ドライブ・バイ・ワイヤ
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ドライブ・バイ・ワイヤ (drive-by-wire, DBW) は、自動車におけるアクセルとスロットルバルブをつなぐ方式の一つ。従来とは違い、スロットルの開度を物理的なケーブルではなく、電気信号(電線=ワイヤ)で制御するシステムのことである。これを採用することで、アクセルケーブルの伸びによる劣化や交換、操作の応答性の悪化などの問題が解消される。元は航空機の操舵システムフライ・バイ・ワイヤーの転用である。
以下では、ドライブ・バイ・ワイヤに対してケーブルによる制御をするものを便宜上ドライブ・バイ・マッスル(drive-by-muscle, DBM, [要出典]筋力による運転)と表記する。
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[編集] ドライブ・バイ・ワイヤの仕組み
ドライブ・バイ・ワイヤのシステムは、簡略化して書くと以下のとおりである。
- アクセルを踏む → センサがアクセルの踏み込み量を感知 → エンジンコントロールユニットの命令どおり、スロットルが開く。
以上のとおり、アクセルからスロットルの間に電子回路が入り、人間とエンジンの間に機械の補助装置を入れて、エンジンを制御する。この電子制御によって、物理的なアクセル踏み込み量以上にも以下にもスロットルをあけることができ、空気の導入量によって出力が変わる内燃機関においては、この制御自体が、乗り味を変えることにもなる。
なお、ドライブ・バイ・マッスルの仕組みは以下である。
- アクセルを踏む → アクセルによって踏まれた量=引かれた量だけ、スロットルバルブが開く。
ドライブ・バイ・マッスルに比べドライブ・バイ・ワイヤは、スロットルにアクセルが直結されていないため、それを嫌う意見や、電子回路の故障によって起こる思わぬ事態を懸念する意見も少数だがある。しかし、ドライブ・バイ・ワイヤのシステム自体は、たとえば踏力をあまり発生させられない障害者などでも、調整によりスロットルの開度を健常者と同様に扱えるようにできるなど、車を運転しやすくする技術であり、これからも車両への採用率は上がっていくと思われる。
[編集] チューニング業界での対策
チューニング業界では百害あって一利なしの扱いを受けている。というのも、ドライブ・バイ・ワイヤのほとんどが「アクセルの非線形制御」を行っており、これがダイレクト感(いわゆるレスポンス)を重視するこの手のドライバーにとって嫌な物でしか無いためである。このためあえて旧型のスロットルを流用し、DBWからDBMへのコンバートを行う事が多い。一応エンジンコントロールユニットのDBW関連のマップを書き換え、線形制御にする事も可能ではあるが、それでもわずかな応答遅れが発生する車体があるため、あまり盛んなチューニングとはなっていない。
[編集] F1での利用
F1のエンジンは回転上限あたりの狭い範囲の回転数でしかパワーが出ないようなピーク特性を持っており、物理的ケーブルによるシステムではアクセルがオン-オフのスイッチ的にしか働かなくなる。電気配線による電気制御システムでは、アクセルの開度に応じてパワーが変化するように自在にマップを設定できるので盛んに用いられている。1992年のマクラーレンホンダチームのMP4/7がはじめて採用した。
[編集] 採用車種
- ホンダ・NSX
- ホンダ・シビック Type-R
- ホンダ・S2000(AP2)
- スズキ・アルト
- トヨタ・アルテッツァ
- トヨタ・MR-S SMT(sequential manual transmission) 搭載車
- 日産・フェアレディZ(Z33)
- 日産・スカイライン(V35)
- メルセデス・ベンツ Eクラス(S211、W211のmy2002~my2006)
- メルセデス・ベンツ CLSクラス
- メルセデス・ベンツ SLクラス
[編集] 関連項目
- トラクションコントロールシステム - ドライブ・バイ・ワイヤとの親和性が高い。