Mr.インクレディブル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『Mr.インクレディブル』(ミスター・インクレディブル、原題:The Incredibles)は、ディズニー配給、ピクサー製作のフルCGによるアニメーション映画。
ピクサーの長編アニメーション作品としては第6作目になる。評論家から絶賛されながら商業的に失敗した「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バード監督によるアニメ。これ以前のピクサー作品は人形、虫、魚などが主人公であり、この作品ではじめて人間社会を舞台としたストーリーを描いている。技術的には、服や髪の物理的感触を極めて忠実に表現した点が特徴。ストーリーとしては、悪者が本当に殺されてしまうという、それまでのディズニー映画には考えられなかった点がバード監督の主張で受け入れられ、より現実的なストーリーは多くの評論家から絶賛された。「異質分子はサラリーマン社会で苦労する」という中心テーマは、バード監督自身が何度も会社をクビになった体験をもとにしている。また、音楽や雰囲気は(当初ジョン・バリーが参加していた事もあって)1960年代の007時代のレトロ調。興行的にも成功した。当初この作品は3DCG作品ではなくまた制作もワーナー・ブラザーズで行われていたが、ワーナー・ブラザーズのアニメーション部門凍結により制作が頓挫すも、ピクサーに移ったブラッド・バードの下で制作が続けられ公開されている。
アメリカでは2004年11月5日公開。日本では同年12月4日公開。アメリカでの公開にあたってはPG指定を受けている。
2006年3月25日、東京国際アニメフェアで開催された第5回東京アニメアワードで海外劇場部門/優秀賞を受賞した。
目次 |
[編集] ストーリー
かつて世界の平和を守っていた「スーパーヒーロー」達。しかしあることが発端となり世間のスーパーヒーローに対する風当たりが強まり、政府の政策により今から15年前に全ての「スーパーヒーロー」が引退し、世間には正体を隠して生活を始めた。「Mr.インクレディブル」こと、ボブ・パーもその1人だった。彼は保険会社に勤務し、顧客よりも会社の利益にこだわる神経質な上司の元で日々ストレスを溜めていた。彼と同じく超常能力を持つ妻は日常生活に適応していたが、長女はパワーを隠そうとする余り引っ込み思案になり、長男は思い切り走り回ることもできない窮屈な生活にうっぷんが溜まっていた。
そんなある日、たまりにたまったストレスを上司にぶつけてしまったのが原因で会社を解雇されたボブのもとへ謎の美女ミラージュからの伝言が届けられる。「Mr.インクレディブル、あなたのヒーローとしての力が必要です。」と。その誘いにのったボブは、家族に内緒でスーパーヒーロー活動を再開する。彼女の依頼は絶海の孤島にあるとある会社の研究施設から脱走した高い知能を持った高性能戦闘ロボットを捕獲してほしい、というものだった。しかし、その裏には意外な人物による恐るべき陰謀が潜んでいた。
[編集] スタッフ
- 製作総指揮:ジョン・ラセター
- 製作:ジョン・ウォーカー
- 監督:ブラッド・バード
- 音楽:マイケル・ジアッチーノ
- ストーリー監修:マーク・アンドリュース
- キャラクターデザイン:トニー・フュシール、テディ・ニュートン
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] キャラクター:キャスト
- Mr.インクレディブル(Mister Incredible):(声:クレイグ・T・ネルソン)
- 本名、ロバート(ボブ)・パー(Robert(Bob)Parr)。ほとんどの物理的な衝撃に耐える頑強な肉体と驚くべき怪力の持ち主。引退後は冴えないサラリーマンとしてインシュリケア保険会社に勤務していたが、昔の栄光が忘れられずフロゾンと共に時たま警察無線を盗聴して人助けをしていた。その当時はお腹が出ていたが、ミラージュの依頼後、トレーニングによってかつての体型を取り戻す。なお、スーパーヒーローが全員引退したきっかけは、彼が訴訟大国アメリカらしい理由で訴えられたため。
- インクレディブル夫人(Missus Incredible):(声:ホリー・ハンター)
- 本名、ヘレン・パー(Helen Parr)。元イラスティガール(Elastigirl)。伸縮自在の柔軟で強靭な肢体の持ち主。また、風船のように膨らむこともできる。家事全般のほかにジェット機の操縦も得意。引退後の体型が気になるらしい。
- ヴァイオレット(ヴァイ)・パー(Violet(Vi)Parr):(声:サラ・ヴァウエル)
- パー家の長女。自らを透明にするほか、紫色のフォースフィールドでバリアを張ることができる。また、それを応用して宙に浮くことができる。バリアの強度は銃弾やパトロール車・ロボットの攻撃にも耐えるほど。しかし自分の能力がコンプレックスになり自信が持てないでいる。学校にはトニーという気になる男の子がいる。スーパーヒーローとして活躍するうちに髪型も変え、自分に自信を持てるようになった。ちなみに、最終的に却下されたオープニング案では、彼女の赤ん坊時代が描かれている。
- ザ・ダッシュ(The Dash):(声:スペンサー・フォックス)
- 本名、ダッシェル・ロバート・パー(Dashiell Robert Parr)。パー家の長男。ビデオカメラにも捕らえられず、水の上を走れるほどの超スピードで走ることができる。姉のヴァイオレットとは逆に、自分の能力を持て余している。そのせいか少々やんちゃ。
- ジャック=ジャック・パー(Jack-Jack Parr):(声:イーライ・フシール、メイヴ・アンドリュース)
- パー家の次男。赤ん坊ながら未知のスーパーパワーの持ち主だが、それを知らず、スーパーパワーを持て余している他の家族からはスーパーパワーを持たないことを羨ましがられていた。目からレーザーを出したり全身が炎に包まれたり、金属になったり怒ると怪物の様な姿にもなれるパワーをもつ。さらに空中浮遊や壁抜けも出来る。彼の子守を頼まれた少女・カーリがそのパワーを目撃したが、その記憶は消された。
- フロゾン(Frozone):(声:サミュエル・L・ジャクソン)
- 本名、ルシアス・ベスト(Lucius Best)。既婚者。Mr.インクレディブルの古くからの友人。パー家とは家族ぐるみの付き合い。空気中の水分を瞬間的に氷結させることができる。スポーツ全般(特にウィンタースポーツ)の達人。昔冬季五輪にフロゾンで参加しようとして止められた事がある。引退後も時々こっそりとMr.インクレディブルと一緒に人助けをしている。
- エドナ(E)・モード(Edna Mode):(声:ブラッド・バード)
- 世界的なデザイナー。普通の服もデザインするが、最も燃えるのはスーパーヒーロー用の特殊服の製作。しかし、マント付きの服は絶対に作らない。過去に何人ものスーパーヒーローがマントのせいで命を落としたからだ。
- シンドローム(Syndrome):(声:ジェイソン・リー)
- 本名、バディ・パイン(Buddy Pine)。まだ少年だった15年前に「Mr.インクレディブル」の熱狂的なファンだった彼はインクレディボーイ(IncrediBoy)と名乗りMr.インクレディブルを手伝おうとしたが断られ、それが原因で人間不信に陥り特に「スーパーヒーロー」を信用できなくなった。優秀な頭脳の持ち主で少年時代に空を飛べるクツを発明できる程。その才能を駆使して後に多数の兵器を開発し億万長者となる。Mr.インクレディブルを倒すために自ら作った戦闘ロボットのテストのために引退したヒーロー達を騙してロボットと戦わせ、最後にそのロボットを町に放ちそれを自分で倒す事によって自分が唯一の最強のスーパーヒーローになろうと企てたが、劇中でしっかり報いを受けている。男女を問わずヒーローを騙した上多数殺害している面でもディズニー史上最低最悪の敵と言われている。
- ミラージュ(Mirage):(声:エリザベス・ペーニャ)
- 浅黒い肌に銀色の髪、碧の目を持ちシンドロームの秘書を務める美女。素性を偽り引退したはずのMr.インクレディブルをヒーロー稼業に引き戻す。
- ギルバート・ハフ(Gilbert Huph)
- Mr.インクレディブルが勤める保険会社の直属の上司。黒髪・黒髪を生やし眼鏡をかけた小男。顧客の事よりも会社の利益を最優先に考え、そのことに神経質なまでにこだわっており、顧客に様々な抜け道を教えて保険金を支払わせるMr.インクレディブルに苛立っている。会社で説教中に強盗事件を目撃したMr.インクレディブルの言うことを無視した為怒りを買い、首をつかまれ殴り飛ばされて大怪我を負い入院した。これが原因でMr.インクレディブルは会社を辞めた。
- リック・ディッカー(Rick Dicker):(声:バド・ラッキー)
- かつてスーパーヒーロー達が所属していた政府組織・NSA(NATIONAL SUPERS AGENCY)の一員。Mr.インクレディブルの昔馴染みの一人。しかしもっぱらの仕事は記憶消去・損害賠償・Mr.インクレディブル一家の引越しの手配などなど……つまりMr.インクレディブルの起こしたトラブルの後始末である。そのたびに多額の税金が消えて行くことに頭を痛め続けている。しかしMr.インクレディブルが会社をやめたときも、出来る限りの助力をしようとした。さらに、子守を頼まれた少女・カーリがジャック=ジャックのパワーを目撃したと知るや、自ら取調べを行なって彼女の記憶を消した。
- ボム・ボヤージュ(Bomb Voyage)
- 15年前、Mr.インクレディブル達スーパーヒーローが活躍していた頃に暗躍していたフランス語を話す犯罪者。高性能の爆弾を使い金庫破り等を働いており、Mr.インクレディブルとは顔なじみらしい。引退前のMr.インクレディブルがスーパーヒーローとして対峙した最後の悪人。インクレディボーイ(後のシンドローム)に爆弾を仕掛け、Mr.インクレディブルがそれに気を取られている隙に逃げ出したが、その後どうしているかは不明。
[編集] 日本語吹き替え版キャスト
- Mr.インクレディブル=ロバート(ボブ)・パー:三浦友和(予告編では玄田哲章、ゲーム版では古澤徹)
- インクレディブル夫人/イラスティガール=ヘレン・パー:黒木瞳
- ヴァイオレット(ヴァイ)・パー:綾瀬はるか
- ザ・ダッシュ=ダシエル・ロバート・パー:海鋒拓也
- ギルバート・ハフ:小倉智昭
- リック・ディッカー:小林清志
(演出:木村絵里子 翻訳:佐藤惠子 製作:東北新社)
『ファインディング・ニモ』に引き続き、本作の日本語版でも日本各地のテレビ局からアナウンサーが何人も脇役の吹替えに起用されている。
このほか、『もう、しませんから』(少年マガジン連載)の企画で漫画家の西本英雄が出演、いきさつは同コミック1巻に収録されている(ただし権利関係者からの許諾が降りなかったため、作品名等は伏せられている)。YASUも出演を機に吹替え収録の模様を密着取材している。「アンダーマイナー」という役名で高田延彦も出演している。
[編集] 書籍
- 「Mr.インクレディブル」:小説版(アイリーン・トリンブル, 橘高弓枝、偕成社)
- 「Mr.インクレディブル」:ノベライズ(ブラッド・バード, 鈴木玲子、竹書房)
- 「The art of Mr.インクレディブル」(マーク・コッタ・ヴァズ 、徳間書店)
- 「Mr.インクレディブル スクリプトブック」(ぴあ)
- 「Mr.インクレディブル 完全ガイドブック」(フレーベル館)
- 「Mr.インクレディブル スーパーファミリーマガジン」(河出書房新社)
[編集] 関連事項
Mr.インクレディブルやその家族、他のチョイ役のスーパーヒーロー達の元ネタには、DCコミックやマーベル・コミックの多くのスーパーヒーローが用いられている。中でも特に縁が深いと思われるものを下記に挙げる。
- スーパーマン=Mr.インクレディブル
- X-メン
- クイックシルバー=ダッシュ
- アイスマン=フロゾン
- サイクロップス=ゲイザービーム
- ファンタスティック・フォー
- Mr.ファンタスティック=インクレディブル夫人
- インヴィジブル・ウーマン=ヴァイオレット
- ヒューマン・トーチ=ジャック=ジャック・パー
- バットマン=若き日のMr.インクレディブル
- ジョーカー=ボム・ボヤージュ
- アニメ「The IMPOSSIBLES」(邦題:「スーパースリー」)- ゴム人間などが登場