのように分布しているかがわかる。多くの場合、検出しようとされる核酸はRNAで、それと結合させる核酸(プローブ)はDNAである。前者は組織中のRNAが遺伝子発現のよい指標であること、後者はRNAがヒトの皮膚から盛んに分泌されるRNA分解酵素で壊されやすいことに由来する。プローブの標識には放射性同位体や色素など、さまざまなものが使われる。特に蛍光物質を使ったISHをfluorescence ISH(FISH)と呼ぶ。たとえばプローブにルシフェラーゼを結合させておいて、相補的結合が十分に進んだ時点でルシフェリンを加えると、ルシフェリンが分解されるときの蛍光が標的とした核酸の存在を示す。