イセエビ下目
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イセエビ下目 Palinura | ||||||||||||||
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![]() セミエビの一種 Scyllarides latus |
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分類 | ||||||||||||||
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下位分類 | ||||||||||||||
本文参照 |
イセエビ下目 Palinura は、エビ目(十脚目)・エビ亜目の下位分類群の一つ。センジュエビ、イセエビ、ハコエビ、ウチワエビ、ゾウリエビ、セミエビなど、大型の海生エビ類を含む。
目次 |
[編集] 特徴
全ての種類が海産で、おもに熱帯から亜熱帯にかけて分布する。センジュエビ類やヒメセミエビ類など体長数cmのものもいるが、体長20cmを超えるものが多く、エビとしては大型といえる。
成体に長距離を泳ぐ遊泳力は無く、全て海底を歩行しながら生活する。成体はどれも分厚く頑丈な外骨格をもつ。受精卵は他のエビ亜目と同様にメスが腹脚に抱え、孵化するまで保護する。
孵化する子どもはフィロソーマ幼生(Phyllosoma)と呼ばれ、広葉樹の葉のような体に長い遊泳脚を持つ独特の形態をしている。フィロソーマ幼生はプランクトンとして海中を浮遊するが、遊泳期間は他のエビ目の分類群よりも比較的長く、また数cm程度と浮遊生活を送る幼生としてはかなりの大きさにまで成長し、この時期を活かして分布を広げる。形態や生態が親とはかけ離れているため、19世紀に発見された当初はエビ目の新分類群として記載されたという逸話もある。成長した幼生はそれぞれの生息に適した場所に定着し、稚エビに変態して定着する。
[編集] 分類
センジュエビ上科とイセエビ上科に分けられるが、2上科の間では形態の差異が大きく、別々の下目として分類する説もある。また、下目内での未分類種も存在する。
[編集] センジュエビ上科 Eryonoidea
この上科のみでセンジュエビ下目とし、イセエビ下目と別に扱うこともある。
成体の体長は10cmほど。複眼が小さく、触角も短い。体表の殻は小さな棘や剛毛が密生する。体の殻は堅いが、歩脚は細長くあまり強靭ではない。歩脚は5対のうち前4対が鋏脚で、特に第一歩脚が長い。
深海生で、他の食用種と共に混獲されるが、漁獲量は少なく食用にならない。これまでに世界各地で多くの種類が報告されているが、生態にはまだ謎が多い。
- センジュエビ上科(センジュエビ下目) Eryonoidea De Haan, 1841
- メナシエビ科 Eryonidae De Haan, 1841
- センジュエビ科 Polychelidae Wood-Mason, 1874 - センジュエビなど
[編集] イセエビ上科 Palinuroidea
この上科のみでイセエビ下目とすることもあり、その際のラテン語名は Palinura の他に Achelata Scholtz et Richter, 1995 が用いられる場合がある。なお、Achelata は"A"=「-が無い」、"chelata"=「はさみ」で、「はさみがない」という意味をもつ。
浅海から深海まで多くの種類があり、成体の体長は数cmほどのヒメセミエビ類から50cmを超えるニシキエビまで種類によって異なる。体のみならず、歩脚と第二触角にも外骨格が発達する。第二触角は節が少ない。メスの第五歩脚は卵の世話をするために小さな鋏脚になるが、他の歩脚に鋏はない。
大型種はどれも食用として漁獲され、重要な水産資源となっているものも多い。
- イセエビ上科 Palinuroidea Latreille, 1802
[編集] 未分類 Unassigned
以下の属は上科や科がはっきりしていない。
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[編集] 参考文献
- 保育社「原色日本大型甲殻類図鑑」I 三宅貞祥 ISBN 4-586-30062-0
- 山と渓谷社「ヤマケイポケットガイド16 海辺の生き物」小林安雅 ISBN 4-635-06226-0
- 東京書籍「海の生き物100不思議」東京大学海洋研究所編 ISBN 4-487-79877-9