Poser
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Poser(ポーザー)は、アメリカe-frontier社製の3次元コンピュータグラフィックス (3DCG) ソフトウェアの一つ。人体モデルや動物モデルなどのポーズ付けやアニメーション制作に特化した特殊な3DCGソフトウェアである。
比較的安価で、簡単に人物を扱った3DCGを制作できることから、映像制作の現場でもしばしば利用されている。
[編集] 特徴
あらかじめ複数の人体や動物のモデル(フィギュアと呼ばれる)が用意されており、これに適宜ポーズをつけて組み合わせることで静止画や動画を制作する。ポーズがつけられるように、フィギュアにはあらかじめボーン(骨組み)が埋め込まれており、顔の造作や人種的な特徴、表情はモーフィングによって標準のモデルを変形することで表現する。モデルには多数のモーフィングパラメータが埋込まれている。衣服のモデルも複数用意されており、裸体のモデルに衣服や服や髪の毛、プロップ(小道具)を付けて、服装や持ち物を表現する。そのためPoser単体ではモデリングの機能を有しない。
標準のボーンとモデルが提供されたことで、手を含めたポーズや表情・衣服をユーザ間で共通化することができるため、サードパーティやユーザにより多数のデータが作成され、世界的に流通するようになった。標準で装備されているモデルを使用するだけでも、モーフィングさせることで望みの造形の人物を手軽に作りあげることができ、データの差分だけを取り出して簡単に流通させることができるので、多くのユーザが改造モデルを作って配布した。モデルやプロップ、ポーズなどは販売されているものもあるが、ユーザーによって無償で公開されているものも多い。こうしたユーザー達のコミュニティが、特に英語圏において盛んである。
あらかじめ用意されたモデルや小道具のほかに、外部のモデリングソフトで制作したモデルをAlias Wavefront ObJect形式やLightWave形式のフォーマットで読み込んでボーンを埋め込むことにより、ユーザ独自のフィギュアや小道具を作ることができる。
3ds MaxやLightWaveなどにプラグインを組み込んで連携させることも出来る。Shade、Carrara、Vueのように標準でPoserと連携できる3DCGソフトウェアもある。 また、互換ソフトとしてDAZ STUDIOがある。
[編集] 歴史
1995年に発売されたバージョン1では、美術で用いる人体模型をシミュレートすることが目的であったが、バージョンがあがるごとに、モデルが精細化してより人間に近くなった。バージョン3、バージョン4で、衣服や頭髪の着脱、モーフィングによる変形機能、テクスチャマッピングによる質感や透明度、反射などのレンダリング機能の向上が図られた。バージョン4向けに発売された機能追加ソフト「Poser Pro Pack」はバージョン4.2に相当し、Pythonスクリプトの実行機能やモーションブラー、ボーン構築を容易にするためのセットアップ・ルームなどが追加された。
バージョン5では大幅な機能強化が図られ、髪の毛や布地のシミュレーションを行う機能、レイトレーシング、マイクロポリゴンや被写界深度表現、外部から顔写真を入力してモデルの顔に自動的にマッピングする機能が追加された。バージョン6においては、OpenGLへの対応、より自然に見せるためのレンダリング機能の強化(環境閉塞、サブサーフェイス・スキャタリング)、トゥーンレンダリングにおける輪郭線描画の改良などが行われている。
2007年2月発売の最新版・バージョン7では、セリフに合わせてフィギュアの口や唇を動かすリップシンク、レンダリングにおけるマルチコアプロセッサおよびHigh Dynamic Range Images(HDRI) への対応、ほかマルチアンドゥ・リドゥなど操作性の向上が図られている。
開発・発売元は当初はFractal Design社、その後MetaCreations社を経て、Curious Labs社へと移転。2003年にShadeを手がける日本のソフトウエア会社イーフロンティアがCurious Labsの全株式を取得して完全子会社化し、ShadeとPoserとを連携させるための機能拡張を進めている。その過程でCurious Labs社の社名は親会社に合わせてe-frontier社へと変更された。