Li-2 (航空機)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Li-2(リスノフ2;ロシア語:Ли-2リー・ドヴァー)は、ソ連のリスノーフ設計局の開発した航空機。アメリカ合衆国のダグラスDC-3を改設計して軍用輸送機として生産された。第二次世界大戦後、北大西洋条約機構(NATO)は、この航空機に対し「キャブ(Cab)」というNATOコードネームを用いた。この機体はソ連版DC-3といえる機体で1940年から1945年までおよそ2000機が生産されたが、軍用輸送機のほか軽爆撃機として運用されたり、戦後にはソ連および東側諸国で旅客機や輸送機として運用されるなど幅広く活躍した。
目次 |
[編集] 概略
ソ連では、カリーニン設計局やツポレフ設計局による大型旅客機の開発とアエロフロートでの運行がなされていたが、1930年代中ごろにはK-5などの機体では収容力不足となっていた。そこで、新しい旅客機の開発が各設計者に求められた。また、海外からの機体の輸入やそのライセンス生産も検討された。対象は、アメリカ合衆国のDC-2やDC-3であった。
ダグラス社に派遣された経験を持つ技術者ボリース・パーヴロヴィチ・リスノーフが、DC-3を基本にしつつもソ連向けに小改良を加え、寒冷気候に強いソ連製エンジンを搭載した輸送機を設計し、「PS-84」と呼称した。この機体は1942年以降Li-2の名称で軍用輸送機として量産された。また爆弾を1 tまで搭載する軽爆撃機としての運用も行われた。
ソ連は大祖国戦争(第二次世界大戦の独ソ戦)中に、アメリカ合衆国からDC-3の軍用タイプであるC-47を700機供与されており、こちらも軍用輸送機として大きな成果を上げた。中には、Li-2に準じてエンジンを換装するなど改修を施した機体もあった。
[編集] 派生型
ソ連 | |
PS-84 | 最初の生産型。1939年に初飛行。それまでは、「M-62IR搭載型DC-3」と呼ばれていた。なお、「PS-84」とは「пассажирский самолет авиазавода № 84の略で、「第84工場の旅客機」という意味。 |
PS-84-K | パラシュート投下機。 |
PS-84-I | 救急機。 |
Li-2 | 1942年以降の生産型に対する呼称。 |
Li-2VP | 軍に採用されたPS-84の正式名称。ShKAS機銃を搭載し、ハードポイントも装備した。 |
Li-2P | 旅客機。 |
Li-2«サローン» | 高官輸送機。10機程度が製作された。 |
PS-84-T | 1943年に開発された掃海機。 |
Li-2USh | 1949年に開発された操縦訓練機。Il-28の操縦士の訓練などに使用された。 |
Li-2SIP | 測量機。 |
Li-2SKh | 農業・畜産・林業用機。 |
Li-2D | 航続距離の延長のために燃料タンクを増備した派生型。Il-12やIl-14のもととなった。 |
Li-2VV | 爆撃機型。ポーランド語やドイツ語などではLi-2WWと書かれる。 |
Li-2V | 1953年に初飛行した高高度航空機の試作機。アントノフ設計局で開発された。高度8000 mの飛行が可能となった。ポーランド語やドイツ語などではLi-2Wと書かれる。 |
Li-2PL(Li-2PLL) | 森林火災監視機。 |
Li-2PR | 狩猟監視機。Li-2Pから改修された。 |
Li-2RT | テレビ中継機。 |
Li-2F | 空中写真撮影機。派生型にLi-2FGがある。 |
Li-2«メテオ» | 気象実験機。 |
ユーゴスラビア | |
Li-3 | Li-2 のエンジンをDC-3が使用していたプラット・アンド・ホイットニー社製R-1830(ツインワスプ・エンジン)に交換 |
ポーランド | |
Li-2T(sb) | Li-2 |
[編集] スペック
[編集] Li-2VV
- 全幅:28.81 m
- 全長:19.65 m
- 高さ:5.15 m
- 翼面積:91.7 m²
- 機体重量:7650 kg
- 積載重量:11700 kg
- 搭載エンジン:M-62IR ×2
- 最大速度:270 km/h
- 巡航速度:240 km/h
- 着陸速度:108 km/h
- 航続距離:2600 km
- 最大上昇高度:5600 m
カテゴリ: 軍用輸送機 | 旅客機 | 爆撃機 | ソ連・ロシアの航空機 | ウクライナの航空機 | ユーゴスラビアの航空機 | ポーランドの航空機