IS-LM分析
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IS-LM分析(あいえす えるえむぶんせき)とは、国民所得と利子率を基準にして、財市場と貨幣市場の同時均衡を分析することである。
縦軸に利子率、横軸に国民所得をとり、 IS曲線とLM曲線の交点を求めることになる。この分析は、ケインズの『一般理論』の内容を図示しようとヒックスが考案したもので1937年に発表された。
[編集] IS曲線
IS曲線(あいえすきょくせん)とは、財市場の均衡を達成する国民所得Yと利子率rの組み合わせを関数で表したもの。財市場とはものやサービスを売買する市場である。財市場の総需要=消費+投資、財市場の総供給=消費+貯蓄としたとき、財市場の均衡とは、財市場における需要(投資)と供給(貯蓄)が一致することを指す。
利子率が下がれば相対的に収益性の低い投資の価値が高まるから、投資 が増え、乗数効果により国民所得が増える。このとき貯蓄(所得の関数) が投資 と一致することは財市場の均衡といわれる。従って縦軸に利子率、横軸に国民所得をとれば、主に 右下がりの曲線 になる。仮に経済がIS曲線の左側にあるならば、供給(貯蓄)が利子率によって与えられる需要(投資)との均衡点を下回っており、国民所得が増える。逆も同様であり、経済は水平方向にIS曲線上へ収束する傾向を持つ。
なお投資の利子弾力性が大きいほど、IS曲線の傾きはより水平に近づく。また同一の利子率における投資の増大、あるいは消費、政府支出や純輸出の増大による総需要の増大はIS曲線を右方シフトさせる。
[編集] LM曲線
一方、LM曲線(えるえむきょくせん)は、貨幣市場の均衡を達成する国民所得Yと利子率rの組み合わせを関数で表したもの。貨幣市場は貨幣の供給と貨幣の需要で成立している。貨幣の供給とは経済に流通する貨幣のことである。貨幣供給量は日本銀行がコントロールしている貨幣(ハイパワードマネー)の大きさだけでなく、銀行の信用創造(貸出行動)の活発度にも依存して決定される。一方、貨幣の需要は、ものを買う時に使うための取引需要 (国民所得の増加関数)や、債券保有による損失を防ぐために債券よりも貨幣として保有しようとする投機的需要(資産需要) (利子率の減少関数)などの合計で決まる。貨幣の需給が一致する時が貨幣市場の均衡である。
国民所得が増え、取引に用いられる貨幣の需要(取引需要)が高まると、貨幣供給量一定の下では、相対的に投機的需要(資産需要)を減らすために、債券価格は下落し、利子率は上昇する。従ってIS曲線と同様に縦軸に利子率、横軸に国民所得をとれば、主に 右上がりの曲線 になる。仮に経済がLM曲線の下側にあるならば、貨幣需要過多・債券需要過少となり、債券価格が下落して利子率は上昇する。逆も同様であり、経済は垂直方向にLM曲線上へ収束する傾向を持つ。
なお貨幣需要の利子弾力性が大きいほど、LM曲線の傾きはより水平に近づく。また貨幣供給量の増大は、LM曲線を右方シフトさせる。
以上のプロセスにより経済はこの2者の交点へ収束し、財市場と貨幣市場は同時均衡する。