ヒョウモンダコ
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?ヒョウモンダコ属 Hapalochlaena | ||||||||||||||||
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オオマルモンダコ |
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分類 | ||||||||||||||||
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種 | ||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||
ヒョウモンダコ | ||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||
Blue-ringed octopus |
ヒョウモンダコ(豹紋蛸)は、マダコ亜目 マダコ科 ヒョウモンダコ属に属する4種類のタコの総称。日本ではその中の一種Hapalochlaena fasciata を指す場合が多い。小型だが唾液に猛毒のテトロドトキシンを含むことで知られ、危険なタコとされる。
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[編集] 特徴
体長は10cmほどの小型のタコである。他のタコと同様に体色をすばやく変化させることができ、周囲の岩や海藻にカモフラージュするが、刺激を受けると青い輪や線の模様のある明るい黄色に変化する。この模様がヒョウ柄を思わせることからこの和名がついた。
日本からオーストラリアにかけての西太平洋熱帯域・亜熱帯域に分布し、浅い海の岩礁、サンゴ礁、砂礫底に生息する。
他のタコ同様に肉食性で、カニやエビを捕食するが、捕まえられるならば魚類も食べる。なお、野生では観察されたことはないが、実験室では共食いする。人間でさえ、触られたり近づかれたりした場合は噛み付くことがある。
オスとメスが出会うと、オスはメスの外套膜をつかみ、精子嚢を渡すための交接腕を外套膜腔に何度も挿入する。交尾はメスの中に十分に精子嚢が入るまで続く。秋の終わりごろメスは一生に一度だけ50個程の卵を産む。卵が生まれるとすぐにメスは触手で抱える。この状態が6ヶ月間続き、この間メスは食料を取らず、卵が孵化するとメスは死ぬ。幼生は次の年には成長し交尾ができるようになる。
[編集] 毒性
タコが獲物を捕食する時には、8本の腕で獲物を絡めとり、噛みついて毒性のある唾液を注入し、獲物を麻痺させる。ヒョウモンダコの唾液には強力な神経毒であるテトロドトキシンが含まれ、人間でも噛まれると危険である。なお、この毒は、文献によっては「ハパロドトキシン」という記載もある。
ヒョウモンダコは身の危険を感じるとこの唾液を吐いたり、または痛みなしに噛み付いて注入する。フグと同じ毒のテトロドトキシンは解毒剤がなく、呼吸困難に繋がる麻痺を引き起こし、酸素不足から心停止に至る。応急処置は傷口を押さえ、心臓マッサージを行う。病院での治療は毒が体から排出されるまで酸素マスクをつける。症状が悪化すると、特に子供は体が小さいために非常に危険である。一般的には噛まれてから24時間が経過すれば回復に向かう。ただし、種によっては噛まれたときにテトロドトキシンによる麻痺症状ではなく難治性の皮膚潰瘍のみが生じることが知られている。 以前にヒョウモンダコに噛まれた男性が救急搬送されたが救急車の中で死亡した。
このような毒をもっているためか、ヒョウモンダコの吸盤は小さくて弱々しく、「スミ」を蓄える墨汁嚢も退化している。噛みつきさえすれば獲物は逃げられないし、スミを吐き散らしながら敵から逃げる必要もないためと考えられている。
[編集] 分類
- ヒョウモンダコ Hapalochlaena fasciata Blue-lined Octopus
- オオマルモンダコ Hapalochlaena lunulata Greater Blue-ringed Octopus
- Hapalochlaena maculosa Lesser Blue-ringed Octopus or Southern Blue-ringed Octopus
- Hapalochlaena nierstraszi - 1938年にベンガル湾から一匹のみ捕獲されたが、この種の存在は疑問視されている。
[編集] 関連項目
- 映画007シリーズの「007 オクトパシー」で、女海賊と女密輸業者の古い秘密指令の印である。
- アメリカのテレビ番組"Profiler"の一話に武器として使われた。種名はHapalochlaena maculataと言及されていたが、2種が混同されている。
- マイケル・クライトンの小説"State of Fear"でも武器として使用された。