スリーピース・スーツ
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スリーピース・スーツ(Three Piece Suit)は、スーツの種類。その名称の通り、上着(背広)、ベスト、ズボンの三つのセットから成る。日本では明治時代以降に伝わった。現在でも『三つ揃え』スーツとして呼ばれる。
[編集] 概要
現在あらゆる国で着用されるスーツの正統派。
元々、スーツといえばこのスリーピースを指した。今現在、殆どのスーツはベストがセットされていないツーピースであるが、元来スーツというものはイギリスで生まれ、紳士の礼服とされた。イギリスからアメリカへの移民もイギリスの風習を色濃く受け継ぎ、礼装時にはスーツを着用した。その際もいずれのスーツもスリーピース仕立てだった。
[編集] 仕様・着方
ワイシャツなどを着た後、ウェストコートを着用し、その上から上着を羽織る。スーツとウェストコートは基本的に同じ生地のものでなければならない。趣向によってあえて別の柄を着る事もあるが、同じ仕立てのものでなければならない。
ボタンは全部しっかり止めなければならず、外して着るのはマナー違反。
イギリスではスーツを着る際、ハット(帽子)も被るのが当然であり、外ではマントも着用しなければならない。正装時はステッキを片手で持つ。これは現代の日本ではあまり一般的ではない。日本ではハットやマントは着けないが、冬季は防寒のためマントの代わりに上から外套(オーバーコート)を着る事が多い。
長年スーツというものに接したことのなかった日本人が明治以降初めて洋装を着始め、スーツを着用するようになった頃は、このスリーピーススーツしかなかった。
今でこそスーツには様々なタイプがあるが、元々スーツはベストを含めて一式であり、ベスト等を廃したシングルやダブルは伝統的なものではない。イギリスにあっては、スーツに加えハット、マント、ステッキを揃えるのが正統とされ、 現代の日本で一般に着られているようなスーツとは大きく違う。
日本にスーツが伝わった当初は、スーツの普及も少なく、スーツを着ていた日本人はイギリスにおいてのスーツの礼式をしっかりと守った着方をするのが一般的であった。
今現在でもスーツは基本的に欧米の文化を色濃く受け継いでいるので、「日本風のスーツ」という概念は存在しないが、日本人の着こなし、ライフスタイルに合わせた形のスーツは多くの日本人デザイナーや服飾店によって開発・販売されている。
日本では、スーツは明治初期は一部の階級の者(皇族、華族、高名な学者、政治家、政府関係者)くらいしか着る事がなかったが、昭和期以降、ホワイトカラーに従事する労働者などにも広がり、一般化したが、第二次世界大戦頃まではスリーピーススーツが一般的だった。
その後、これらスリーピーススーツを簡略化したダブルやシングルスーツ、マオカラー(立襟)のスーツなどがアメリカやイタリアで開発され、日本にも伝わり、普及した。
シングルやダブルは今現在、むしろ主流とも呼べるスーツであるが、これは誰でも簡単に着られるように作られた簡略化スーツとも言え、正統派のスリーピーススーツに伴う礼式は継承されていない。
スーツの選択肢の一部としてスリーピース・スーツが選ばれることもあるが、マント、ステッキ、ハットなどを含めることは、一般にはない。