シャトル輸送機
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シャトル輸送機(しゃとるゆそうき、Shuttle Carrier Aircraft:SCA)とは、スペースシャトルのオービタと呼ばれる本体部分を輸送するためにNASAが改造したボーイング747。747-100と747-100SRを改造した2機があり、主にスペースシャトルの着陸地点からケネディ宇宙センターに輸送するのに使われている。また、長距離を輸送する場合も輸送機を使う。 オービタを輸送するため、シャトル輸送機に固定するときはMate-Demate Devicesと呼ばれる整備点検用の大きなガントリーのような機械でシャトル輸送機に固定する。
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[編集] N905NA
最初に運用開始したN905NA輸送機はもともと1970年にアメリカン航空のために製造されたボーイング747-123型機(N9668)で、1970年代にスペースシャトル実験機エンタープライズの滑空実験で飛行したときはさすがに垂直尾翼のアメリカン航空のマークと胴体の社名は消されていたものの、それ以外はアメリカン航空の塗装のまま、ベアメタルだった。機体は1974年に取得されたが、当初はNASAドライデン研究所で、境界層の研究の一環として渦流の研究に使われていた。また、同時にNASA所有のF-104と編隊を組み、スペースシャトル・オービタの空中分離の研究を行った。
1976年には機体が改造され、キャビンの内装や乗客用の座席を軽量化のために取り除き、オービタを載せるため支柱を取り付け、胴体の補強もした。また、オービタ輸送中の安定性を確保するために水平尾翼端に垂直安定板が取り付けられた。エンジンも換装され、ボーイング747の試験飛行時と同様の脱出システムも取り付けられた。
オービタ輸送時にはオービタ自体の重さと空気抵抗のため燃費は悪化し、何も載せないときの5,500海里(10,000km)に比べてオービタ輸送時の飛行距離は1,000海里(1,900km)程度になるため大陸横断時には何回か給油する必要が出てきた。シャトルを搭載した場合の燃費は0.023マイル/ガロン(0.37km/ガロン)で通常時の約1.5倍になる。また、飛行の準備には1週間あたり約170人の作業員が必要となり、大陸横断時には1回あたり約23万ドル(約2500万円)が必要になる。そのため、かつてはシャトル輸送機にアメリカ空軍で使われているのと同様の空中給油機構を取り付けて実験を行ったが、空中給油の実験中にN905NAの垂直尾翼に亀裂が見つかり、これが空中給油の実験によるものである可能性は低かったが、早急に空中給油能力を整備する必要はなかったために実験は中止となった。
[編集] N911NA
1986年のチャレンジャーの事故後、NASAは日本航空から中古の747-SR46を調達した。この機体は元JA8117号機(1973年-1988年)で、747SRの1号機でもあった。N911NAとして新しく登録されるとN905NAと同様の改造を施され、1990年にNASAで運用を開始した。このN911NAが最初に使われたのは、1991年に新しく製造されたエンデバーをカリフォルニアのパームデールにある工場からケネディ宇宙センターに輸送するためだった。この2つの輸送機は機能面ではほぼ同じであるが、N911NAはアッパーデッキの窓が5つでN905NAは2つしかないなどの違いがある。