スナフキン
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スナフキン(スウェーデン語Snus mumrik スヌス ムムリク、フィンランド語Nuuskamuikkunenヌースカムイックネン、英語Snufkin)は、フィンランドの児童文学作家トーベ・ヤンソンの小説の主人公・ムーミン・トロールの親友。読者の中にはヒトだと思っている人も多いようだが、ヒトではなく妖精に似た生き物。
スナフキンは英語名の転用で、原作のスウェーデン語ではスヌス・ムムリク(嗅ぎタバコを吸う男の意味)という名で登場する。ムムリクは種族名である。
なおムーミンの登場人物名はスノーク、ヘムレン(ヘムル族)、ミムラ、フィリフヨンカなど、実は個人名でなく種族名であることが多い。
父親はムーミンパパの友人ヨクサル・ムムリク、母親はミムラ族のミムラ夫人で、スナフキンはミムラ姉さんとミイの異父弟にあたる。ミイよりも年上に見えるが、「ムーミンパパの思い出」では、ミイが産まれたという記述はあるが、その時点でまだスナフキンが産まれたという記述は無いため、異父弟だと思われる。
自由と孤独、音楽を愛する旅人。物事を所有することを嫌う。冬の来る前に南へ旅立ち、春の訪れとともにムーミン谷に戻ってくる。アニメーション版では理知的で静かな大人という雰囲気のキャラクターであるが、これは子供らしさを残す主人公のムーミンに対して、その人生観や世界観によって影響を与えていく、いわば「導き手」として焦点化されたストーリー上の役割や、スナフキンを演じた声優・西本裕行(初期のアニメ作品)および子安武人(楽しいムーミン一家)の演技によるところが大きい。
彼の自由気ままな生き方は、原作読者・アニメ視聴者の子供たちはもとより、日々の生活に疲れた大人たちの郷愁・憧れも誘い、「スナフキン的な生き方」は理想の生活、スローライフの代名詞としてもしばしば用いられる。文芸誌『ダ・ヴィンチ』の2005年12月号では、巻頭数十ページにわたってスナフキン一人の特集が組まれるなど、その人気は未だに根強い。
なお、初期のアニメ作品(1969年版・1972年版)ではアコースティック・ギターを弾き歌も歌うが、原作と1990年放送のアニメ「楽しいムーミン一家」ではハーモニカを吹き、歌わない。
[編集] 原作・コミック・アニメにおけるスナフキンの性格の違い
日本のアニメによるスナフキンの性格と、ヤンソンの小説によるスナフキンの性格は多少異なる。原作のスナフキンは理知的ではあるが孤独を好み、どちらかといえば人づきあいが苦手な人物として描かれている。立て札や看板が嫌いで、公園の「芝生に入るべからず」のような立て札を見ると怒って大声でどなり散らしたり、抜き捨てるといったようなヒステリックな一面もある。スナフキンが心を許しているのはムーミンなどごく一部の人々にすぎず、『ムーミン谷の十一月』ではヘムレンさんなどの他人に対してひどく無愛想である。しかし『ムーミン谷の夏まつり』では、やむを得ず引きとることになった何人もの孤児たちを世話するという奮闘ぶりを演じた。
『ムーミン・コミックス』シリーズに出てくるスナフキンは原作よりもやや外向的である。しかし自分の嫌いな人々がムーミンの家にやってくるとスナフキンはこそこそ逃げだしてしまう。