オンラインセッション
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オンラインセッション (Onlinesession)
- チャットや電子掲示板を利用してオンライン上で行う会議のこと。
- 音声や動画などのマルチメディアファイルを使ってオンライン上で行う講義や講演のこと。
- オーディオをリアルタイムにネットワーク上に載せることで、複数のミュージシャンがオンライン上で共に演奏すること。ネットワークを介してバンドを組んで曲作りができる。
- オンライン上でテーブルトークRPGのプレイ(セッション)を行うこと。本項で詳述する。
オンラインセッションとは、チャットを利用して、オンラインを通じた遠方の相手とテーブルトークRPG(TRPG)を行うという遊び方である。「オンセ」と略されることも多い。
一方、ゲーム参加者が一箇所に集まって顔を会わせてゲームを行う従来のTRPGのゲームスタイルを「オフラインセッション」「オフセ」などと呼ぶ場合もある。
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[編集] 概要
ゲームのプレイ時間の大半が「会話」に費やされるテーブルトークRPGでは、その会話をチャットによる文字のやりとりに変えるだけで比較的容易にゲームを行うことができる。使われるチャットソフトは様々であるが、ダイス機能などを自作しやすいという理由で特にIRCを使ったものが好まれている。
会話以外の部分、特に行為判定でのサイコロ振りなどは文字のやりとりだけでは行えないため、電子ダイス機能をチャットに付加させることで対応することが多い。ダイスチャット機能が初期から搭載されているチャットソフトもあるが、TRPGのオンラインセッション用に専用のダイスチャットのプラグインが多くの有志により開発され、ユーザーに愛用されている。オンラインセッションを企画しているサイトのほとんどは基本的にダイスチャットを無償提供している。
ダンジョン探索や戦闘などでマップによる描写が必要な場合は、描画が共有できるお絵かきチャットや、ゲームのマップ表示に特化した専用のソフトウェアを使用して対応される。しかしこれらの使用はダイス機能の使用などよりも手間がかかるのが現状で、ヘビーゲーマー向きである。
[編集] オンラインセッションの利点
オンラインセッションの最大の利点は、遠方の相手と手軽にゲームができることにある。周囲にゲームができるプレイ環境を持ってないゲーマーにとって、オンラインセンションは大きな福音である。インターネット上にはオンラインセッションを企画しているサイトがいくつも存在し、そこではオンラインセッションに使用するためのソフトウェアやチャットルームの提供サービスや、参加メンバー募集用の掲示板などが設置されている。また、オンラインセッションは参加者の時間さえあえばいつでも開催することができるため、通常のTRPGのオフラインセッションのように、プレイ会場となる場所が使用可能な時間帯に縛られる事がない。夜中であってもプレイできるために、日中が忙しくてTRPGのコンベンションなどにも参加できない社会人にも有用である。
また、文字を使用したTRPGセッションというのは、通常の「口頭の会話で行うセッション」とは全く違う遊び方ができるのも利点になっている。プイレヤーと性別や年齢が違うキャラクターを演じやすくなるため、いわゆるなりきりチャット(プレイバイチャット)の延長でTRPGのプレイが可能になる。実際に、なりきりチャットからTRPGのオンラインセッションを始めたというケースも多く、TRPGへの新規ユーザー層の新しい取り入れ方として注目に値する部分ではあるだろう。
プレイのログを残すことができるというのも利点として挙げられる。オンラインセッションのチャットログはそのままリプレイの形式で楽しむことができる。いわば、プレイするだけでリプレイが自動的に作成されるわけである。プレイの記録がセッションの思い出が形として残ることはゲーマーにとっては大きなモチベーションになる。
[編集] オンラインセッションの欠点
オンラインセッションの欠点として良く語られることはゲームプレイに時間がかかることである。オンラインセッションの進行スピードは参加者のタイピングの速度にそのまま比例するために口頭での会話と同じだけのスピードは見込めない。また、どれだけタイピングを高速に行っても、戦闘シーンなど数値のやりとりが多く発生する状況では速度が著しく遅延化することが多い(ただしこれはゲームのルールにもよる。行為判定における数値のやりとりが単純なものは遅延は少なく、また、ダイスを大量に振るゲームの場合は事前に行為判定用のプログラムを組むことでオフラインでダイスを振るよりも高速にゲームを進行できる場合もある)。
オンラインセッションを愛好するゲーマーの中では「オンセはオフセの3倍の時間がかかる」などとも良く語られる。実際、オフラインセッションでは一日のゲームで十分終わるようなシナリオでも、オンラインセッションでは2,3回に分けてセッションを行わないと終わらないことが多い。オンラインセッションにおいて1回のセッションでシナリオを最後まで終わらせるためには、シナリオそのものを短く、また単純なものにすることが多少なりとも必要である。
また、前述したように、マップやコマなどのゲーム道具を頻繁に使用するTRPGはオンラインセッションでは手間がかかることも欠点として挙げられる。また、ルールブックの参照が頻繁に必要なゲームもオンラインセッションでは手間がかかりやすい。これは、ルールブックを参照するたびにキーボードから手を離さねばならないためである。このような事情のため、現状のオンラインセッションの世界では、道具などはあまり使わずデータやルールも簡易的なゲームの方が好まれる傾向がある。
[編集] チャット以外のオンラインセッション
チャット以外でもTRPGをオンラインで行う方法はいくつかある。
まず、チャットの代わりに電子掲示板を行う方法で、これは「BRPG(BBS RPG)」などとも呼ばれている。一回のセッションの完遂に一ヶ月以上かかることもあり、とても気の長い遊びと言える。これはチャットが普及する前の時代にはそれなりにプレイされていたのだが、掲示板を使ったRPG風味の遊びは現在ではプレイバイウェブや定期更新型オンラインゲームに需要がシフトしおり、TRPGの形式にこだわった掲示板プレイはチャットによるTRPGオンラインセッションに比べると少数派である。
他にもボイスチャットやビデオチャットなどのインターネット電話機能を利用したTRPGプレイがある。この方法は「音声による会話」を直接できることから、通常のテキストでのチャットよりもゲーム進行の高速化が可能なのだが、多人数が同時に会話したときに聞き取りにくいという部分や、参加者全員がある一定上の通信速度を保持していないとならないことなど、技術上の問題から2007年2月現在では大きな普及にはなってない。また、なりきりチャットなどから移行した人の中には、自身の声や顔が晒される形式でのオンラインセッションを嫌う人もいる。
ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズを元にしたMORPGである「ネバーウィンター・ナイツ」では、ネットワークを介して何人かがパーティーを組んで冒険するだけでなく、ゲームマスター(ダンジョンマスター)役としてログインすることもできる。ゲームマスターはパーティーの冒険の舞台として作成されるゲーム世界で起こるイベントに様々な形で介入できる他、自作シナリオの作成(つまり、パーティーがログインする冒険の舞台の作成)も可能であり、これもまたテーブルトークRPGのオンラインセッションの新しい形であるといえる。
[編集] 市場の対応
2007年2月現在、TRPGのオンラインセッションはユーザー側の文化であり、商業的な形では発展していない。商業的にオンラインセッションの場を作るようなTRPGメーカーはほぼ皆無で、TRPGのオンラインセッションに特化したソフトウェアが商業的に発売された実績も(日本では)まだない。オンラインセッションにおけるノウハウのガイダンスなども商業的なメディアではあまり重要視されておらず[1]、インターネット上のサイトでの有志による情報交換の方が主流である。
"TRPG的な遊びをオンラインで行う"ということを考えたときに、プレイバイウェブや定期更新型オンラインゲームを企画した方が商業的需要があるというのもTRPGのオンラインセッションが商業的に発展途上な理由としてあるだろう。
ただし、オンラインセッションを意識したゲームシステム作りというのも近年になって現れてきている。2004年に発表された『Aの魔法陣』がその代表であり、このゲームは発表された直後から製作サイドがオンラインセッションによるプレイングを推奨し、実施している。
[編集] 外部リンク
- TRPGのオンラインセッションに特化したチャットソフト。無料ダウンロード可能。ヘクスマップ/スクエアマップを共有できる機能が特徴
- TRPGのオンラインセッションに特化したチャットソフト。無料ダウンロード可能。マップ共有、トランプのドローなど多機能
- TRPGの支援ツールを開発している海外サイト。高機能なオンライン用のマップ共有ツールScreenMonkeyのLite版が無料ダウンロード可能
[編集] 註
- ^ 皆無というわけではない。RPGamer誌や季刊R・P・G誌では、小太刀右京によりオンラインセッションに関するノウハウの記事がかなり実践的な形で連載されている(2007年2月現在)。過去にはゲーマーズ・フィールド誌がオンラインセッションの特集を行ったこともあった(2001年4月発売の5th season Vol.4)