ツチアケビ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ツチアケビ | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | ||||||||||||||
|
ツチアケビとは、ラン科植物のひとつで、大型の腐生植物(菌従属栄養植物)である。日本固有種。
目次 |
[編集] 外見
ツチアケビ (Galeola septentrionalis Reichb. fil) は、森林内に生育するラン科植物である。ラン科植物として、また腐生植物としては非常に丈が高く、しかも大きな真っ赤な果実がつくので、大変人目を引く植物である。
地上に葉などはなく、地面から伸び出す花茎は高さが1mにも達し、しかも当初は鮮やかな黄色である。秋になるとその上部に果実ができるが、熟すると長さが10cmにもなり、しかも茎を含めて全体が真っ赤になる。まとまって発生することがよくあり、薄暗い林内で遭遇すると非常に印象深い。
名前は地面から生じるアケビの意であろうが、果実は熟しても裂開せず、形状以外はさほど似ていない。果実にはかなりの糖分が含まれ、動物が摂食して種子散布している可能性もある。人間にもかすかな甘味は感じられるが、タンニンが多量に含まれ、化学薬品のような強烈な異臭と苦味もあり、食用にはならない。時に民間薬、あるいは薬用酒の材料にもされるが、薬用効果についての正式な報告はほとんどない。採集すると、時間の経過とともに真っ黒になる。種子はラン科としては比較的大きく、肉眼で楽に形状がわかる。
[編集] 特徴
光合成を行う葉を持たず、養分のすべてを共生菌に依存している。ナラタケとラン菌根を形成し、栄養的には寄生している。地下には太い地下茎があって、長く横に這う。地下茎には鱗片の形で葉が着いている。
初夏に花茎を地上に伸ばす。花茎は高さが50-100cmに達し、全体が黄色で、鱗片葉はほとんどみられない。あちこちに枝を出して複総状花序となり、枝の先端にランの花を咲かせる。花は差し渡し3cm近くになりかなり大型。全体にクリーム色で肉厚である。
果実は秋に成熟する。果実は楕円形・多肉質で熟するにつれて重く垂れ下がり、多数のウインナーソーセージをぶら下げたような姿になる。果実は肉質の液果である。その点でバニラなどと共通しており、これらはやや近縁とも言われる。
腐生ラン類には環境に非常にうるさいものもあるが、この種は比較的どこにでも出現し、スギやヒノキの人工林等でも見かけることがある。ただし、森林内には限るようである。
[編集] 分類
ツチアケビ属は東南アジアを中心に約20種があり、いずれも腐生植物で、つる植物になるのものも多い。日本では、この種のほかに、タカツルラン(ツルツチアケビ G. altissima (Blume) Reichb. fil.)が屋久島以南に知られる。つる性で高さは5mにも達する。日本最大のランである。
[編集] 参考文献
- 小川真 『きのこの自然誌』 築地書館 1983年