トヨタ・GT-One TS020
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トヨタGT-One | |
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1998年仕様 | |
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1999年仕様 | |
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製造期間 | 1998年-1999年 |
エンジン | V8ツインターボ 3600cc 600ps以上 |
駆動方式 | MR |
全長 | 4840mm |
全幅 | 2000mm |
全高 | 1125mm |
ホイールベース | 2,800mm |
車両重量 | 900kg以上 |
乗車定員 | 1名 |
トレッド前 | 1600mm |
トレッド後 | 1644mm |
同クラスの車種 | 日産・R390など |
トヨタGT-One(通称TS020)は、トヨタ自動車のレース子会社であるトヨタ・チーム・ヨーロッパ(TTE)が1998年に当時のGT1規定に沿って開発したレーシングカー。建前上はグランドツーリングカーとなっているが、実態はプロトタイプレーシングカーである(99年はプロトタイプとしてエントリー)。TS010の流れを汲むレーシングスポーツカーとして、TS020とも呼ばれる。
目次 |
[編集] マシン
設計はプジョー・905等を設計したアンドレ・デ・コルタンツ。ダラーラが製作に関わったモノコックは屋根まで剛性を持たせた完全一体型で、後方にエンジンをストレスメンバーとして剛結。ボディはグランド・エフェクトを最大限に利用した複雑なデザインで、GTとしては画期的だった。足回りは前後ともプッシュロッド型ダブルウィッシュボーンを採用し、フォーミュラカーの様な長いアームを持つ。横置きシーケンシャル6速の自社製ミッションを使用し、独メガライン社製空気圧作動式パドルシフトシステムを採用した。しかし徹底的に性能を追求した為に居住性や整備性は劣悪だったという。
98年はGT1規定でエントリーしたためにEU法規に合致させたロードバージョン(市販車)も1台製作されたが、その外見はレーシングカーそのものであり、とても公道を走るための市販車には見えない姿で話題を呼んだ。ただし、このモデルが実際に市販されることはなかった。
エンジンはグループC用のR36Vを改良したR36V-Rを使用。R36V-Rには新たにフレッシュエアシステム(ミスファイアリングシステム)が採用されたが、98年はそれが原因で燃費に苦しんだ。また、99年型はリストリクターの取り付け方法変更が認められた為出力が30ps程向上している。
[編集] 成績
1998年のル・マン24時間レースにはGT1クラスで参戦し、際立った速さを見せたが懸念されていたミッショントラブルが多発、ミッション交換でその場をしのぎティエリー・ブーツェンらのドライブするマシンがラスト1時間までトップを走る活躍を見せるが、またもミッションを壊しコース上でストップ、あえなくリタイヤ。最終的には片山右京・鈴木利男・土屋圭市組が総合9位に食い込むに留まった。
1999年にはLMGTPクラスで参戦、1インチ小さくなったタイヤと燃料タンク容量が10リッター削減された規定に合わせて細部をリファインした改良型を投入。前年に引き続き圧倒的速さを見せ付けるがタイヤバーストや駆動系トラブル、クラッシュ等により本命と言われていた1号車・2号車が脱落。バックアップ役だった片山右京・鈴木利男・土屋圭市のドライブする3号車にチームの総力を注ぎ、トップを走るBMW V12 LMRを終盤ファステストラップの連続で追い詰め、残り1時間の時点でBMWに22秒差まで猛追するが、328km/hの速度でタイヤが突如バースト、スピンすることなく体勢を立て直したものの、惜しくも総合優勝を逃した。それでも総合二位に食い込み、日本人トリオでの最高位記録を獲得した。ちなみにこの3号車のモノコックは前年にブランドル組が使用したものである。
また、この年にはル・マン富士1000kmにもエントリーしたが、バッテリートラブル等のマイナートラブルでまたも2位に甘んじた。
[編集] トリビア
リアセクションは、キャビンが後半部より急激に絞り込まれ、また極端に薄いデザインとなっている。これは、当時のレギュレーションにおいて、"GT1クラスの車両は、規定容量以上のトランクスペースが必須"であると同時に、"レース用燃料タンクの設置場所は、トランクスペースでもよい"という、ルールブックの隙間を突く形で実現されている。具体的には、運転席の後ろに確保された、わずかな空間をトランクスペースとして申請し、そこへレース用燃料タンクを配置することで、リヤセクションの特異なスタイルを実現している。
そのデザインは、1994年の、ワークスシャシーのポルシェ962Cに保安部品をつけただけの「GT」、ダウアー962GTを思い出させ、当時の他のエントラントから非難が殺到。また、既にホモロゲーションが有名無実化していたGT1クラスが、1999年度よりGTPクラスへと改定される契機となった。