Information Technology Infrastructure Library
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ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、1989年に英国政府のCCTA(中央コンピュータ電気通信局、現OGC)によって公表された、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティスをまとめたものである。ITサービス運用の分野においてデファクトスタンダードとなりつつある。ITILの読み方は「アイティル」、「アイティーアイエル」、「イティル」などがある。ITILはOGCの登録商標である。
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[編集] 概要
1980年代の英国政府において、ガイドラインを基にしたITサービスの利用と提供が求められるようになり、ITサービスの方法論を整理する活動が行われ調査・研究の結果、1986年に現在のITILの基礎となるガイドラインが出来たのである。 現時点において、ITILを所有しているのはOGC(英国商務省:Office of Government Commerce)であり、TSO(英国出版局:The Stationary Office)が出版を行っている。
ITILは8つの書籍から構成されているが、その中でもITILの中核となるのが「ITサービスマネジメント」である。これは日常運用に関する『サービスサポート』と、投資効果の測定などにより長期的なサービス品質向上に取り組む『サービスデリバリー』の2つから構成されている。「ITサービスマネジメント」では1つの機能(サービスデスク)と10のプロセスが定義されており、狭義のITILとは「ITサービスマネジメント」を指す。
ITILにはEXINとISEBが主催する認定資格が存在する。エントリー資格の「Foundation Certificate in IT Service Management(ITIL Foundation)」と上級資格の「Managers Certificate in IT Service Management(ITIL Service Manager)」などがそれに当たり、「ITIL Foundation」の試験は、アール・プロメトリックなどを通して随時受験が可能である。同試験の出題範囲は、『サービスサポート』と『サービスデリバリー』が大部分を占める。
ITILの導入・促進のための団体としてはitSMF(IT Servive Management Forum)が各国に存在し、日本でも2003年にNTTコム、日立製作所、日本HP、富士通、NEC、P&G、プロシード、マイクロソフトなど8社のICT(Information and Communication Technology)企業により、NPO法人としてitSMF Japanが設立されており、書籍の翻訳やセミナーを通じてITILの普及活動が行われている。
[編集] ITILの主な登場人物、用語
[編集] 登場人物
- 顧客
お金を払う人。
- ユーザ
サービスを使う人。
- プロバイダ
顧客、ユーザにサービスを提供する人。
- サプライヤ
プロバイダに対し、サービス/コンポーネントを提供する人。
[編集] 協議文書
- SLA
顧客とプロバイダとの間で締結するサービスレベルを定義した文書。
- OLA
- UC
[編集] ITサービスマネジメント
[編集] サービスサポート
- サービスデスク
ユーザ(利用者)へ単一窓口を提供する「機能」。
- インシデント管理
発生したインシデントについてクローズするまで責任を持つ「プロセス」。
- 問題管理
問題について分析し、根本原因/ワークアラウンド/ソリューションを究明する「プロセス」。
CMDBの管理を行う「プロセス」。
- 変更管理
変更の実施に責任を持つ「プロセス」。
- リリース管理
変更を実際に実施する「プロセス」。
[編集] サービスデリバリー
- サービスレベル管理
- ITサービス財務管理
- キャパシティ管理
- ITサービス継続性管理
- 可用性管理
[編集] ITILを構成する書籍
- サービスサポート(Service Support)
- 通称「青本」と呼ばれ、IT利用者が適切に利用できるようサポートするためのマネジメントについて説明している。インシデント管理、サービスデスク、リソース管理、構成管理、変更管理などが含まれる。
- サービスデリバリー(Service Delivery)
- 通称「赤本」と呼ばれ、ITをビジネスで利用している利用者のサービス要求に関するマネジメントについて説明している。サービスレベル管理、キャパシティ管理、可用性管理、ITサービス財務管理、ITサービス継続性管理などが含まれる。
- サービスマネジメント導入計画立案(Planning to Inplement Service Management)
- 目標設定から導入後の初期診断と継続的な改善を組み込むための方法論を解説している。
- ビジネスの観点(The Business Perspective)
- ビジネス環境における課題、事業継続性管理、パートナーシップ、アウトソーシング、変化への柔軟な対応、抜本的な改革による商習慣の転換などが含まれる。
- アプリケーション管理(Application Management)
- アプリケーションの実装から廃棄までのライフサイクルに関連する課題について書かれている。
- ICTインフラストラクチャー管理(ICT Infrastructure Management)
- ITインフラの管理について技術的側面から説明しており、ネットワークサービス管理、運用管理、ローカルプロセッサ管理、コンピュータの導入、システム管理などが含まれている。
- セキュリティ管理(Security Management)
- セキュリティへのインパクトに関する評価やデータの安全性・機密性を確実にするための課題について説明している。