エビ
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イセエビ Panulirus japonicus |
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分類 | ||||||||||||
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亜目 | ||||||||||||
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学名 | ||||||||||||
Decapoda | ||||||||||||
和名 | ||||||||||||
エビ(蝦、海老) | ||||||||||||
英名 | ||||||||||||
Lobster、Prawn、Shrimp |
エビは、節足動物門・甲殻亜門・エビ綱(軟甲綱)・エビ目(十脚目) Decapoda に属する動物のうち、ヤドカリ下目とカニ下目を除いた分類群の総称である。受精卵を水中に放出するクルマエビ亜目 Dendrobranchiata と、産んだ卵を腹脚に抱えて保護するエビ亜目 Pleocyemata に大きく分けることができ、ヤドカリ下目とカニ下目はエビ亜目の下位分類となる。
日本ではイセエビなどの海底を歩行する大型のエビ類を「海老」または「蛯」、サクラエビなどの海中を泳ぐ小型のエビを「蝦」と表記する。英語における呼称も同様で、イセエビ程度のサイズでLobster、クルマエビ程度でPrawn、小さなエビはShrimpと呼ばれる。
なお、カブトエビ、ホウネンエビ、カイエビ、ヨコエビ、シャコ、オキアミ、カブトガニなどは、名前に「エビ」とついていたり、姿形がエビと類似しているがエビ目ではない。
目次 |
[編集] 概要
体表はキチン質の殻におおわれ、頭胸部と腹部に大きく分けられる。
頭部と胸部は頭胸甲でつながる。複眼の間に額角(がっかく)というとがった角があり、これの形状も種類を判別する手がかりの一つになる。胸部内の歩脚の近くにえらをもち、えら呼吸をおこなう。ヤドカリやカニには成体が陸上生活できる種類がいるが、エビには陸上生活できる種類はいない。
頭胸部には13対26本もの脚があり、前の方から2対の触角、大あご、2対の小あご、3対の顎脚、5対の歩脚へと変化している。触角は周囲の様子を探る器官、大あごと小あごは餌を咀嚼する器官、顎脚は餌を掴んだり小さくちぎったりする器官、歩脚は歩くための器官である。分類群によっては顎脚や歩脚の先に鋏があり、鋏脚(きょうきゃく 鉗脚<かんきゃく>とも)となっている。ザリガニやロブスターなどは鋏脚が特に大きく発達し、敵に対して大きく振りかざして威嚇したり、敵をはさんで撃退することもある。
腹部は節に分かれ、それぞれの節が腹甲におおわれ、下に腹脚をもつ。腹脚は泳ぐ時や卵を抱える時に使う。腹部は消化管を囲むように筋肉が発達し、所謂「尾」「しっぽ」は扇子のような構造であるが、起源は脚と同じで、尾扇と呼ばれる、。敵に襲われたときは腹部を勢いよく下に曲げ、大きく後ろへ飛び退いて逃げる行動をとる。
卵から生まれた子どもは親とはちがう体型をしており、幼生とよばれる。幼生は水中を漂うプランクトン生活を送り、脱皮を繰り返して変態し、小さなエビの姿となる。ただしザリガニ下目やミナミヌマエビなど、卵の中で変態し、小エビに近い状態で生まれてくる分類群もある。
[編集] 食材
ほとんどのエビが食用にされ、大小さまざまなエビが漁獲・消費されている。
エビを使った料理は、刺身、茹でエビ、焼きエビ、佃煮、グラタン、寿司、天ぷら、エビフライ、えび団子、ハトシ、焼売、餃子、チリソース煮、炒め物、鉄板焼きなど多種多様である。スナック菓子としても、煎餅(えびせん、満月)、シュリンプロールなどが作られている。ただし、エビやカニは食物アレルギーを起こしやすく、製品を販売する場合にはエビやカニを原材料で使用している旨を表示することが望ましいとされる。
エビは、豊かな国において大量消費される傾向が強いためエビの集まるところが当代で一番繁栄している国という見方もある。古くは古代ローマがそれにあたり、近代ではイギリス、アメリカ、日本と遷移している。
[編集] 漁業・養殖
漁法としては主に刺し網、徒手採捕、かご・どうを用いた漁法で漁獲する。第一種共同漁業権対象のものと、それ以外のものがある。スジエビ、カワエビなどの内水面に棲息するもので第五種共同漁業権が設定されているものもある。
ウシエビ(ブラックタイガー)などのエビは東南アジアを中心とする海外で大規模に養殖されている。これらの海外養殖では養殖場確保のためにマングローブ林が伐採され、養殖後は汚染された湿地が残されるなど、環境問題も指摘されている。なお、海外のエビ養殖の多くは日本及びアメリカ向け輸出用の生産が大半を占めている。
[編集] 種類
多くの種類があって、河川から深海まであらゆる水環境に生息する。食用や観賞用として人とのかかわりが深い種類も多い。
- 淡水域 - テナガエビ、スジエビ、ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビ、ザリガニ、アメリカザリガニなど
- 浅い海の砂泥底 - テッポウエビ、クルマエビ、ウシエビ(ブラックタイガー)、シバエビ、サルエビ、ホッカイエビ(ホクカイエビ、ホッカイシマエビ)、ロブスター、ウチワエビ、ゾウリエビ、セミエビなど
- 浅い海のサンゴ礁や岩礁 - サラサエビ、カクレエビ、オトヒメエビ、イセエビなど
- 深海 - アカザエビ、サクラエビ、シラエビ、ホッコクアカエビ(アマエビ)など
[編集] 分類
[編集] クルマエビ亜目 Dendrobranchiata
クルマエビ亜目は鰓の形状から根鰓亜目(こんさいあもく)とも呼ばれる。メスは受精卵を腹脚に抱かず、そのまま水中へ放出する。卵は水中を浮遊しながら発生し、幼生期をプランクトンとして生活する。
- クルマエビ上科 Penaeoidea
- サクラエビ上科 Sergestoidea
- ユメエビ科 Luciferidae
- サクラエビ科 Sergastidae - サクラエビ、アキアミなど
[編集] エビ亜目 Pleocyemata
エビ亜目は、メスが受精卵を腹脚に抱え、孵化まで保護することから抱卵亜目(ほうらんあもく)とも呼ばれる。クルマエビ亜目と同じく幼生期をプランクトンとして過ごすが、種類によっては卵の中で幼生期を過ごし孵化する。ヤドカリやカニもエビ亜目に含まれる。
[編集] オトヒメエビ下目 Stenopodidea
- ドウケツエビ科 Spongicolidae
- オトヒメエビ科 Stenopodidae - オトヒメエビ
[編集] コエビ下目 Caridea
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[編集] イセエビ下目 Palinuridea
- Glypheoidea 上科
- Glypheidae 科
- Enoplometopidae 科
- センジュエビ上科 Eryonidea
- センジュエビ科 Polychelidae
- メナシエビ科 Eryonidae
- イセエビ上科 Palinuroidea
[編集] ザリガニ下目 Astacidea
(ザリガニ下目を参照。ザリガニ、アメリカザリガニ、アカザエビ、ロブスターなど)
[編集] ヤドカリ下目(異尾下目) Anomala
(ヤドカリ下目を参照。ヤドカリ、ヤシガニ、タラバガニ、アナジャコなど)
[編集] カニ下目(短尾下目) Brachyura
(カニを参照)