YAMAHA DXシリーズ
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YAMAHA DXシリーズ(ヤマハ・ディーエックス・シリーズ)はヤマハのFM音源を採用したシンセサイザーの型番・商品名。 デスクトップ・シンセサイザーと名付けられたDX200を除いて、キーボードタイプである。DXシリーズのモジュールはTXシリーズである。
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[編集] 概要
FM音源の特徴である非整数次倍音を活用する事により、きらびやかな音色や金属的な音色、打楽器系の音色など旧来のアナログ音源が苦手とした音色を出せることが特徴であり魅力でもあった。さらにフルデジタル構成の利点として、作成した音色データの保存、再現が簡単に可能。いち早くMIDI端子を装備し容易に他のデジタル楽器と組み合わせることが可能とアナログシンセサイザーからは革命的な進化を遂げ、80年代中頃の音楽シーンをリードした。
金属的なエレピ(電気ピアノ)サウンドなどで80年代のシンセサイザーサウンドを牽引したDXシリーズだが、音色作成が複雑であり、生ピアノのシミュレートが苦手という欠点があった。そのため、生楽器のサウンドを録音して、鍵盤演奏可能にしたPCM音源のシンセサイザーの登場により、そのシェアは段々少なくなっていってしまった。89年に登場したPCM音源とFM音源のハイブリッド可能なSY77の登場により、ヤマハのシンセサイザーはDXシリーズからSYシリーズに移行することとなった。それから10年以上経過した2001年に、LOOP FACTORYシリーズの一機種として、DX200が登場し、DXシリーズに加わるが、従来のモデルとは異なり、キーボードのないモデルとなっている。
[編集] シリーズのモデル
- それまでのアナログシンセサイザーが苦手としていたベルやエレクトリックピアノなどの金属的な音色を出すことができ、16音ポリフォニック(当時の主流は6音程度)。規格が誕生して間もないMIDIに対応しており、DX7・DX7と同時発売の音源部を持たない(当時としては)軽量なショルダーキーボードKX1と繋げた使い方なども提示された。当時としては画期的な仕様でありながら、24万8千円と低価格だったためアマチュアからプロシーンまで一躍ヒットモデルとなった(ちなみに、当時プロシーンで使われていた代表的なキーボードで、シーケンシャル・サーキットのプロフェット5は170万円、ローランドのジュピター8は98万円もした)。また、あまりの大ヒットモデルとなったこととその後のユーザー要望(音色メモリー数を多くしてほしい、液晶表示部にバックライトをつけてほしい、イニシャルタッチの幅を128段階のフルスケールにしてほしい…等)が強かったことからサードパーティ製の改造用キットも数多く発売された。本モデルの成功は、同業の他社メーカーを刺激し、結果としてデジタルシンセサイザーを急激に一般化させた。このことは低価格帯の電子楽器が市場に多く発表されることにつながり、その後の日本のバンドブームの礎となったことを始め、MIDI接続による電子楽器の使い方やパソコンとの応用の一般化、さらには現在にも続く音楽制作のありかたへの重大なトピックであったことも功績に数えられる。
- DX9
- 1983年5月発売。同時発売されたDX7の廉価版。DX7と筐体を同じにした61key鍵盤、16音ポリだったが、オペレータ部を4に減らし、イニシャルタッチも省略されていた。上位機DX7の抜群の低価格さの前には、価格差わずか6万円(価格18万8千円)の廉価版という存在は霞み、DX7ほどの人気は得られなかった。4オペレーターモデルながらエンベロープを6オペレーターモデル同様の方式で設定できたレアモデル。
- DX1
- 1983年12月発売。DX7の音源を2系統装備し、73key木製鍵盤を装備したDX7の上位機種。任意の鍵盤で音色左右にを分割(16音+16音)する「スプリットモード」、2種類の音を重ねる「デュアルモード」(16音x2)を装備。195万円という高額な機種であった。DX7・DX9よりも先行して企画と開発がなされていた。
- DX5
- 1985年発売。DX7の音源(6オペレータ・32アルゴリズム)を2系統にし、鍵盤数を61鍵から76鍵にした上位機種。64ボイスメモリー・64パフォーマンスメモリーを内蔵。機能的には上記のDX1の後継機種と言える。定価は598,000円とDX1の3分の1に抑えられていた。
- DX21
- 1985年発売。DXシリーズ初めての廉価版(当時のアマチュア向けキーボードのプライスゾーンであった13万円台)モデル。オペレータ数4、8音ポリフォニックの61鍵シンセサイザー。任意の鍵盤で音色左右にを分割」(4音+4音)する「スプリットモード」、2種類の音を重ねる「デュアルモード」(4音x2)を装備。プリセット128音色、ユーザ32音色、パフォーマンスメモリー×32。定価133,000円。
- DX27
- 1985年発売。DX21から「スプリットモード」「デュアルモード」を省略したモデル。プリセット192音色、ユーザ24音色。定価98,000円
- DX27S
- 1986年発売。DX27のスピーカー内蔵モデル。定価118,000円
- DX100
- 1985年発売。DX27のミニ鍵盤49keyモデル。乾電池による駆動にも対応していたため、ショルダーキーボードとしての利用者も多くいた。定価69,800円。
- DX7IIFD
- 1986年発売。初代DX7のFM音源を2系統にし、デュアルやスプリットなど演奏可能な機種。61key。ユニゾンでの太い音は定評があり、モジュール版と言われるTX802では出せない音である。定価298,000円と初代DX7と同価格帯(この20万円代中盤の価格は、初代DX7の登場によりプロ・アマ共用シンセのプライスゾーンとなっていた)で発売されたが、音源部の進化と共に、ボディが金属製から樹脂を多く使用した設計に変わり軽量化されていることやMIDI機能の充実、音色毎のファンクション設定のメモリー、バックライトの搭載や表示文字数の増加など液晶表示部の拡張等々、大変な進化をとげている。
- 音色を決定するパラメーターは初代DX7を代表とする6オペレーターFM音源とアッパーコンパチブルとなっている。だが、あくまでシンセサイザーが「楽器」であることから、入力項目としてのパラメーターに互換性があるといっても発音される音が全く同じとは限らず、このことはDX7の後継機種としてのDX7II(その後のSYシリーズなども含み)が単純な代替ではなくそれぞれが共存してゆく結果となった。これは工業製品のカテゴリーが数ある中でも「楽器」独特の事情といえる。
- DX7IID
- 1986年発売。DX7IIFDからフロッピーディスクドライブが省略された廉価版。定価258,000円。
- DX7S
- 1987年6月発売。DX7IIの廉価版。デュアルモードを省略したモデル。定価168,000円。
- DX7 Centennial
- 1987年発売。DX7IIFDの76key版。ヤマハ100周年記念モデル。100台限定発売。スイッチとホイールに金メッキがしてあり、鍵盤は蛍光塗料が施されている。DX1、DX5の直系の後継機種ともいえるレアモデル。
- DX11
- V2の海外仕向け版。TX81Zのキーボードタイプ。
- DX200
- DXシリーズ唯一のモジュール版。2001年発売。PLG150-DX同等の音源部を持つ。6オペレータ、FM音源部16音ポリ。フィルターを持ち、明るさ調整可能。本体のつまみを操作することによって、音色エディット可能。リズムセクションはPCM音源。LOOP FACTORYシリーズの1つである。