テトロドトキシン
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テトロドトキシン (tetrodotoxin, TTX) は化学式 C11H17N3O8 で表され、ビブリオ属やシュードモナス属などの一部の真正細菌によって生産される化合物である。一般にフグの毒として知られ、他にアカハライモリ、ツムギハゼ、ヒョウモンダコ、スベスベマンジュウガニ、トゲモミジガイもこの毒をもっている。習慣性がないので鎮痛剤として医療に用いられる。1994年に岸義人氏が全合成に成功。分子量319.27、CAS登録番号4368-28-9。
[編集] 毒性
- マウス経口 LD50 0.01 mg/kg
- マウス皮下 LD50 0.008.5 mg/kg
テトロドトキシンは300℃以上に加熱しても、分解されないので注意が必要である。ヒトの経口摂取による致死量は2–3mgで、経口摂取では青酸カリの850倍の毒性を持つ。
テトロドトキシンは神経細胞や筋線維の細胞膜に存在する電位依存性ナトリウムチャネルを抑制することで、活動電位の発生と伝導を抑制する。そのため、フグ毒の摂取による主な症状は麻痺である。麻痺は急速に進行し24時間以内に死亡する場合が多い。
最初は舌や唇がしびれ、指先のしびれに繋がる。頭痛・腹痛・嘔吐などを起こし、歩行や発声が困難になる。重度の場合、血圧の低下などが起き、呼吸困難・意識障害になり死亡に至る。まれに仮死状態に陥ることがある。
通常は、摂取後数十分から数時間で症状が現れる。最も有効な処置は、毒を口から吐き出させることで、次に人工呼吸などを行う。これは呼吸系の障害が起きるためである。2007年現在、解毒方法は見つかっていない。ただし、処置さえ間違わなければ救命率は高いといわれる。
[編集] フグの毒
基本的にはフグ自身は、テトロドトキシンで中毒死することはない。これは作用点となるイオンチャンネルの形が他の動物と違うためである。しかし、普通の魚の致死量の約1000倍で、中毒死する。
フグなどは、テトロドトキシンを自ら生産するのではなく、プランクトンなどから得て生物濃縮により、致死に至る量を蓄えることが分かっている。そのため、養殖などでエサを制御すればテトロドトキシンのない個体を得ることができる。