クスダマカビ
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 (Cunninghamella echinulata) |
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クスダマカビというのは、接合菌類に属するカビのひとつである。単胞子の小胞子のうを多数つける。
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[編集] 特徴
クスダマカビ(Cunninghamella)というのは、接合菌門接合菌綱ケカビ目に属するカビである。ごく普通の腐性菌で、土壌や糞などの有機物から分離される。もっとも普通のものは、C. echinulataである。以下の説明はこのカビについてのものである。
菌糸体はケカビ等によく似た、多核体の太い菌糸からなり、所々から細い仮根状の菌糸を出す。菌糸は基質中を伸び、あちこちから気中菌糸が伸びる。寒天培地では成長が早く、よく繁茂する。最後にはシャーレの内部を菌糸で満たすまでになる。
[編集] 無性生殖
無性生殖は分生子状の無性胞子である。立ち上がるか、斜めに伸びる気中菌糸の先端が膨らみ、頂のうとなると、その表面に多数の分生子のような構造が出芽状に生じる。これは成熟すると、表面に多数の短い刺状の突起を密生し、その基部で頂のうから離れて散布される。胞子はほぼ球形かやや楕円形で、その径は10μ前後。この胞子は適した基質の上に落ちると、発芽して菌糸を生じ、新たなコロニーを作る。
先端に頂のうを生じた菌糸は、その下の部分の側面にやや小型の頂のうを生じることが多い。二次的に生じる頂のうは、数個が束になって生じ、一次頂のうの下に数段に別れて出現することが多い。
また、より古くなった気中菌糸の側面から、不規則に小さな頂のうを出すこともある。
[編集] 有性生殖
有性生殖は、ケカビ目に普通な、配偶子のうの接合によって接合胞子のうを生じるというものである。その形はほとんどケカビのものと変わらない。ただし自家不和合性なので、好適な株同士が接触した時のみに作られるので、観察できることは少ない。適合する菌糸同士が接近すると、その両者から気中菌糸より太い太い配偶子のう柄を生じ、それらが接合すると、両者の先端部から接合子のうができる。接合子のうは丈夫で、その表面は凹凸があって、赤茶色っぽい色をしている。
[編集] 無性胞子の素性
この菌の無性胞子は、古くは分生子と称していた。しかし、菌糸体の形態や特徴から、接合菌であると考えられてきた。当初は特に疑問にはならなかったが、やがて接合菌の形成する分生子と言われるものに疑問が持たれるようになった。そして検討の結果、キクセラ目のものについては単胞子性の分節胞子のうであると判断された。コウガイケカビ類の場合も、単胞子性の小胞子のうであると考えられるようになった。
このようにして、次第に接合菌の無性胞子は胞子のう胞子かそれに由来するものであって、真の分生子を作らず、分生子に見えるものも、本当は例えば単胞子の小胞子のうのようなものであるとの認識が持たれるようになった。
しかし、コウガイけカビなどでは小胞子のうの内側に胞子のう胞子が透けて見えるような場合もあるが、クスダマカビの場合、見かけ上の胞子がそのような構造を持っているという証拠は全くない。電子顕微鏡による断面の観察からも、胞子のう壁と胞子壁を区別するのは難しい。
[編集] 人間とのかかわり
ごく普通種ではあるが、人間とかかわる機会はほとんどない。まれに、人の真菌症の病原体として分離されることがある。しかし、積極的に感染するようなものとは考えられていない。なお、病原体として分離されるものはC. bertholletiaeと同定されている。
[編集] 分類
ケカビ目に含まれ、クスダマカビ科として独立させる例が多い。他に頂のうの表面に分生子様の胞子を形成する接合菌はここに所属させられたことがある。しかしそのほとんどは類縁を否定され、別のグループに移動させられた。例えば細長い頂のうの表面に一面に胞子をつけるガマノホカビ属(Mycotypha)は、小胞子のうの構造が明確であること、胞子に大小二形があることなどが判明し、エダケカビ科、あるいは独自のガマノホカビ科に移された。他にトムライカビ(Rhopalomyces)、Thamnocephalisなどもここに置かれたことがある。これらは現在ではトリモチカビ目に移された。古くはコウガイケカビもここに置かれたことがある。Hesseltinellaは今もこの科に置かれることがある。これは、枝分かれした柄の先端にそれぞれ小さな頂のうを生じ、そこに表面が刺で覆われた一個の単胞子性の小胞子のうをつけるもので、北アメリカで一度採集されたのみという珍しいものである。
クスダマカビ属のものは、菌糸体の構造や接合胞子のうの構造などは、原始的なものと見なされているケカビなどにごく似ているが、無性胞子の構造には非常に特殊化した部分があり、その類縁関係にはさまざまな説がある。
属内の分類に関しては、非常に変異の幅が広く、胞子の刺、頂のうの配置、頂のうの上の胞子の配置等、さまざまなものがある。そのため数十種の記載された種があり、別属として記載されたものもあるが、ほとんどは同物異名であると考えられている。しかし、実際には何種あるかに関しては、四種しか認めないものから十数種を認める立場までさまざまな説がある。
日本ではC. echinulataと、C. elegansの二種が普通である。C. elegansは、C. echinulataに比べてやや小型で、胞子の表面の刺が不明瞭である。ただし、C. echinulataの変種とする説もある。他に、C.homothalicaが日本からは知られている。この種は、この属で唯一の自家和合性の種である。
