エチゾラム
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エチゾラム(etizolam、商品名:デパスなど)はチエノジアゼピン系マイナートランキライザーに属する抗不安薬兼睡眠薬の一つ。 神経症からくる不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害、うつ病からくる不安・緊張・睡眠障害、統合失調症における睡眠障害、頸椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛からくる不安・緊張・抑うつおよび筋緊張に適応がある。
日本国内では、デパス、アロファルム、エチカーム、エチセダン、エチゾラム、エチゾラン、エチドラール、カプセーフ、グペリース、サイラゼパム、、セデコパン、デゾラム、デムナット、ノンネルブ、パルギン、メディピース、モーズンの商品名で販売される。日本国外では、Depas、Sedekopan等の商品名で販売される。
エチゾラムは多くの後発医薬品が存在するため薬価が安くなるケースもある。
- 化学名:4-(2-Chlorophenyl)-2-ethyl-9-methyl-6H-thieno[3,2-f][1,2,4]triazolo[4,3-a][1,4]diazepine
- 分子式:C17H15ClN4S
- 分子量:342.8
- CAS登録番号:40054-69-1
目次 |
[編集] 種類
- 錠剤:0.5, 1mgの錠剤
- 細粒:1%
[編集] 作用機序
チエノベンゾジアゼピン系抗不安薬は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬と同一の作用機序をもつ。すなわち、GABAA受容体はシナプス後側に存在するCl-で、Cl-イオンチャンネルが開くことで他の興奮性受容体の作用で神経細胞の膜電位が活動電位の閾値に到達させる方向とはCl-イオンが移動することで神経刺激を受けるシナプスに対して抑制的に働く。
GABAA受容体は3種類のサブユニットα、β、γが複数づつ組み合わされて構成され、そのたんぱく質のモチーフは4回膜貫通型の膜たんぱく質型に分類される。そしてGABAA受容体の存在する組織の部位によってサブユニット構成が異なることが知られている。GABAがGABAA受容体に結合することでCl-イオンチャンネルが開くが、ベンゾジアゼピン結合部位はGABA結合部位とは異なりアロステリック的にGABAの作用を増強するように働く。そして、ベンゾジアゼピン類はγサブユニットと関係が深いことが研究により判明している。
GABAA受容体は小脳などにも分布するが、ベンゾジアゼピン類に感受性を持つGABAA受容体が多い、視床下部および大脳辺縁系、特に扁桃核においてチエノベンゾジアゼピン系抗不安薬もGABA作用を増強し神経伝達に対して抑制作用を示すことで、不安・緊張などの情動異常を改善する。それ故、中枢神経の他の部位が関与する機能、例えば高次脳機能等に対しては抑制作用が少ない。
また、ベンゾジアゼピン系抗不安薬と同様に、睡眠導入および筋弛緩作用も併せ持つ。そして、大量では呼吸抑制を引き起こす。
[編集] 薬理
エチゾラムはジアゼパムに比べ、強い力価(重量あたりの薬理作用強度)を持つ。すなわち、薬理実験ではベンゾジアゼピンの5~6倍の作用を示し、1/4程度の量で作用が期待される。
そして作用発現および持続が短時間(6時間以内)であるという特徴を持ち、服用後約3時間(食後30分経口)で最高血中濃度に到達する。
抗不安薬としては他のマイナートランキライザーと大同小異であるが、作用が強い分だけ連用後の退薬症状(いわゆる禁断症状)が出やすい。すなわち、強い作用と後を引かないという特性から不眠の際の睡眠導入剤として利用される場面が多い。また筋弛緩作用も強いため、肩こりなどの症状にも内科などで処方される場合がある。
[編集] 日本での経緯
エチゾラムは旧・吉冨製薬(現・三菱ウェルファーマ)が開発し、商品名デパスとして1983年9月に承認され、1984年3月に発売された。多くのジェネリック医薬品が存在し、今日では海外でもDepas、Sedekopan等の商品名で販売されている(合衆国、カナダでは未認可である)。
- 要指定医薬品
- 処方せん医薬品
- 承認年月日 1983/9/21
- 薬価基準収載日 1984/3/17
[編集] 適用
- 不安・緊張・睡眠障害(神経症、心身症、うつ病、統合失調症、頸椎症,腰痛症,筋収縮性頭痛等)
- 神経症における軽度のうつ・神経衰弱症状、心身症における軽度のうつ
- 頸椎症,腰痛症,筋収縮性頭痛における筋緊張
[編集] 用量
- 神経症、うつ病
- 成人に1日3mgを3回に分けて、経口投与する。
- 心身症、頚椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛
- 成人に1日1.5mgを3回に分けて、経口投与する。
- 睡眠障害
- 成人に1日1~3mgを就寝前に1回、経口投与する。
いずれの場合にも、年齢、症状により適宜増減する。体内に残存しやすい高齢者は1日1.5mgまでとする。
- 同効薬
- クロチアゼパム、ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、クロキサゾラム、ニトラゼパム、エスタゾラム等
これら薬剤とは併用すべきではない。
- 併用注意
- 中枢神経抑制剤 - 両薬剤が相加的に作用を発現する。
- MAO阻害剤 - 同剤は肝臓でのエチゾラム代謝を競争的に阻害する為、作用強度が増大したり持続時間の延長がみられることがある。
- フルボキサミン - 同剤は肝臓でのエチゾラム代謝を競争的に阻害する為、作用強度が増大したり持続時間の延長がみられることがある。
これらの薬剤と併用する場合は、投与量を適宜減量する必要がある。
[編集] 物性
- 融点 146 ~ 149℃
- pH 4.0以下の水溶液中(例えば胃酸中)では徐々に開環体へと変化し、効力を減弱する。したがって、フィルムコート錠として腸溶錠とする場合が多いので、そのような場合は錠剤を割って呑むようなことは避けるべきである。
- 光分解性を有することが知られている。
[編集] 一般的注意
眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車や機器の操作運転は従事しない。
[編集] 使用禁忌
- 急性狭隅角緑内障の患者
- 重症筋無力症の患者
[編集] 慎重投与
- 心障害,肝障害,腎障害のある患者
- 脳に器質的障害のある患者(作用が強く現れる)
- 小児および高齢者
- 中等あるいは重篤な呼吸障害を持つ患者
[編集] 副作用
- 精神神経系副作用
- ときに眠気,ふらつき, めまい,歩行失調,頭痛・頭重,言語障害,また,まれに不眠,感,興奮,焦燥,振戦,眼症状(霧視,調節障害)が現れることがある。
- 統合失調症等の患者で逆に刺激興奮,錯乱等が現れることがある
- 依存性
- 大量連用により、まれに薬物依存を生じることがある。
- また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれにけいれん発作,ときにせん妄, 振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れることがある。
- 肝機能障害
- 黄疸あるいは血清中の酵素指標の上昇など肝機能障害を示すことがある。
また、以下の少数の副作用が報告されている。
- 呼吸抑制,炭酸ガスナルコーシス
- 呼吸抑制が現れることがある。中等あるいは重篤な呼吸障害を持つ患者では炭酸ガスナルコーシスが現れることがある。
- 悪性症候群
- 発熱,強度の筋強剛,嚥下困難,頻脈,血圧の変動,発汗,白血球の増加,血清CK(CPK)の上昇等、悪性症候群の症状があらわれることがある。
- 横紋筋融解症
- 筋肉痛,脱力感,CK(CPK)値上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇など横紋筋融解症が現れることがある。
- 間質性肺炎
- 発熱,咳嗽,呼吸困難,肺音の異常(捻髪音)等、間質性肺炎の症状があらわれることがある。この薬剤に対するアレルギー反応が原因と考えられている。
[編集] 商品名
商品名 | メーカー名 | 型式 | 成分量 | 識別コード | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
デパス (先発品) |
三菱ウェルファーマ | デパス細粒1% | 10mg/g | ||
デパス錠0.5mg | 0.5mg | Y DP/0.5 | 白色、フィルムコート錠 | ||
デパス錠1mg | 1.0mg | Y DP/1 | |||
アロファルム | テイコクメディックス1) | アロファルム錠0.5 | 0.5mg | O.S A0.5 | 白色錠 |
アロファロム錠1.0 | 1.0mg | O.S A1.0 | |||
エチカーム | 東和薬品 | エチカーム錠0.5mg | 0.5mg | Tw.ET0.5 | 白色、フィルムコーティング錠 |
エチカーム錠1mg | 1.0mg | Tw.ET1.0 | |||
エチセダン | 共和薬品工業 | エチセダン錠0.5mg | 1.0mg | KW 091 0.5 | 白色~淡黄白色、フィルムコート錠 |
エチセダン錠1mg | 1.0mg | KW 092 1 | |||
エチゾラム | サンノーバ2) | エチゾラム0.5mg錠「EMEC」 | 0.5mg | EE04 | 白色、口腔内崩壊錠(素錠) |
エチゾラム1.0mg | 1.0mg | ||||
エチゾラン | 小林化工 | エチゾラン錠 | 0.5mg | KN 123 0.5mg | 白色、フィルムコート錠 |
エチドラール | シオノケミカル | エチドラール細粒 | 10mg/g | ||
エチドラール錠0.5mg | 0.5mg | ETD-0.5 | |||
エチドラール錠1mg | 1.0mg | ETD-1 | |||
カプセーフ | 大原薬品工業 | カプセーフ錠0.5mg | 0.5mg | 0.5:OH-51 | 白色、フィルムコート錠 |
カプセーフ錠1mg | 1.0mg | ||||
グペリース | ニプロジェネファ | グペリース錠 | 0.5mg | GP0.5:TP-110 | 白色、フィルムコート錠 |
サイラゼパム | マルコ製薬 | サイラゼパム錠0.5 | 0.5mg | 11R | 白色、フィルムコート錠 |
セデコパン | 長生堂製薬 | セデコパン細粒 | 10mg/g | 白色細粒剤 | |
セデコパン錠0.5mg | 0.5g | chSD | 白色、フィルムコート錠 | ||
セデコパン錠1mg | 1.0mg | chSI | |||
デゾラム | 大正薬品工業 | デゾラム錠0.5mg | 0.5mg | TYK 201 | 白色、フィルムコート錠 |
デゾラム錠1mg | 1.0mg | TYK 202 | |||
デムナット | 鶴原製薬 | デムナット錠0.5mg | 0.5mg | TSU430 | 白色、フィルムコート錠 |
ノンネルブ | 日新製薬 | ノンネルブ錠0.5 | 0.5mg | NS 193 | 白色、フィルムコート錠 |
パルギン | 藤永製薬3) | パルギン錠0.5mg | 0.5mg | PG0.5 | 白色、素錠 |
パルギン錠1mg | 1.0mg | PG1 | |||
メディピース | メディサ新薬4) | メディピース錠0.5 | 0.5mg | SW 037 SW-038 |
白色、フィルムコート錠 |
メディピース錠1 | 1.0mg | ||||
モーズン | 辰巳化学 | モーズン錠0.5mg | 0.5mg | Tu MZ-050 | 白色~微黄色、フィルムコーティング錠 |
- 1)テイコクメディックスと太田製薬とは2005年10月に合併した
- 2)製造 サンノーバ 販売 エルメッド エーザイ
- 3)製造 藤永製薬 販売 三共
- 4)製造 メディサ新薬 販売 旭化成ファーマ
[編集] 外部リンク
- 三菱ウェルファーマ株式会社 - デパス
- テイコクメディックス株式会社 - アロファルム
- 東和薬品株式会社 - エチカーム
- 共和薬品工業株式会社 - エチセダン
- サンノーバ (記事 サンノーバに詳しい) - エチゾラム
- エルメッド エーザイ株式会社 - エチゾラム
- 小林化工株式会社 - エチゾラン
- シオノケミカル株式会社 - エチドラール
- 大原薬品工業株式会社 - カプセーフ
- ニプロジェネファ株式会社 - グペリース
- マルコ製薬株式会社 - サイラゼパム
- 日医工株式会社 - サイラゼパム, デゾラム
- 長生堂製薬株式会社 - セデコパン
- 大正薬品工業株式会社 - デゾラム
- 鶴原製薬株式会社 - デムナット
- 日新製薬株式会社 - ノンネルブ
- 藤永製薬株式会社 - パルギン
- 三共株式会社 - パルギン
- メディサ新薬株式会社 - 沢井製薬 - メディピース
- 旭化成ファーマ株式会社 - メディピース
- 辰巳化学株式会社 - モーズン
[編集] 参照資料
- 医薬品インタビーフォーム デパス錠・細粒
カテゴリ: 睡眠導入剤 | 医学関連のスタブ項目