グローエンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
グローエンジンとは、圧縮と燃焼室にあるグロープラグにより燃料の着火を行う内燃機関の一種。焼玉エンジンとも言われる。1890年にイギリスのハーバート・アクロイド・スチュアートが考案した。
石油系燃料を使用する点は他の多くの内燃機関と同じであるが、ガソリンエンジンのごとき複雑な点火機構を持たない。
始動時、初期のものはヘッド部分の「焼玉」をバーナーで加熱することで、また改良が進んだ後にはヘッドのグロープラグに電気を通し加熱することで、初爆を起こし、以降は焼玉またはプラグが燃料の爆発により熱を維持することで繰り返しての点火を継続する構造であった。2サイクル機関と4サイクル機関のいずれも存在する。
構造が単純で、高度な部品精度も要求されないため、世界各国で簡易なエンジンとして普及した。日本でも中小メーカーで1910年代以降広く製造された。この種のエンジンは小型漁船に多く搭載され、リズミカルな独特の爆音を立てて航行することから「ポンポン船」と呼ばれた。
しかし圧縮比が低いために熱効率が著しく悪く、燃費が悪いことや、出力の割に容積が大きく、高回転・高出力も得にくいことから、軽量な小型ガソリンエンジンや経済性に優れた高速ディーゼルエンジンの発達に伴って、1950年代以降、産業用や民生用の一般的動力としては世界的に廃れた。現在は、模型用としてのみ多用されている。